鍛冶師ですが何か!

泣き虫黒鬼

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鍛冶武者修行に出ますが何か!(海竜街編)

第弐百四拾参話 拵え師として頑張りますがニャにか! その参

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話しの流れから今回は短くしました。

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「お、御大・・・」

「どうじゃったニャ?受けて貰えるところはあったかニャ。」

ティブロン商会で騒動を起こし、断る筈だったトライデントの拵えを請けざるを得なくなってしまった御爺々様は、意気消沈し重い足取りで工房に戻り、善後策を検討する事となった。

 
請け負ったトライデントの拵えを施すに当たり、最初に問題になったのがトライデントの修繕だったニャ。
元々その件があったから依頼を断ろうとした重大問題。百歩譲って、錆や刃毀れを起こした穂先だけならば砥ぎ上げる事で多少ならば工房でも対応出来るのニャが、歪みを生じている長柄となると僕たち拵え師では手の施しようがニャかった。
これが穂先と長柄が分離可能であればまだ、現状で使われている長柄を破棄して別の長柄を一から作ってしまうという事も出来なくは無かった。しかし、今回手掛ける事のなるトライデントは穂先と長柄が一体かしている物で、武具を扱っている鍛冶場にお願いして鍛えて貰わないと、修繕のしようが無かったのニャ。
そこで、これまで付き合いのあった鍛冶場に打診してみたのニャが、何故かどの鍛冶場にも大量の発注が入っていて請け負う事が出来ないと断られてしまったのニャ。
まぁ、御爺々様の工房と付き合いのある鍛冶場は、数あるレヴィアタン街の鍛冶場でも腕が良いと認められている鍛冶場が多く、いつでも注文が入っている様な状態だったのニャ。
それでも、これまでの付き合いからなんとかならないかと打診してみたのだが、入っていた注文の相手がレヴィアタン街の治安を守る衛兵団からだったため。その注文が終わるまでは何も受けられないと断られてしまった。
仕方なく、これまで付き合いの無かった鍛冶場に工房の職人が手分けしてお願いに走ったのニャが・・・

「それが、どの鍛冶場でも今は注文が殺到していて、とても新規にあたらな注文を受けられない。受けるとしても、長く待ってもらってからになると・・・」

工房を御爺々様に変わって取り仕切る事もある年古株の職人さんが皆を代表して報告してくれたのニャが、その報告に工房内は重い空気に包まれていたニャ。
御爺々様は古株さんの話を聞くと肩を落とし一言、

「そうニャ・・皆仕事の手を止めて街中を駆けまわってもらってすまなかったニャ。」

そう言うと工房の多くにある母屋へと姿を消してしまったのニャ。そんな御爺々様を心配して僕は母屋の方へと一歩踏み出したのニャが、そんな僕の肩を掴む人が居たのニャ。振り返るとそれはさっき御爺々様にトライデント修繕の依頼を受けてくれる鍛冶場は無かったと報告した古株さんだったのニャ。
古株さんは、肩を掴む古株さんへ振り返った僕に、眉間に深い皺を寄せ悔しさを滲ませながら静かに頭を横に振り、

「アポロ君。今はそっとしておいてあげなさい。御大のことだ、直ぐに気を取り戻して何か打開策を思いつかれるに違いない。その時に素早く動けるように我々は取りかかっている仕事をきっちりと済ませて、何時でも御大の手足となって動けるように準備しておこうじゃないか?
ほら! 皆もそれぞれの仕事に戻るんだぁ!!」

そう言って僕を引き留め、職人たちに仕事に戻る様促したのニャ。
その言葉を受け僕も職人たちも後ろ髪を引かれながらそれぞれの仕事場へと向かったのニャ。結局、この日は一度も御爺々様は母屋から顔を出すことは無かったのニャ。一日の仕事を終えた職人はそれぞれ自宅へと帰り、僕も母屋に籠り工房には姿を現さなかった御爺々様の様子に後ろ髪を引かれつつ、寝泊りをしている羅漢獣王国の商館へと向かったニャ。

「・・・ただいま帰りましたのニャ」

重い足取りのまま商館の扉を開けて、小さな声で帰って来た事を伝える挨拶をボソリと口にし、下を向いたままで割り当てられた部屋へと向かおうとした僕の頭が何故か壁のような物に当たって動きを止められてしまったのニャ。
入り口から入った直ぐの所にこんな壁なんてない筈だと、下を向いていた視線を上げると・・・

「よぉ!どうしたんだアプロ?いやに元気がないじゃないか。
 駄目だぞ、辛い事や嫌な事があるとついつい下を向いてしまうもんだが、下を向けば向く程嫌な事や辛い事ってのは嵩に掛かってやって来るもんだ。嫌な事や辛い事があった時こそ上を向かなきゃな!」

そう言って何時もの不敵な笑みを浮かべる驍廣さんが目の前に立っていたのニャ。その姿を見た途端、昨日いきなり工房に降りかかってきた出来事によって落胆し、母屋へと姿を消した御爺々様が思い起こされて、僕は目の前にある驍廣さんの作務衣を掴んで声を上げてしまっていたニャ…

「驍廣さん、力を、力を貸してくださいニャ! 御爺々様を・・僕の御爺々様を助けて下さいニャ~~~!!」





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