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鍛冶武者修行に出ますが何か!(海竜街編)
第弐百参拾六話 人魚族に災いが降りかかってきましたが何か!
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「お、おい!?大丈夫か二人とも・・・」
突如、島に来訪したティブロン商会のカンディル・ラウリクチャと名乗った商人が提示した手形を目にしたフォルテとアコルデはカンディル一行を伴い村の中央にある族長の屋形に入って数刻後、話し合いが終わり特に変わった様子の無いカンディルとは対照的に、屋形から顔を出したフォルテとアコルデは顔色を青くし何か思いつめたような顔で出てきた。
そんな二人に声を掛ける俺や守手衆をはじめとした人魚族の村人たち。そんな俺達を無視するようにカンディルが、
「それでは、二周間後に再び訪れる事に致しましょう。その時には良いお返事がいただける事を期待しておりますよ♪ それでは失礼いたします。」
そう言い残し、連れの男達と共に村から去って行った。その後、守手衆の数人が一行を見送りがてら監視していると、カンディル一行は何事も無かったように海岸に乗り上げていた小舟に乗って停泊していた帆船に戻ると、そのまま海へと船を進め島を離れて行ったようだ。
が、そんな事よりも俺はフォルテやアコルデの思いつめたような表情が気になり話しかけたのだが、二人はこの場では詳しい話をすることなかった。
その夜、村の年寄りや守手衆が族長の屋形へと集められ何事か(無論、カンディルが持ち込んだ案件についてだろうが)が話し合われたようだが、俺に声が掛けられる筈も無く、それが話の内容を知ったのは翌日、ボルコスの鍛冶小屋を訪れた時だった。
「・・・はぁ? なんでフォルテやアコルデ達が島の外まで働きに出なきゃならないんだ。しかも、行き先は人間の国って。俺も人間の国がどんなところか知ってる訳じゃないが、今まで伝え聞いた事や俺が見て来たことから考えると、人間の国なんかに行ったらフォルテ達が何をされるか分かったもんじゃないぞ!」
思わず声を荒げた俺に、ボルコスも渋面を浮かべ頷きながらも
「分かっておる・・・分かっておるが仕方なかろう!これまで島と付き合い、島の為にあらゆる物品を用立ててきてくれていたカサートカ商会が急に立ち行かなくなり、レヴィアタン街のティブロン商会に吸収された為これまで島に用立てて来た物品の未払いの代金などカサートカ商会が持っていた島の借財はその所有権がティブロン商会に移り、ティブロン商会の裁量で借財の回収が自由に行う事がでいる様になったのだから。
元々、カサートカ商会は島出身の人魚族の者が島に物品を調達するために立ち上げた商会で、これまで島には随分と便宜を図って来ていた様だが、代が変わるにつれて設立当初の目的が薄れはしていたものの、どうしてもと言う時には代金の遅延も大目に見て待っていてくれていたのだが、もしかしたらそれが仇ととなったのかもしれん。」
そう言いながら肩を落とすボルコス。しかし、いくら借財が嵩んだとはいえ一つの商会を傾かせるほどの借財が出来る訳が無いと思いつつ、
「・・いや、いくらなんではそれは言い過ぎだろう。一体、カサートカ商会に幾ら滞納してたんだよ?」
と尋ねると、ボルコスはチラリと俺の顔を見たが直ぐに視線を逸らせ、
「・・・・・・」
「はぁ?」
「約二・・・・」
「約二、なんだよ!ハッキリ言え。二百万ゲルドか?もしかして二千万ゲルドなんて言わないよなぁ?」
小声でボソボソと呟くボルコスに、大きな声を上げて問いただす俺に、ボルコスはヤケクソ気味に言い放った。
「約二億ゲルドだ!!」
ボルコスの口から飛び出した金額に、俺は思わず息をのんだ。その金額は俺がリンドブルム街で鍛えた武具の代金の半額。と言ってもリンドブルム街ギルドが一度に支払う事を躊躇するほどの大金の半額ともなれば、いくら繁盛している商会であっても命取りになるであろう金額だった。
「・・お、おい。嘘だろう・・・確か街に詰める衛兵を動員して対応に当たらなければならない魔獣を討伐した際に支払われる報奨金が五百万ゲルドだぞ、その四十倍の金額って一体どうやったらそんなに支払いを滞納できるんだ?!いや、そもそも何を購入したらそんな金額になるんだ!!」
「仕方なかろう! これまでカサートカ商会がレヴィアタン街から海路を使い獣王国や他の地方に産物を運ぶ際には、島の守手衆を護衛や荷揚げ人足に使ってきたがこの所急にその手の仕事が減少していたのだから。その事を危惧したフィナレ族長は前守手長のスフォルツをカサートカ商会へ使いに出したのだが、カサートカ商会からは『今は交易自体が減少している為に仕方が無い。交易が増えれば以前と同じように島の守手衆の力を借りる事になるから心配するな』と言われ、それでもと乾物や海で獲った真珠に珊瑚などを少ないながらも代金の代りにと出していたのだ。
まさか借財が二億ゲルドもの大金にまで膨れ上がっているなど誰が考える!!」
金額を聞いて思わず大声を上げてしまった俺にボルコスも大声で反論するように声をあげた。が、その中に出てきた個人名に俺は嫌なものを感じた。
「・・・ボルコス。今、カサートカ商会に族長が差し向けた使いは誰って言った?」
「だから!前守手長のスフォルツだと言ったのだ。それがどうかしたのか!」
「悪い。再度の確認になるんだが、カサートカ商会に代金の代りに真珠や珊瑚などを出したと言ったが、それはカサートカ商会の者が島に取りに来たのか?
それとも、島の者がレヴィアタン街へ運んだのか?」
「うん? ・・確かぁスフォルツがレヴィアタン街に持っていってカサートカ商会に卸した筈だが・・・」
「おい? 『筈だが』ってなんだよ。いやに曖昧な物言いだなぁ、確認してるんだろ?」
「いや。スフォルツに一任されてその後の確認は・・・」
「してないのか!? となると元凶はスフォルツという事になるが、確かめたくても肝心のスフォルツは島から追放されてしまっていて直ぐには見つけられないだろうし、今更話を聞いたところで二億もの借財が無くなる訳でもないかぁ。参ったなぁ・・・・」
俺は腕を組み左手を顎と口元に持って行って暫し考え込む。そんな俺を余所にボルコスも眉間に深い皺を寄せると、ポツリと溢した。
「しかし、不味い事になった。折角島で獲れる真珠を鍛冶に使う目算がたったと言うにこのままでは使えんぞ・・・。」
「お、おい!そうれはどういう事だよ、新たな鍛冶の方法が見つかったってのに何で使えないんだ!!」
ボルコスの呟きを耳にした俺は、大声を上げながらボルコスの襟元を掴むと吊し上げていた。そんな俺の手をボルコスはタップするように何度も叩きながら、
「は、放ぜ驍廣、っく、苦しい。」
襟元を掴まれ吊し上げられたボルコスが顔を真っ赤にしながら口にした言葉に俺は慌ててボルコスを放すと、ボルコスは何度も咳き込みながら俺の顔を睨み付けた。
と、そんな俺達の元に、
「船が、船が来たぞ~!!」
と、島に船が来訪したことを告げる声が響いて来た。先日に続いての船の来訪・・・厄を運んで来た船に続き今度の船は一体何を島にも取らすのか・・・島中が戦々恐々とする中での来訪だった。
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そんな二人に声を掛ける俺や守手衆をはじめとした人魚族の村人たち。そんな俺達を無視するようにカンディルが、
「それでは、二周間後に再び訪れる事に致しましょう。その時には良いお返事がいただける事を期待しておりますよ♪ それでは失礼いたします。」
そう言い残し、連れの男達と共に村から去って行った。その後、守手衆の数人が一行を見送りがてら監視していると、カンディル一行は何事も無かったように海岸に乗り上げていた小舟に乗って停泊していた帆船に戻ると、そのまま海へと船を進め島を離れて行ったようだ。
が、そんな事よりも俺はフォルテやアコルデの思いつめたような表情が気になり話しかけたのだが、二人はこの場では詳しい話をすることなかった。
その夜、村の年寄りや守手衆が族長の屋形へと集められ何事か(無論、カンディルが持ち込んだ案件についてだろうが)が話し合われたようだが、俺に声が掛けられる筈も無く、それが話の内容を知ったのは翌日、ボルコスの鍛冶小屋を訪れた時だった。
「・・・はぁ? なんでフォルテやアコルデ達が島の外まで働きに出なきゃならないんだ。しかも、行き先は人間の国って。俺も人間の国がどんなところか知ってる訳じゃないが、今まで伝え聞いた事や俺が見て来たことから考えると、人間の国なんかに行ったらフォルテ達が何をされるか分かったもんじゃないぞ!」
思わず声を荒げた俺に、ボルコスも渋面を浮かべ頷きながらも
「分かっておる・・・分かっておるが仕方なかろう!これまで島と付き合い、島の為にあらゆる物品を用立ててきてくれていたカサートカ商会が急に立ち行かなくなり、レヴィアタン街のティブロン商会に吸収された為これまで島に用立てて来た物品の未払いの代金などカサートカ商会が持っていた島の借財はその所有権がティブロン商会に移り、ティブロン商会の裁量で借財の回収が自由に行う事がでいる様になったのだから。
元々、カサートカ商会は島出身の人魚族の者が島に物品を調達するために立ち上げた商会で、これまで島には随分と便宜を図って来ていた様だが、代が変わるにつれて設立当初の目的が薄れはしていたものの、どうしてもと言う時には代金の遅延も大目に見て待っていてくれていたのだが、もしかしたらそれが仇ととなったのかもしれん。」
そう言いながら肩を落とすボルコス。しかし、いくら借財が嵩んだとはいえ一つの商会を傾かせるほどの借財が出来る訳が無いと思いつつ、
「・・いや、いくらなんではそれは言い過ぎだろう。一体、カサートカ商会に幾ら滞納してたんだよ?」
と尋ねると、ボルコスはチラリと俺の顔を見たが直ぐに視線を逸らせ、
「・・・・・・」
「はぁ?」
「約二・・・・」
「約二、なんだよ!ハッキリ言え。二百万ゲルドか?もしかして二千万ゲルドなんて言わないよなぁ?」
小声でボソボソと呟くボルコスに、大きな声を上げて問いただす俺に、ボルコスはヤケクソ気味に言い放った。
「約二億ゲルドだ!!」
ボルコスの口から飛び出した金額に、俺は思わず息をのんだ。その金額は俺がリンドブルム街で鍛えた武具の代金の半額。と言ってもリンドブルム街ギルドが一度に支払う事を躊躇するほどの大金の半額ともなれば、いくら繁盛している商会であっても命取りになるであろう金額だった。
「・・お、おい。嘘だろう・・・確か街に詰める衛兵を動員して対応に当たらなければならない魔獣を討伐した際に支払われる報奨金が五百万ゲルドだぞ、その四十倍の金額って一体どうやったらそんなに支払いを滞納できるんだ?!いや、そもそも何を購入したらそんな金額になるんだ!!」
「仕方なかろう! これまでカサートカ商会がレヴィアタン街から海路を使い獣王国や他の地方に産物を運ぶ際には、島の守手衆を護衛や荷揚げ人足に使ってきたがこの所急にその手の仕事が減少していたのだから。その事を危惧したフィナレ族長は前守手長のスフォルツをカサートカ商会へ使いに出したのだが、カサートカ商会からは『今は交易自体が減少している為に仕方が無い。交易が増えれば以前と同じように島の守手衆の力を借りる事になるから心配するな』と言われ、それでもと乾物や海で獲った真珠に珊瑚などを少ないながらも代金の代りにと出していたのだ。
まさか借財が二億ゲルドもの大金にまで膨れ上がっているなど誰が考える!!」
金額を聞いて思わず大声を上げてしまった俺にボルコスも大声で反論するように声をあげた。が、その中に出てきた個人名に俺は嫌なものを感じた。
「・・・ボルコス。今、カサートカ商会に族長が差し向けた使いは誰って言った?」
「だから!前守手長のスフォルツだと言ったのだ。それがどうかしたのか!」
「悪い。再度の確認になるんだが、カサートカ商会に代金の代りに真珠や珊瑚などを出したと言ったが、それはカサートカ商会の者が島に取りに来たのか?
それとも、島の者がレヴィアタン街へ運んだのか?」
「うん? ・・確かぁスフォルツがレヴィアタン街に持っていってカサートカ商会に卸した筈だが・・・」
「おい? 『筈だが』ってなんだよ。いやに曖昧な物言いだなぁ、確認してるんだろ?」
「いや。スフォルツに一任されてその後の確認は・・・」
「してないのか!? となると元凶はスフォルツという事になるが、確かめたくても肝心のスフォルツは島から追放されてしまっていて直ぐには見つけられないだろうし、今更話を聞いたところで二億もの借財が無くなる訳でもないかぁ。参ったなぁ・・・・」
俺は腕を組み左手を顎と口元に持って行って暫し考え込む。そんな俺を余所にボルコスも眉間に深い皺を寄せると、ポツリと溢した。
「しかし、不味い事になった。折角島で獲れる真珠を鍛冶に使う目算がたったと言うにこのままでは使えんぞ・・・。」
「お、おい!そうれはどういう事だよ、新たな鍛冶の方法が見つかったってのに何で使えないんだ!!」
ボルコスの呟きを耳にした俺は、大声を上げながらボルコスの襟元を掴むと吊し上げていた。そんな俺の手をボルコスはタップするように何度も叩きながら、
「は、放ぜ驍廣、っく、苦しい。」
襟元を掴まれ吊し上げられたボルコスが顔を真っ赤にしながら口にした言葉に俺は慌ててボルコスを放すと、ボルコスは何度も咳き込みながら俺の顔を睨み付けた。
と、そんな俺達の元に、
「船が、船が来たぞ~!!」
と、島に船が来訪したことを告げる声が響いて来た。先日に続いての船の来訪・・・厄を運んで来た船に続き今度の船は一体何を島にも取らすのか・・・島中が戦々恐々とする中での来訪だった。
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