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第42話

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夏の日差しが弱まり、秋の実りが市場に出初めた頃、

王城にソフィアとレティシアの姿があった。

建国祭の際にセラフィナ王太子妃と約束したお茶会がやっとかなったのだ。

城の入口ではライムンド第二王子がソフィアとレティシアを待っていた。



「ようこそ、ソフィア姉様、レティ、みんなが庭で待ってる」



ライムンドはエスコートし今日のお茶会の会場である庭へ向かった。



「今日のソフィア姉様もレティも綺麗だね、久しぶりに会えて嬉しいよ。美しい二人をエスコートできて光栄だよ(レティ、会うたびにどんどん綺麗になってくな、俺の知らないとこで変な虫が付かなきゃいいのだが…)」



「ふふっ、ライ君たら相変わらず口が上手いんだから」



「ほんとだよね」



「俺嘘付かないし、お世辞なんて言わないし」



ライムンドは本気で言ってるのに信じてもらえず項垂れた。

しかし、久しぶりにレティに会えたのだからと、気を取り直したライムンドは今日1日をレティと楽しく過ごそうと思った。



しばらく歩くと、王族のプライベートエリアにある庭に着いた。色とりどりの秋の花々が咲き乱れ、王太子の子供たちが喜ぶからとあちらこちらに可愛い動物の形をしたトピアリーが植わっていた。

子供たちが走り遊べるように芝生の広場があり近くには白いガゼボが建っていた。ガゼボにはすでに焼き菓子やフルーツが準備されていて、芝生には敷物が敷かれローテーブルが置いてあり、子供用の低い椅子が2つとクッションがいくつか置いてあった。



庭に着くと、レイナルド王太子、セラフィナ王太子妃、王太子の双子の子供たち、シャルロット王女が待っていた。



王太子があいかわらずのキラキラした爽やかスマイルでソフィアとレティシアに声をかけてきた。



「やあ、久しぶり今日はよく来てくれたね、ソフィアは建国祭以来だね、レティはもっと久しぶりだな、会いたかったよ。早くお茶会をやりたかったんだが中々時間がとれなくてね、今日はゆっくりしていってくれ」



「はい、ありがとうございます。今日はみんなとたくさんお話が出来ると思って楽しみにしてたんです。私も栗をたくさん剥くのを手伝って、レティがみんなの大好きなモンブランケーキ作ってきました。ねっレティ」



とソフィアはレティシアに話を振った。



「もう大変だったの!栗剥くの。でもね、みんながいつも美味しいって言ってくれるから、今回もはりきって作ってきました!」



レティシアの言葉に一番に喜んだのはシャルロットだった。



「嬉しいですわ!一年に一度のレティちゃんのモンブランケーキ、私大好物ですの、ありがとうレティちゃん」



セラフィナのドレスの後から、今まではずかしくて隠れてた双子の子供たちがトコトコと出てきてレティシアに抱きついた。顔を上に向け頬を染めながらレティシアに話しだした。



「「あのねあのね、僕たちもレッちゃんのケーキ大大大しゅきです!あとね、あとであしょんでくだしゃい」」



レティシアはしゃがんで子供たちの目線と合わせた。



「ありがとう、あとでみんなと一緒に食べようね、食べたらいーっぱい遊ぼうね」



「「はーい」」



子供たちは元気良く返事をした。



それを聞いていたシャルロットは焦った。



「わ…私もレティちゃんと遊びたいですわ」



そんなシャルロットに返事をしたのは子供たちだった。



「「シーちゃん、みんなと一緒に遊ぼうね」」



子供たちはにっこり笑ってシャルロットに言った。それを見ていた王太子ら五人はシャルロットの方が子供みたいだとクスクス笑うのだった、





「そろそろ座ってお茶会を始めよう」



とレイナルドの一声でみんなは席に着いた。

レティシアは持ってきたモンブランケーキを切り分けてもらう為、近くにいた侍女に手渡した。

ガゼボにはレイナルド、セラフィナ、ソフィアが席に着き、レティシアは子供たちに手を引かれ芝生に敷いた敷物へ座った。三人を追うようにシャルロットとライムンドが敷物に座った。

子供たちはちょこんと子供椅子に座り、レティシアの作ったモンブランケーキが来るのを楽しみに待っている。そこへ侍女たちがお茶とケーキを乗せたトレイを持って来た。

早速、子供たちは「「いただきます」」そう言って、フワフワなスポンジケーキになめらかな栗のクリームがたっぷりにのっているモンブランケーキを一口食べた。



「「ほぁ…っ、レッちゃんの作ったケーキはかくべちゅ美味しいでしゅ。レッちゃんはお菓子を作る天才なのでしゅね」」



隣ではシャルロットが感動しながらケーキを味わっていた。



「んーっ、レティちゃんの作ったモンブランケーキ最高ですわ!」



「ありがとう、たくさん食べてね」



レティシアはお姉ちゃんと頑張ってたくさんの栗を剥いたかいがあったと喜んだ。



(たくさんの栗を拾って腰は痛いし、栗の鬼皮たくさん剝いて手は痛いしで大変だったけど、一年に一度くらいなら…みんなのこの笑顔が見れるならまた来年も頑張ろうかな)

そうレティシアは心の中で思った。





お茶とケーキを堪能しながらソフィアとセラフィナはおしゃべりに花を咲かしている、その姿を愛おしそうにレイナルドは見つめている。





一方、敷物の上に座ってる五人はケーキを食べたあと何して遊ぶか相談していた。

シャルロットが何して遊ぶ?とレティシアに聞いた。



「魔力操作はどう?」



「レティちゃんそれって遊びなの?」



「えっ違うの?だってお姉ちゃんが、私が子供の頃遊びって言ってやってたよ?」



三人はガゼボにいるソフィアに目を向けた。会話が聞こえていたのかソフィアは気まずそうにそーっとそっぼを向き顔をそらした。

どうやら、レティシアの魔力が幼い頃から多かった為、早めに魔力操作を覚えたほうが良いと思ったソフィアが、遊びと称してやっていたみたいだった。

この年になって、やっと魔力操作は遊びではないと知ったレティシアであった。



「じゃあ、土魔法で小さいゴーレム作って木剣で倒すのは?」



「レティ、それは遊びじゃなくて訓練だ!騎士たちが訓練で行ってるやつ!」



と、今度はライムンドがレティシアにツッコミを入れた。



「えっ!?だってお父さんが、私が3歳頃?から遊びって言って、最初は30センチ位のゴーレムをお父さんがたくさん出して私が何分で倒すかって、そんな遊びしてたよ。…これって遊びじゃないの?」



「「絶対違うから!」」



これも遊びではないと知ったレティシアの頭の中で浮かんだ父の顔はそっぽを向いていた。



結局、レティシアとシャルロット、子供たちはおとなしくボール遊びをすることになった。



(子供たちと遊んでいるレティの笑顔可愛いな、いつか俺たちの……)

ライムンドはキャッキャと子供たちとはしゃぐレティシアを見ながら、レティシアとのいつかを夢に見ていた。





結構な時間を遊んだレティシアはそろそろ休憩しようと子供たちとシャルロットに声をかけた。

休憩中、子供たちは子供椅子に座りお茶を飲んでいる。

疲れたたのだろう、カップを持ったままウトウトしだした。



「あら、遊び疲れたみたいね。私と子供たちは先に失礼するわね、今日は楽しかったわ、またねソフィア、レティ」



セラフィナは席を立ち乳母に抱っこされた子供たちと部屋へ帰って行った。



ソフィアはレティシアと「どうする?私達もそろそろ帰ろうか」と相談をしていると、レイナルドが「二人はまだ時間があるか?」と聞いてきた。



「「はい、まだ大丈夫です」」



「なら、ちょっと見せたいものがあるんだ。まだ非公開なんだが……」
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