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長尾栞の章

第69話 ゾンビ戦闘訓練

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拠点に戻ってみんなで武器を広げて見ていた。

「想像以上にいっぱい持ってきたんですね。」

麻衣さんが言う。

「ええ、全部は持ってこれなかったけど人数を考えたらこれで十分じゃないかしら。」

あずさ先生が答えた。

皆で手に取って引っ張ってみたり、手錠をかけて見たりして確かめている。

「ゾンビにはどのくらい効くんでしょうね。」

沙織さんが言う。

「おそらくスタンガンは効かないんじゃないでしょうかね?」

遠藤さんが言う。

「とにかくいきなりでは使えないと思うから訓練が必要ですよね。」

みなみ先輩が言う。

確かにそうだ。こんな武器を使ったことがある人はここにはいない。

皆が手に取って実際に矢をどうやって装填するのか、あれやこれやと弄り回している。

「とにかくこの高層ビルの中でこの訓練が出来そうな所を作りましょう。」

「そうね。中層のオフィスには大きな会議室がある所もあったから、そこなんか良いんじゃない?」

「あー確かにありましたね。そこに的を作って訓練しましょう。」

中層の会議室に訓練場を作る事になった。

「じゃあ標的を用意したほうがいいわよね。」

華江先生が言う。

「マネキンとかを持ってきて標的にした方がいいんじゃないかな?」

あずさ先生が言う。

「そうですね。次の回収は標的集めですね。」

数日後みんなで標的になりそうなものを回収して会議室に訓練場を作った。


《マネキンを回収してきて部屋中に置いただけだけど、これを的にしてボウガンを撃つらしい。》

「じゃあやってみましょう。」

皆がボウガンをセットして矢を装填する。

「近くの標的からでいいんじゃないでしょうか?とにかくなかなか当たらないと思いますので胴体を狙っていきましょう。」

「はい。」

「わかったわ。」

まずあずさ先生が構えて引き金を引いた。

ヒュン

スッ

マネキンに当たらずにそれてしまった。

「えっ!難しい。」

「たぶんそのスコープを良く見て狙わないと当たらないと思いますよ。」

「わかったわ。」

あずさ先生がもう一回ボウガンを構える。

ヒュン

スコン!

「当たった!」

ボウガンの矢はマネキンの胸のあたりに刺さっていた。

「私もやってみます。」

「私も。」

「じゃあスペースの問題もあるので3人ずつにしましょうか。」

私と華江先生と里奈ちゃんが並んで構える。

ヒュン

ヒュン

ヒュン

スコン!

スッ

スッ

私の矢は太もものあたりに刺さり、二人の矢はマネキンを逸れてしまった。


「近くでもこんなに難しいの?」

華江先生が言う。

「動いてないのに、これが動いている相手だったら絶対難しい。」

里奈ちゃんも言った。

それからはみんなでボウガンの練習をした。矢が無くなってきたらみんなで拾ってまた一から始める。

「皆近距離は当たってきましたね。」

「最初はどうやら不慣れだったみたい。」

「子供たちの面倒を見ている彼女達にもやってもらわなきゃね。」

子供の面倒を見ている人たちと妊娠組はこの訓練に参加していない。

「少しずつ遠くの的に当てられるようにしましょう。」

遠藤さんが言う。


「でもゾンビには胴体じゃ聞かないんじゃないかな?」

翼さんが言う。

「どうなんでしょう。そもそもこの練習がゾンビ対象じゃない気もします。」

みなみ先輩が言った。

皆が思った。あのレイプ男の事を。あんなことがあったら人を撃たなければならないかもしれない。

その現実が皆に重くのしかかる。

「でも私達と子供たちを守るためだし、やらなきゃだめですよ。」

意外なことに最年少の里奈ちゃんが力強く言う。

「そうね。私達には守るべき者がいるわ。」

華江先生も同意する。

「ただ一応ゾンビを対象にした練習もしておいていいと思います。」

遠藤さんが言う。

そこで私たちは頭を狙って撃つ練習をした。頭にはなかなか当てずらかった、どうしても的が小さくなり逸れてしまう。

「難しいですね。」

「これ相手が動いていたら当たらないわ。」

「近くに寄ってこられたら慌ててだめだわ。」

皆が言うとおりだった。迫ってきている相手に対して頭を狙って当てられる気がしない。

「まあ練習あるのみだと思います。」

「遠藤君の言うとおりね、生きるための練習ということね。」

「この練習を週1回のペースで取り入れたらいいと思います。」

それから半日かけてボウガンの練習をした。

あと携帯のしやすいスリングショットも練習してみたが、こちらはボウガンよりさらにうまくいかなかった。

「腕の力がないわね。」

あずさ先生が言う。

「確かに。」

「この武器は栞ちゃんや里奈ちゃんには向かないわね。」

「はい。」

「私は無理そうです。」

《あまり鍛えていない私にはこの武器は使えそうになかった。もっと体を鍛えないとなあ…。》

暫く練習を重ねているうちに頭にも当てれらるようになって来た。しかし距離があるとまだ当てる事が難しい。

「あと歩きながら的に当てていく練習もした方がいいですよね。」

遠藤さんが言う。

私達は足を止めて止まっているマネキンに撃ちこんでいたが、自分たちが動いてやってみた方がいいという事だった。

歩きながら撃ってみるとさらに難しくなる。

「手元が揺れて当たりません。」

「本当ね。難しいわ。」

「俺が思うにまずはこの訓練場できっちり当てられるようになるまで、練習をし続けるしかないと思います。」

週1回の戦闘訓練。

これが私たちの日課に組み込まれたのだった。
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