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橋本里奈の章
第84話 自分が役に立つ場所
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私はこのチームで一番の最年少だ。
この生活になるまでは私は女優だった。まだ売り出し中ではあったがいろんな番組などにもよばれ多忙だった。
あの日
私はインタビューを受けてそのままホテルに宿泊予定だった。
その後ゾンビが蔓延る世界になってしまい、さらに遠藤さんに助けられて今も生きて居る。しかも彼の子供まで身ごもる事になってしまったのだ。
こういう世界になってしまえば女優の看板なんて何の役にも立たなかった。
そして今は自給自足に向けての候補地探しのメンバーとして役に立とうとしている。
友達のあゆみにその役を代わろうかと言われたが私は断った。とにかくみんなの中で役に立ちたいのだ。
正直子供を作らなければいけなくなった時は泣いた。私は義務として役に立つために子供を作ったのだった。しかし生まれてみるとやはり我が子は可愛かった。
その子と離れ私は候補地探しのメンバーとしてまた行く事を決めた。
「今回は近いからそれほど危険は無いと思うんだけど。」
あずさ先生が言う。
「でもやっぱり慎重に行った方がいいですよね。」
栞さんが言う。
栞さんはずっと私のお姉さんのようにしてくれていた。この人は最初素人の女子大生だった。しかし初めて見た時は衝撃を受けたのだった。それは彼女が芸能界にいてもトップクラスに入るであろう美少女だったからだ。
素人なのにこんなに美少女オーラを放っている人を初めて見た。恐らくデビューしていたら今一番注目される女優になりそうだった。
でも彼女は控えめで、本当に真っすぐな人だった。
私は彼女に恥じないように役に立ちたいと思ってきたのだ。
「栞さんの言うとおりですよね。都内とは言え危険な事に違いはない。特に動物園から逃げた猛獣があのヒグマだけならいいんですが。」
私が言う。
「そうよね。まあそれでも何年間も生きていられるほど食料があるかどうかもあるけど、痩せこけたヒグマが良きれるだけの食料はあったという事よね。」
愛菜さんが言う。
私達は今、バスに乗って皇居に向かっている。遠征と言うほどの距離でもないのでマイクロバスで移動しているのだった。
「皇居は初ですよね。」
遠藤さんが言う。
「そうね。そもそも中に入れるかどうか。」
「確かに。」
バスの中で6人が話をしていた。
遠藤さん
あずさ先生
栞さん
未華さん
愛菜さん
それと私だ。
私は今までどちらかと言うと守られて来たように思う。しかし人の役に立つため率先して動きたかった。皆より恐らく生きる力は弱いかもしれない、でも必死で生きて生きて生きぬく覚悟は出来ていた。
「あそこね。」
街はすっかり荒廃していてあちこちに雑草が生えて、乗り捨てられた車もホコリをかぶったような物が多い。その間を抜けて皇居に向かった。
皇居外苑の芝生も荒れていて雑草などが生えている。
「とりあえず車で入るにはマイクロバスは厳しかったですね。」
「ええ、大きなRV車で来た方が良かったかしら。」
「門までは歩いて行って見ましょうか?」
「そうしてみましょう。」
人気は無いようだがここから歩いて行くのは少しリスクがありそうだった。
「みんなボウガンは持ちましたか?」
私が言う。
「ああ。」
「里奈ちゃんは真ん中に。」
また守られてしまった。私がお荷物になっているわけではないが、必ず私を守るような言葉がかかる。それが少し気になる。
「ボウガンは持っているけど、銃などには敵わないし出来るだけ逃げる方向でいくわよ。」
あずさ先生が言う。
そしてだだっ広い外苑を歩いて行く。
「ここ…見通しが良いから、遠くにゾンビがいるのが分かりますね。」
愛菜さんが言う。
本当だった。1キロ以上あるのでよく見えないがウロウロと動いている存在がよく見える。
「ここに拠点を構えればゾンビはいつでも監視できそうだけどね。」
「私達はゾンビ関係ないですもんね。むしろこんなにだだっ広いところにいたら人間の標的になる可能性がありますね。」
栞さんが言う。
「皇居入れますかね?」
「とにかく行って見ましょう。」
私達は周りを警戒しながら皇居に向かって歩いて行く。
「ここ…好きでしたね。」
未華さんが言う。
「皇居がですか?」
「なんていうか歴史も感じるし、広々としていて人もたくさんいるし。」
「まあ確かにホッとします。」
古い日本家屋風の屋根を見ると若い私でもなんとなく良さが分かる。
「ある程度の所には入れるみたいなので、どうにかなりそうですね。」
栞さんが言う。
「警察もいなそうですし、これだけ自然があれば畑もつくれそうです。」
愛菜さんが言った。
「そうね。お堀の水も確保できそうだけど…汚染されたりしていないものかしら。」
「確かにそれは分かりません。」
「水の補給ルートをどうするかよね。」
「井戸とか掘れないものですかね?」
「そこまでは難しいと思うわ。」
当初から問題になっていた水の確保がひっかかる。
私達は既に水の確保も難しくなっていたのだ。
あれから数年がたち私たちは雨水やペットボトルの水を利用していたからだ。
「むしろ山の奥とかの方が良いのかしらね?」
「人間の驚異はありますが、やはり水源の確保は最重要項目なんでしょうね。」
最年少の私が言うのもためらわれるのだがやはり…
「危険を恐れていてはじり貧になると思います。」
私が言う。
「二転三転してしまうけど認めざるを得ないわ。研究を続けるにしても既にライフラインが限界なのかもね。」
「このお堀の水が使えてポンプで引き上げるとしても、いつか枯れてしまいますよね。」
「汚れているから、生活用水としては難しそうですしね。」
私達は結局皇居を見たものの断念せざるを得なかった。
畑を維持するにしても水が必要だった。それよりもこのままの生活を続けていては破綻するのが見えてきた。
都心では自給自足は無理なのかもしれなかった。
私達の揺れる未来に向けてまた新たな課題が見つかったのだった。
この生活になるまでは私は女優だった。まだ売り出し中ではあったがいろんな番組などにもよばれ多忙だった。
あの日
私はインタビューを受けてそのままホテルに宿泊予定だった。
その後ゾンビが蔓延る世界になってしまい、さらに遠藤さんに助けられて今も生きて居る。しかも彼の子供まで身ごもる事になってしまったのだ。
こういう世界になってしまえば女優の看板なんて何の役にも立たなかった。
そして今は自給自足に向けての候補地探しのメンバーとして役に立とうとしている。
友達のあゆみにその役を代わろうかと言われたが私は断った。とにかくみんなの中で役に立ちたいのだ。
正直子供を作らなければいけなくなった時は泣いた。私は義務として役に立つために子供を作ったのだった。しかし生まれてみるとやはり我が子は可愛かった。
その子と離れ私は候補地探しのメンバーとしてまた行く事を決めた。
「今回は近いからそれほど危険は無いと思うんだけど。」
あずさ先生が言う。
「でもやっぱり慎重に行った方がいいですよね。」
栞さんが言う。
栞さんはずっと私のお姉さんのようにしてくれていた。この人は最初素人の女子大生だった。しかし初めて見た時は衝撃を受けたのだった。それは彼女が芸能界にいてもトップクラスに入るであろう美少女だったからだ。
素人なのにこんなに美少女オーラを放っている人を初めて見た。恐らくデビューしていたら今一番注目される女優になりそうだった。
でも彼女は控えめで、本当に真っすぐな人だった。
私は彼女に恥じないように役に立ちたいと思ってきたのだ。
「栞さんの言うとおりですよね。都内とは言え危険な事に違いはない。特に動物園から逃げた猛獣があのヒグマだけならいいんですが。」
私が言う。
「そうよね。まあそれでも何年間も生きていられるほど食料があるかどうかもあるけど、痩せこけたヒグマが良きれるだけの食料はあったという事よね。」
愛菜さんが言う。
私達は今、バスに乗って皇居に向かっている。遠征と言うほどの距離でもないのでマイクロバスで移動しているのだった。
「皇居は初ですよね。」
遠藤さんが言う。
「そうね。そもそも中に入れるかどうか。」
「確かに。」
バスの中で6人が話をしていた。
遠藤さん
あずさ先生
栞さん
未華さん
愛菜さん
それと私だ。
私は今までどちらかと言うと守られて来たように思う。しかし人の役に立つため率先して動きたかった。皆より恐らく生きる力は弱いかもしれない、でも必死で生きて生きて生きぬく覚悟は出来ていた。
「あそこね。」
街はすっかり荒廃していてあちこちに雑草が生えて、乗り捨てられた車もホコリをかぶったような物が多い。その間を抜けて皇居に向かった。
皇居外苑の芝生も荒れていて雑草などが生えている。
「とりあえず車で入るにはマイクロバスは厳しかったですね。」
「ええ、大きなRV車で来た方が良かったかしら。」
「門までは歩いて行って見ましょうか?」
「そうしてみましょう。」
人気は無いようだがここから歩いて行くのは少しリスクがありそうだった。
「みんなボウガンは持ちましたか?」
私が言う。
「ああ。」
「里奈ちゃんは真ん中に。」
また守られてしまった。私がお荷物になっているわけではないが、必ず私を守るような言葉がかかる。それが少し気になる。
「ボウガンは持っているけど、銃などには敵わないし出来るだけ逃げる方向でいくわよ。」
あずさ先生が言う。
そしてだだっ広い外苑を歩いて行く。
「ここ…見通しが良いから、遠くにゾンビがいるのが分かりますね。」
愛菜さんが言う。
本当だった。1キロ以上あるのでよく見えないがウロウロと動いている存在がよく見える。
「ここに拠点を構えればゾンビはいつでも監視できそうだけどね。」
「私達はゾンビ関係ないですもんね。むしろこんなにだだっ広いところにいたら人間の標的になる可能性がありますね。」
栞さんが言う。
「皇居入れますかね?」
「とにかく行って見ましょう。」
私達は周りを警戒しながら皇居に向かって歩いて行く。
「ここ…好きでしたね。」
未華さんが言う。
「皇居がですか?」
「なんていうか歴史も感じるし、広々としていて人もたくさんいるし。」
「まあ確かにホッとします。」
古い日本家屋風の屋根を見ると若い私でもなんとなく良さが分かる。
「ある程度の所には入れるみたいなので、どうにかなりそうですね。」
栞さんが言う。
「警察もいなそうですし、これだけ自然があれば畑もつくれそうです。」
愛菜さんが言った。
「そうね。お堀の水も確保できそうだけど…汚染されたりしていないものかしら。」
「確かにそれは分かりません。」
「水の補給ルートをどうするかよね。」
「井戸とか掘れないものですかね?」
「そこまでは難しいと思うわ。」
当初から問題になっていた水の確保がひっかかる。
私達は既に水の確保も難しくなっていたのだ。
あれから数年がたち私たちは雨水やペットボトルの水を利用していたからだ。
「むしろ山の奥とかの方が良いのかしらね?」
「人間の驚異はありますが、やはり水源の確保は最重要項目なんでしょうね。」
最年少の私が言うのもためらわれるのだがやはり…
「危険を恐れていてはじり貧になると思います。」
私が言う。
「二転三転してしまうけど認めざるを得ないわ。研究を続けるにしても既にライフラインが限界なのかもね。」
「このお堀の水が使えてポンプで引き上げるとしても、いつか枯れてしまいますよね。」
「汚れているから、生活用水としては難しそうですしね。」
私達は結局皇居を見たものの断念せざるを得なかった。
畑を維持するにしても水が必要だった。それよりもこのままの生活を続けていては破綻するのが見えてきた。
都心では自給自足は無理なのかもしれなかった。
私達の揺れる未来に向けてまた新たな課題が見つかったのだった。
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