ソムリエ相談役

5.誰も来ない日は、、

　店をやっていると、「全くお客さんが来ない日」というのもちょこちょこある。
　この日は１日台風の予報が出ており、朝から電車が止まってしまうほどだった。
　そんな日は、お客さんはほとんど来ない。一応開店はしたものの、2時間ほど待っても誰も来ないため、早めの店じまいをした。

　そんな日にケイは何をするかというと、一人カウンターに座り、おつまみのビーフジャーキー片手にお気に入りのワインを楽しむ。
　この日はイタリアの「バローロ」をセレクトした。長期熟成により造られたコクと深み、そして赤系果実の鮮やかな味わいは一級品だ。
　外の激しい雨風の音とは反対に、店内にはゆったりとしたジャズソングが流れている。そのギャップが、ケイにはたまらなく落ち着く。
　せわしない社会に身をおきながら、自分だけの逃げ場所がある。そんなお店にしていきたいと、しばらく空想にひたりつつ、ボトルの半分ほど開けたところで、そのまま眠りについた。