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長尾栞の章

第66話 武器調達で死体発見

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とうとうなっちゃんが妊娠した。

なっちゃんは私と違ってかなり回数を重ねてようやくできたのだった。

つわりが始まって妊娠検査薬が陽性になり発覚した。

「とうとう私も母親になるのかー。」

「そうだね。でもみんなで協力し合っての育児だから案外ね楽かも。」

「見てれば分かるわ。本当にスムーズに協力し合ってるよね。」

「ここまでだいぶ紆余曲折あったのよ。」

「そうかあ。なんか出来上がったところに来たぽっと出が妊娠なんて悪いわぁ。」

「悪くなんかないない。でも体に障るといけないから遠藤さんとはしばらく私一人かな。」

「うん。それでいいと思う。」

私達の集団で一番大事な事は妊婦を守る事と子育てだった。

もうすでに5人も子供が生まれており、皆が協力し合って見ている。

妊娠しているのは優美さんと未華さんなっちゃんと高校生ふたり。

「そういえば里奈ちゃんとあゆみちゃんは今月予定日だったなあ。」

「高校生でお母さんかあ。なんか考えちゃうねー。」

「私達だって女子大生がお母さんよ。」

「まあそうよね。」

「じゃあそろそろ行くわ。なっちゃんはゆっくり休んでね。」

「うんありがとう。」

私はなっちゃんと二人の部屋をでてみんなの所に向かう。

「夏希さんはどうかしら?」

華江先生から聞かれる。

「ええ順調なようです。でもつわりがひどいみたいで休ませます。」

「そうね。それがいいわね。」

今日は遠藤さんやあずさ先生から意見が出ていた武器を調達する日だった。

妊娠している人と子供の面倒を見る予定の人はここに残り、遠藤さんと動ける人で武器を探しに行くのだった。

「武器があると思える場所は警察署です。これから警察署に行って銃を入手する予定です。」


皆が返事をする。

これまで1度危険な目にあったことがあり、それから自分たちの護身をどうするかいろいろと話し合った結果の行動だった。


ガシャガシャ

警察に行ってから入手できなくなるといけないので、潜入用の工具をたくさん用意した。

数基の電動カッターに電動ドリル、チェーンカッターやガスバーナーなどを大量に並べる。

「このくらいあったら何とかなるんじゃないですかね?」

「うーん。みんな警察署に入った事なんてないのよね。」

「免許の更新くらい?」

「そうそう。」

「とにかく遠藤さんとあずさ先生で練った作戦で行きましょう。」

「そうですね。とりあえずそれで行きましょう!」

「じゃあマイクロバスを引っ張ってきます。」

遠藤さんとあずさ先生が一緒に出て行った。

「じゃあ私たちは道具を台車に乗せて外に行きましょうか。」

皆で工具類を台車に乗せ始める。

「なんとなく物騒な感じですね。まるで武装集団みたいな。」

「たしかにね。」

今回武器を回収するメンバー

遠藤さん
あずさ先生
華江先生
愛奈さん
みなみ先輩

それと私の6人。

残りは妊婦とそれを守る組となる。

「じゃあ気を付けて行ってきてね。」

優美さんが言う。

「はい、それでは留守の間は十分注意してくださいね。」

「ええ。全員最上階に行って動かないわ。」

「その方が良さそうです。」

「そうね。」

「では行ってきます。」

「はい。」

残りの人たちから見送られて出発する。

ドアを閉めて内側から鍵を閉めた。入口の2重のドアから手を振って台車を押して行く。

車に工具を積み込んでみんなが乗り込んだ。


「出発します。」

ブロロロロロロロ

車を発進させる。

「警察署の奥に入るのってドキドキですよね。」

私が言う。

「本当ね。入っちゃいけないところに入るのってワクワクするわ。」

あずさ先生がノリノリだった。

車は順調に走っていく。

「スタンドアローンのカーナビなら使えるんですよね。」

「人工衛星は生きてるって事よね。」

「大体の位置もわかるしこれなら迷わず行けそうです。もっと早くに気が付くべきでしたよ。」

「なんで気が付かなかったんだろうね。」

「本当です。まあいっぱいいっぱいでしたから仕方ないです。」

「そうよね。ほとんどがオンラインで動くカーナビだったから、でも沙織さんがスタンドアローンのカーナビだったら使えるんじゃないかって言ってたものね。」

「おかげで俺達の動きが正確になったので本当に良かったです。」

警察署に向かってマイクロバスは進んでいく。

このマイクロバスも最初に乗っていたものではなく、ディーラに行って最新型を入手したのだった。しかしオンラインで使えるカーナビしかついておらず、カーショップでスタンドアローンで動くカーナビをつけたのだった。

「あれです。」

しばらく走って警察署が見えてきた。

このあたりの街も既に荒廃しており、草が生えて花壇などものびきっている。アスファルトのあちこちから草木が生えており壊れた車が散乱していた。

「あれが警察署ですね。」

「ああそうね。」

マイクロバスは警察署に横付けされた。

「開きますかね?」

「どうだろう?」

警察署の表に車を停めてみんなで車を降りる。

「じゃあ開きそうな入り口を探しましょう。」

皆で周りをまわっていくとどうやら開きそうなドアがあった。

「ここ開きますね。」

皆で慎重に警察署の中に入っていくのだった。

「やっぱり電気はつかないみたいです。」

「暗いわね。」

「懐中電灯をいっぱい持ってきて正解ですね。」

コロコロコロコロ

二人が工具の乗った台車を押して警察署の中に入っていく。

すると…

 
「この臭いは。」

「ええ…」

皆が覚えがあった。みなみ先輩も長いゾンビからの逃亡生活で嗅いだことがあるようだ。

「でももう。」

「そうですね。」

恐らくゾンビがいたのだろうと思うが、腐った死体の匂いがする。

《消えてなくなったはずなのに。》

「武器保管庫ってどこなんでしょうね?」

「とりあえず一か所ずつ探すしかないんじゃない。」

館内に入り別行動はとらないようにかたまって歩く。

開きそうなドアは全て開けていくが何もいなかった。

「地下に行きましょう。」

「そうね。」

「台車に乗せた工具はそれぞれが持ちましょうか?」

「はい。」

地下に続く階段を降りていくとさらに暗くなった。

皆の持っている懐中電灯の光だけが揺れている。

「怖いですね。」

「ええ。」

「さすがにちょっとね。」

「遠藤さん。」

「大丈夫いますよ。」

皆が遠藤さんに固まって歩く。開く部屋は片っ端から見ていくがどうやら武器保管庫ではなかった。

次の部屋を開けようとしたとき。

ガン

「あれ?この部屋鍵がかかってるのかな?」

「じゃあここじゃない?」

「じゃあちょっと照らしていてもらえますか?電動カッターで鍵を切ります。」

私達がドアを照らして遠藤さんが電動カッターで鍵を切る。

ギュィィィィィィ

火花が散って熱そうだった。一応遠藤さんは作業用の分厚いゴム手袋をしているので平気そうだ。

ガチン!

「開いたみたいです。」

ドアを開けてみると途中で止まる。

ガン!

「あれ?何かにつっかえってるみたいです。皆で押しましょう。」

「ええ。」

皆でドアを押すと少しずつ開いて来た。

「これで人が通れそうです。」

「入りましょう。」

そしてみんなが中に入ると衝撃の光景が飛び込んで来た。

それは・・・

白骨死体が数体横たわっていたのだった。

どれも女性警官の制服のもので男性の遺体はいないようだ。

「なむあみだぶなむあみだぶ。」

遠藤さんが手を合わせて拝んでいる。

「どうやら立てこもって食料が無くなってしまったのね。」

「でもゾンビにならなかった・・」

「そのようね。」

婦人警官の遺体にみんなで手を合わせてその部屋を出る。

「この先にもこんな光景があるかもしれないわね。」

「気がめいります。」

「そうね。さすがに精神が持ちそうにないわ。」

華江先生ですら音を上げている。

「いったん外にでましょう。」

「そうしましょう。」

遠藤さんの掛け声に全員が賛成した。武器の調達は難航しそうだったが今回でうまくいくとは思っていない。


まずは全員でマイクロバスに戻り一休みする事にした。

「武器庫って通常どこにあるもんなんですかね?」

「わからないわ。警察関係の人がメンバーにいたら良かったのに。」

「本当ですね。他に武器を入手できそうな所ってありますかね?」

「やっぱり銃砲店じゃないかしら?」

「ネットがないからどこにあるかすら分かりません。」

「うーん。」

護身用の武器調達はそう簡単には生きそうもなかった。
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