上 下
133 / 139
遠藤近頼の章2 日本一のハーレム男

第133話 小さな国

しおりを挟む
俺達は華江先生のいる、セントラル総合病院に来て話し合いをしていた。華江先生とあずさ先生、言い出しっぺの俺と菜子様と梨美の他に、優美、栞、夏希、愛菜、翼、麻衣、里奈がいた。

他の面子は各拠点での仕事と、回収作業などで遠征していてここにはいない。

「いいんじゃないかしら?」

華江先生が言う。

「えっ?」

「このままじゃ息が詰まるわよね」

「まあそうですね」

俺と菜子様と梨美が、いろんな人に声がけをして組織的な問題を解消するべく根回しをしてきた。しかし根回しなんて必要なかったような返事だった。

「確かに遠藤君の精子はとても貴重なものだわ。だけど管理体制を極めていくと精神的な重圧も大きいと思っていたのよ」

「でも規律が乱れるのでは?」

「まああまり規律が乱れると、この組織の存在が危うくなるとは思うけど」

「危うくですか?」

俺は華江先生の言っている意味が分からなかった。

「ええ。人間には欲があるわ。遠藤君を独り占めしたい人も出て来るんじゃないかしら」

「俺を独り占めですか?」

「ええ。だって大人の男はいまのところあなた一人で、他の男子は仲間達の子供でしょう?本能的に男性を求めるうちに、独占したいという気持ちが出るのは間違いないと思うわ。他の欲求だってあるかもしれないし、私のように研究だけしていればいいような特殊な人間は少ないわ」

俺は自分の価値なんて精子…すなわち遺伝子だけだと思っていた。だが彼女らにとっては性の対象としての価値があるということだ。

「俺なんかに…」

「しかもゾンビに対して無敵の遺伝子を持つ男よ。そんな価値のある人に気持ちを奪われない訳はないし、今はある程度の決まりがあるからこそ、お互いをが牽制して自制していると思うのよね。確かに私やあずさ、真下さんや吉永さんは文句はないと思うけど、決められた枠の中じゃないと暴走するんじゃないかと危惧しているわ」

言われてみるとすっごく納得する内容だった。正論中の正論だ。

「でしたら、年齢制限の方はどうでしょうか?」

「年配になったら性交渉を止めること?」

「はい」

「まあ高齢での妊娠はリスクが高いからおすすめは出来ないわ。私とあずさ先生が立ち会うにしても、医療器具だけじゃなく人員的な問題もあってね。最善は尽くすけど、出産と産後のデメリットを考えるとあまりお勧めは出来ないかしら」

「では避妊しながら複数では?」

「どうかしら?私は遠慮したいかも…若い女の子たちと一緒に、性交渉をする事は喜ばしい事ではないわね。むしろ苦痛に思うかしら」

「私もね。最近は十代の子も救出しているでしょ?その子達と一緒に性交渉なんてちょっとつらいかな」

あずさ先生も同感のようだった。

「それは…すみません。配慮が足りませんでした」

「いえ。私たちの事を思っての事だから悪いとは言わないわ。でもそこはあまり気にしなくていいんじゃない?これからは若い人主導で進めて良ければ良いと思うし、気にせず進めてくれたらいいわ。揉め事なくルールを変える事が出来ればいいんだけど、特に若ければ若いほど分別を求めるのは難しいわよ」

「はい…」

話せば話すほど、華江先生の話は正論だった。間違いなく俺達がある程度自由に進めて行ったら、若い子らに規律を守らせることができるか不安だった。

「なんか…やっぱり華江先生のおっしゃるとおりね」

菜子様が言う。

「そうだな、俺達幹部が規律を守らせてきたから、今の秩序が守られているのかもしれない」

「でも、いずれ何か問題が起きそうなきがします」

「問題?」

「このままの規則でやって行って、新しい人たちに不満が出た時に幹部たちで抑えられるか不安もあります」

「菜子様の言うとおりだわ」

華江先生も同意した。

「本当に危ういと思う」

優美がポツリと言った。

「どうして?」

「私が正妻なんて言われてるけど、そのせいでちょっとしたやっかみのようなものも感じるわ」

「やっかみか…」

「直接的なものじゃないけど、いつか刺されたら嫌だなとか薄っすら思ってた」

「そんな悩みがあったのか…」

「うん」

「気づいてやれずにゴメン」

「私だけ我儘いえないから、問題ないわよ」

という事はこのままの規律でやって行っても問題は起きるし、変更しても揉め事が起きる可能性があるという事だ。

「あの…」

栞が口を開く。

「なに?」

「とにかく組織を作り直す必要があるんじゃないでしょうか?」

「組織を作り直すか…」

「はい」

「…どうしたもんかね?」

「私が思うに選挙が良いかと思うんです」

「「「「選挙?」」」」

俺、華江先生、菜子様、あずさ先生が声をそろえる。

「はい。民主主義の国ではありますが、今この組織でそんなことを言っている余裕はないと思うんです。すでに日本国は消滅していると思う。ある程度強制的な権限を持った指導者が必要だと思います。強い権限の指導者を、皆で選出する必要があるのではないですか?」

栞が力強く行った。よほど危機感を感じていたらしい。

「…そうね。小さな国を作るような物かしらね」

それを聞いた華江先生がつぶやいた。

「国…」

「こんな世界じゃ、もう法律なんてないようなものよね?ならば私達で法律を作り、それを守っていく必要があるんじゃないかしら?」

「法律ですか…」

俺の不得意分野だ。どうしよう。

「まずは選挙をして代表を決めないとね」

優美が言う。

「正妻だし優美さんになる可能性が高いかもね」

「えっ!あの…辞退したいんですけど」

「…そうよね、やりたくないわよね」

「じゃあ幹部は投票権無しで、新しい人たちが幹部に投票するようにしたらいいんじゃないでしょうか?」

栞が言う。

「なるほど。それなら文句ないんじゃない?やりたくないだろうけど…」

「ちょ、ちょっと待ってください」

菜子様が声をあげる。

「なに?」

「こういってはなんですが、私や里奈さんなどの顔が知れている人が濃厚なんじゃないでしょうか!」

確かに菜子様の言うとおりだ。皇族や元女優なら知っている人が多い為、投票される可能性は高い。

「そう思うわね」

「ですよね!」

「でも、それが一番いいと思うのよね」

華江先生に言われ、菜子様が困った顔をする。

「じゃあ…選ばれた人が、副大臣や担当大臣を決めるってのはどうかしら?」

あずさ先生が言う。

「良いと思います」

困っている菜子様や里奈をよそに翼が言う。

「あと、選出されるのは、なぜか女子だけという前提になってない?」

「えっ?俺もっすか?」

「当然じゃないの」

「は、はあ…」

結局俺達は組織内で選挙を行い、代表者…いってみれば首相を決める事となった。この内容を全員に伝えて公平に選挙をする必要がある。だが俺はなんとなく嫌な予感がするのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ) 安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると めちゃめちゃ強かった! 気軽に読めるので、暇つぶしに是非! 涙あり、笑いあり シリアスなおとぼけ冒険譚! 異世界ラブ冒険ファンタジー!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

処理中です...