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2.OLミカご来店
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少し蒸し暑い夜だった。この日もケイはバーHIBIKIをオープンし、お客さんを待っていた。店内にはゆったりとジャズが流れ、少し年期が入った内装ながらも、きれいに保たれており、ヴィンテージ感が出ていた。
午後21時頃、おそらく20代後半の女性が来店した。
「いらっしゃいませ。」ケイはいつもの優しい口調で挨拶した。
「あのー。ワインなんですけど、イタリアのものも置いてますか?」
「はい、ございます。赤と白がございますが、どちらにされますか?」HIBIKIでは豊富なワインをストックしており、お客さんの大概の要望には答えられる。
「私ワインそんなに詳しくなくて、名前はわからないんですけど、イタリア産で少し炭酸が入っていた白ワインが美味しかったんです。」女性は昔を思い返すような表情で答えた。
「それなら、イタリアのフリザンテですね。弱発泡性の白ワインで、冷やして飲むと爽やかなのど越しが際立ちます。今ご用意しますね。」
「ありがとうございます。ずっとそれが飲みたかったんですけど、お店でどれを選べばいいのかわからなくて、やっと出会えました!」女性は嬉しそうに微笑んだ。
ケイはスパークリンググラスを女性の目の前に置き、ゆっくりとワインを注いだ。透き通った黄金色に、気泡がユラユラとひしめき合っている。
女性は一口ワインを飲むと、「これこれ、マスター、本当に美味しいですね!あの頃を思い出します。」と言った。
「あの頃って、何かそのワインに思い出があるんですか?」ケイは興味深そうに尋ねた。
「このワイン、職場の先輩が好きだったんです。飲みに行くと、よくこのワインを勧められましてね。」女性は続けた。
「男の先輩だったんですけど、私、その先輩のことが好きだったんです。だけど、突然の転勤で地方へ行ってしまって、それっきり会えてないんです。」女性は悲しそうにワインを一口飲んだ。
「お客さん、まだその先輩のことが好きなんですね。お気持ちはわかります。地方というと、どちらへ?」
「鹿児島だと聞いています。また遠くに行ったものですよね。」
「でも行けない距離じゃないですね。連休もらえた時にでも、会いに行ってみたらどうですか?このフリザンテを持って。」そう言うと、ケイはセラーの中からもう一本、同じワインを出してきた。
「未開封のボトルでお売りすることはできないので、よかったら僕からお譲りします。まだチャンスがあるなら、ぜひ、彼と一緒に飲んでください。」ケイは女性にワインを差し出した。
「え、本当にいいんですか!?私このお店はじめてなのに、、」女性は少しためらいながら、しかし、嬉しそうに続けた。
「私ミカって言います。またこのお礼と、結果を報告しに飲みに来ますね!」ミカは、先ほどまでのどこか悲しげな雰囲気とは違い、どこか吹っ切れたような表情に変わっていた。
「うん、またいつでも来てくださいよ。お待ちしています。」
ミカはその後もワインをゆっくりと3杯飲み干し、帰路についた。
午後21時頃、おそらく20代後半の女性が来店した。
「いらっしゃいませ。」ケイはいつもの優しい口調で挨拶した。
「あのー。ワインなんですけど、イタリアのものも置いてますか?」
「はい、ございます。赤と白がございますが、どちらにされますか?」HIBIKIでは豊富なワインをストックしており、お客さんの大概の要望には答えられる。
「私ワインそんなに詳しくなくて、名前はわからないんですけど、イタリア産で少し炭酸が入っていた白ワインが美味しかったんです。」女性は昔を思い返すような表情で答えた。
「それなら、イタリアのフリザンテですね。弱発泡性の白ワインで、冷やして飲むと爽やかなのど越しが際立ちます。今ご用意しますね。」
「ありがとうございます。ずっとそれが飲みたかったんですけど、お店でどれを選べばいいのかわからなくて、やっと出会えました!」女性は嬉しそうに微笑んだ。
ケイはスパークリンググラスを女性の目の前に置き、ゆっくりとワインを注いだ。透き通った黄金色に、気泡がユラユラとひしめき合っている。
女性は一口ワインを飲むと、「これこれ、マスター、本当に美味しいですね!あの頃を思い出します。」と言った。
「あの頃って、何かそのワインに思い出があるんですか?」ケイは興味深そうに尋ねた。
「このワイン、職場の先輩が好きだったんです。飲みに行くと、よくこのワインを勧められましてね。」女性は続けた。
「男の先輩だったんですけど、私、その先輩のことが好きだったんです。だけど、突然の転勤で地方へ行ってしまって、それっきり会えてないんです。」女性は悲しそうにワインを一口飲んだ。
「お客さん、まだその先輩のことが好きなんですね。お気持ちはわかります。地方というと、どちらへ?」
「鹿児島だと聞いています。また遠くに行ったものですよね。」
「でも行けない距離じゃないですね。連休もらえた時にでも、会いに行ってみたらどうですか?このフリザンテを持って。」そう言うと、ケイはセラーの中からもう一本、同じワインを出してきた。
「未開封のボトルでお売りすることはできないので、よかったら僕からお譲りします。まだチャンスがあるなら、ぜひ、彼と一緒に飲んでください。」ケイは女性にワインを差し出した。
「え、本当にいいんですか!?私このお店はじめてなのに、、」女性は少しためらいながら、しかし、嬉しそうに続けた。
「私ミカって言います。またこのお礼と、結果を報告しに飲みに来ますね!」ミカは、先ほどまでのどこか悲しげな雰囲気とは違い、どこか吹っ切れたような表情に変わっていた。
「うん、またいつでも来てくださいよ。お待ちしています。」
ミカはその後もワインをゆっくりと3杯飲み干し、帰路についた。
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