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長尾栞の章

第50話 童貞卒業を朝食で聞かされる

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朝ごはんを用意をして皆がそろうのを待つ。

来ていないのは麻衣さんと翼さんと優美さんそして遠藤さんだった。

朝食を予定している時間より30分早いのでので4人が遅いわけではない。

《いま集まっている皆が眠っていられなくて早く起きて来ただけだから・・》

「まだ来ませんね。遠藤さんも。」

私がポツリと言うと皆がそれぞれに話し出す。

「昨日じゃなかったんじゃない?」

「なるほど、そうかもしれないわ。」

「そうですよね。だって昨日の夜って決めてたわけじゃないですもんね。」

「きっと今日の夜か明日には動くんじゃないかしら?」

それぞれ自分の所に来なかった安心感や不安感が入り混じって、希望的観測を話していた。

すると華江先生が言う。

「そうかしら?もしそうだとしたら今後だいぶ難航されることが予想されるわよ。出来ればしててくれると嬉しいんだけど。」

「私も先生と同意見だわ。ここで決めてもらわないとちょっと辛いかもしれない。」

あずさ先生も華江先生と同意見のようだった。

すると瞳さんも同じことを言う。

「本当よね。さすがに何も進まないというのは精神的にも辛いわ。」

大人たち3人の意見を聞いて、納得せざるを得ない若い面々が黙ってしまう。

私たち20代女子はどうしても恋愛的な感情が入ったり、自分の気持ちを優先してしまうきらいがある。

希望的観測を話しているのは、ただ自分の気持ちやプライドを落ち着かせるための気休めだった。

「そうですよね・・」

私はぽつりと言う。

みんなが生存者捜索のときに街で見た母子の姿を見て覚悟を決めたはずなのに、やはり若い女子たちは気持ちの整理がつけづらいようだった。

大人は逆にどっしりと構えている。

「あの・・・皆さん!どうなっても受け止めるという話でしたよね?私たちも先生達を見習って覚悟決めましょう!」

私が言う。

「そうね・・ついつい自分の気持ちが出てしまって。」

沙織さんが言う。

「そうよね。女子高生には辛いだろうけどここは覚悟を決めて待つしかないわよね。そう決めたんだし。」

未華さんが言う。

「いえ、特に・・私ももう気にせず待つことにしたんです。本当に気にしてませんよ?」

「私も里奈と同じで、ただ彼を待ってるだけなんです。」

・・どちらかと言うと女子高生たちのほうが覚悟が決まっていたようだ。

ガヤガヤガヤ

廊下の方から声が聞こえる。

どうやら誰かがレストランに近づいてきているようだった。

「誰か来ましたね?」

「そうみたいね。」

私達がレストランの入り口を見ていると・・・

意外にも4人全員が話しながら入って来た。

「おはようございます!」

私が言うと・・

「おはようございまーす。」

「皆さんお早いですね?」

「まだ時間じゃないですよね?」

優美さんと翼さん麻衣さんが返事をした。

「早くに集まって相談ですか?」

遠藤さんからも聞かれる。

「おはよう遠藤君。どうかしら?できた?」

華江先生が遠藤さんに単刀直入に聞いた。

「あ・・はい。なんとか・・」

「!」
「!」
「!」
「!」
「!」

皆が思わず息をのんだ・・どうやら遠藤さんはとうとう目標を達成したらしかったのだ!!

「そうなの!おめでとう。ということは?」

「無事に復活したみたいです!あと初めてだったので本当に不安だったんですが、やはり自分が選んだ好きな人だったので上手くいったみたいです。」

「本当?良かったわー!このまま無理だったらどうしようかって話してたのよ!」

華江先生が本当にうれしそうに言った。

先生の治療にかかっていたので、これで彼女の肩の荷は下りたはずだ。

華江先生の顔に光がさしたように明るくなった。

「ご心配をおかけしました。最初の精子採取の時に華江先生からしていただいた時にはうまくいったのに。いざ行為をするとなると緊張しすぎてしまったようでした。投薬のおかげもあり無事に復帰しました。」

遠藤さんが申し訳なさそうに言う。


遠藤さんは童貞を卒業してしまったようだった。


「安心したわー。ふぅ。」

あずさ先生が少し涙を溜めてホッとした顔で言う。

「うまくいかなかったらどうしようって言っていたのよ!」

瞳さんも心底安心したようだった。

大人の女子チームは本当にうれしいようで、ホッとした雰囲気が伝わってくる。

弟を心配するように思っていたのだろうか?ちょっと感極まっているように見える。

一緒に来た麻衣さん翼さん優美さんが話しながら座った。

すると話もそこそこにご飯を食べ始める。

「お待たせしてすみませんでした!お腹減りましたぁ。」

麻衣さんが言うと他の二人もいう。

「お腹減ったー!」

「おいしそう!」

「じゃあみんながそろった事だしいただきましょう!」

「はーい!」

優美さんと翼さんがパンを口に入れ始めた。

皆が戸惑ったようになって遠藤さんと3人を見ている。

それほどあっさりとした報告会になったからだ。

すると何事もなかったように華江先生とあずさ先生と瞳さんがご飯を食べ始めた。

大人組はやはり動じる事もなく普段通りだ。安心したのもあって3人で遠藤さんと話しながらおいしそうに食べている。

他のメンバーは何か気が気じゃなくて、朝ごはんに手をつけられないでいた。

私は不本意ながら邪推してしまう。

《えっと・・まさかとは思うけど遠藤さん4人で?ちがうか。》

「あれ?みんなご飯食べないんですかぁ?」

麻衣さんが明るく話す。

「あ、ああ。」

「ええそうね。」

「いただきまーす。」

「お腹減った。」

「コーヒー目が覚めますね。」

皆がそれぞれポツリと言いながら朝食に手をつけた。

《えっ!あと何もなし?》

ご飯を食べながらも半分の人間に、微妙な空気が流れるのだった。

「えっと。」

あずさ先生が口を開く。

「あの20代女子たちが気になって朝食が喉を通らないみたいなんだけど。聞いてもいいのかな?」

「はい。」

「遠藤君が選んだ人って誰なの?」

「あの。この人です。」

遠藤さんが手を差し伸べた先に座っていたのは・・

「・・・・・・・・・・・・・・・」

場がシーンとなった。

そこにはコーヒーを飲んでいる優美さんが座っていた。

《え!意外!だって・・遠藤さんは優美さんと一番最初にしようとして、出来なくなってしまった原因になった人だったから・・勝手に違うと思っていたわ。》

たぶん恐らく全員が。

「あ・・あの私みたいなビッチですみません!」

優美さんがものすごく申し訳なさそうに言う。

すると麻衣さんと翼さんがフォローする。

「え?どうして謝るのよ?」

「そうだよ!」

「二人はもう知ってたの?」

華江先生が麻衣さんと翼さんに聞く

「はい。彼女から話をされていましたので・・」

「私も数日前に教えられましたから・・」

「そうなのね・・」

「結果も聞きましたし。」

「私は選ばれたのが優美さんで、本当に良かったと安心したんですよ!」

麻衣さんと翼さんは既に知っていて結果も分かっていたらしい。

優美さんが慌てて話し出す。

「皆が黙っちゃうのもわかりますっ!だって男性経験豊富なビッチですもん私!ははは。私が遠藤さんを好きなのは本当ですけど、遠藤さんが私を選ぶなんて私自身信じられませんでしたから!」

顔を赤くして弁解しているようだ。

「何言ってんのよ優美。優美はビッチじゃないって!勝手に遠藤さんが自分を選んでくれないと思ってたのアナタじゃない。」

麻衣さんが微笑みながら優美さんに言う。

「だって最初のあれを失敗したし、こうなる前はパパ活したりしてたし貢物もらってたりしたし・・遠藤君は絶対私なんか好きじゃないと思ってたから!」

「何言ってるんだか・・好きになるのにそんなこと関係ないと思うけど。」

翼さんが言う。

どうやらこの3人は既に納得づくでそれを受け入れているらしい。

「そうです・・そうですよ!」

私が翼さんの意見に賛成する。

「人を好きになるのって、過去とか条件とか関係ないと思います!凄く素敵なことだと思います!」

私は話しているうちに感極まって来た。

「だって私だって!遠藤さんが好きだもの!みんなと子供を作らなきゃいけない遠藤さんだけど、私は遠藤さんが大好きだもの!」

ポロポロと涙が出てくる。

うれしいような寂しいような気持が心に広がった。

「あら?栞ちゃん。なーんか勝手に告白しちゃって!私も遠藤さんが好き!」

ほろりと涙を溜めて未華さんが言う。

「ずるーい!私も友達の優美に取られて傷心モードなのにぃ!」

麻衣さんもどうやら優美さんがうらやましかったようだ。

「あの・・私も・・私も・・」

沙織さんは言葉が出ないようだ。

「うふふ。遠藤君モテモテじゃない!」

華江先生が笑って遠藤君を祝福している。

「本当だわ。遠藤君こんなかわいい子たちに愛されて贅沢ね。」

あずさ先生も言っている。

「あの、うちの里奈もね・・遠藤さんが好きで好きでたまらないんですよ。」

「瞳さん!そんな勝手にばらさないで下さい!」

「まったくシャイだから。里奈は・・」

少し場に笑いが生まれた。

「なーんだ里奈もか・・」

あゆみちゃんもどうやら里奈ちゃんと同じ気持ちだったようだ。

「私は遠藤さんにならやりたい事を好きなだけされても、文句はなかったのにぃ。」

愛奈さんが爆弾発言。

「私も遅い経験ですけど・・初めてをもらってもらうのが遠藤さんなら本望ですよ。」

翼さんも自分の気持ちを打ち明けた。

「私だってそうです。この体を自由にしてもらっていいんですよ!遠藤さん!」

奈美恵さんが大きな胸をぶるんぶるん言わして言う。

皆が祝福ムードで、暖かく遠藤さんと優美さんを囲んで話はじめる。

これで本当に良かったと思う。

私もあの日、優美さんから遠藤さんが好きだから抱かれたい!と聞いた時はうまくいけばいいと思ってた。

「どうやら皆は優美さんで良かったみたいね」

華江先生が言うと優美さんはニッコリと笑って頷いた。

「ありがとうございます。」


遠藤さんは優しい眼差しで優美さんを見つめる。

「本当にすみません。俺がはっきり皆に言わなかったからこうなったんです。実は最初に失敗したあの日から気持ちは決まっていたんです。」

「へー!あの時だったんだ!」

あずさ先生が思わず驚きを口にする。

「はい。あのとき朝の4時まで二人で努力しました。もう彼女の体の隅々まで見て触れて・・俺も体の隅々まで。まあ具体的な話は省きます!!とにかく!彼女は一生懸命だったんです!後に続くみんなが待っているからって必死で、でも俺がダメだったから!」

「いや。遠藤君は悪くないわ。だって初めてだったんだから・・むしろ私がもっと上手に出来ていればよかったの。それがあまりにも必死になりすぎてダメになっちゃった。ごめんね。」

皆がうんうんと頷いている。

「優美さんの名誉のために言いますと、きっと彼女は上手だと思います!それなのに俺が反応しなかっただけ。緊張してましたから。でも華江先生の治療のおかげで昨日ようやく上手くいったんですよ!本当に皆のおかげだと思っています!」

「私はそれほど協力してないわ。それで昨日は何回かできたのかしら?」

華江先生がとんでもない事を冷静に二人に聞く。

「あの・・4回。」

「はい・・」

「上出来じゃない!」

大人組以外の全員の顔が赤くなるのだった・・
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