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77.スキンシップ
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※※※双子視点です。
ピアノを弾いてたら時間を忘れてしまった。
待ち合わせに遅れて慌ててロングレッグスハウスへ行ったら、まだみんなは談話室でのんびりしていた。
のんびりしてるというより、悩みこんでいた。
良実ちゃんのパソコンを囲んで、何か言い合っている。
明日生は貴也や夜穂ちゃんの後ろに立って行方を眺めているような気配だ。
腕を組んで立っている姿はやっぱり綺麗で、白のカットソーにジーンズを穿いている。
「「えっと、お待たせ?」」
「いらっしゃい、こんばんは」
「まこちゃん、さとちゃん、こんばんは」
「「こんばんは」」
「ああ、ほんとに来たんだね」
良実ちゃんがどことなくおかしそうに微笑みながら俺たちを見る。
「「え?」」
夜穂ちゃんが俺に肩を組んできながら、困ったようにでも明るく言った。
「いやあさ、甲斐が日本料理がいいって言い出してさ」
「いつものレストランは今日は気分じゃないんです。日本食以外にしても行ける範囲は狭まってくるじゃないですか」
ああ、そっか。
「あの、俺たちのことあんまり気にしなくていいよ?」
「食べられそうなもの適当に頼むしさ?」
俺たちがベジタリアンだから、行ける店に悩んでいるようだ。
「寿司がいいって!」
貴也が良実ちゃんのパソコンに手を出しながら、言った。
「寿司って、かっぱ巻きしか食べれねえじゃん、双子」
「「だから、気にしないで……」」
「おしんこ巻きも食べれるんじゃない?」
そう言った良実ちゃんに、おしんこって何、って尋ねたら、かっぱ巻きはわかるの? と逆に訊かれた。
「いなりずしも食べられるんじゃないんでしょうか」
「いなりって出汁が入ってなかったっけ?」
「「ああ、あの、寿司食べたことないし、初体験してみたいかも?」」
「二人とも、よく言いました! じゃあ、寿司に決定! 行きますよ!」
甲斐がみんなを黙らせて、7人で出かけることにした。
明日生がオレンジ色のニットジャケットを羽織るのをつい眺める。
黒い髪に、オレンジってなんだかかっこいい。
「?? どうしました?」
不思議そうに微笑みかけられて、つい慌てた。
「あ、えっと……!」
「なんか美味しそうなジャケットだね……!」
みんなに笑われた。
明日生が食べるのに夢中になってて、珍しい。
明日生の正面に座って食べながらその様子を見ていた。
良実ちゃんもいつもより多めに食べてるみたいだ。
ここにしてよかったのかもしれない。
「じゃあ、覚は今日は休みだったのか。午後はずっとピアノ弾いてたとか?」
「あ、ううん」
「友達が家に来てたんだ」
「へえ!? 学校の友達!?」
「うん、国際科の友達だよ。お茶飲んで話してたんだ」
甲斐が手を止めて不思議そうな顔をした。
「お二人って、お友達とどんなこと話すんですか? なんだか想像がつきませんけど」
「そうだね、食べ物の話さえもあんまりできなさそうだしね」
良実ちゃんまで首をかしげた。
「普段は、日本のこととか教えてもらってるけど……」
「今日はそうだな、クラシックの話とかしたよ」
夜穂ちゃんがなぜか明日生に凭れ掛かりながらうなだれた。
「もーすこし若者らしい話しようぜ?」
「あ、失礼な。クラシック好きな若者だってたくさんいるよ」
「遠まわしに言ったんだよな? 夜穂が好きそうな話はしないのかって」
まあ、夜穂ちゃんが好きそうな話といったら、おそらく猥談だろう。
「康成は……そういえばそういう話ぜんぜんしないなあ」
「お堅い感じがするよね」
「康成って言うのか。国際科って言うから、外国人かと思ったよ」
「康成は日本国籍で日本育ちなんだけど、金髪碧眼なんだ」
「へえ、金髪」
「うん。ちょうど甲斐が今日金のペンダントつけてるだろ? ちょうどそんな感じの金色」
「けっこう見事な金髪ですね」
明日生が感心したように言うので、ドキッとした。
そういえば、日本人ってせっかくの黒髪を金色っぽく染めてるひとが多い気がする。
「……もしかして、みんな、金髪って好き?」
「俺、好きだな」
貴也が即答した。
「私も結構好きですねえ」
「俺も」
良実ちゃんまで頷いた。
「まあ、嫌いじゃないですけど?」
明日生がなぜか困ったように笑いながら言った。
夜穂ちゃんだけ、首を捻っていた。
「俺、結構どうでもいいかも? いっそ髪なんてなくたって気にしねえし」
うっかり髪がない良実ちゃんを想像してしまって、普通の顔を装うのに苦労した。
夜穂ちゃんは俺たちの様子に気がついたみたいで、何か言うかなと思ったけど話題を変えてきた。
「双子さあ、かっぱ巻きとおしんこまきといなりとナス握りだけで飽きねえの?」
「「え、うん。サラダみたいで美味しいよ」」
「だったら、よかった。誘っておいてつまんない食事だったらどうしようかと思っちゃいました」
明日生が嬉しそうな顔をした。
明日生がいて、つまんないなんて、まずありえないよ。
「ライスってあんまり好きじゃなかったんだけど」
「また食べに来たいかも、気に入っちゃった」
そう俺たちが言うと、みんなは驚いた顔をした。
「日本人なのに米が苦手なんてだめだよ」
「うん、損してるから、それ」
慌てて忠告してくれた貴也と夜穂ちゃんに尋ねた。
「「そこまで、米って大事??」」
「まあ、夜穂先輩と貴也先輩の言うことは放っておいていいですよ」
明日生と良実ちゃんが笑ってる。
「あっ、明日生、そのくくりに俺まで入れるなよな……!」
貴也が抗議して、明日生の肩を揺さぶった。
貴也もけっこうスキンシップが多いほうだから、こういう光景はよく見かける。
俺たちだって、結構気安くひとを触るほうだと思う。
でも恋を自覚してから触れることをやたら意識するようになって、手が止まることがよくある。
だから貴也や夜穂ちゃんがうらやましかった。
今度みんなで外食するときは、明日生の隣に貴也や夜穂ちゃんを座らせないように頑張ろうかな。
目の前で誰かが明日生に触れてるのを見るの、ちょっとつらいんだ。
ピアノを弾いてたら時間を忘れてしまった。
待ち合わせに遅れて慌ててロングレッグスハウスへ行ったら、まだみんなは談話室でのんびりしていた。
のんびりしてるというより、悩みこんでいた。
良実ちゃんのパソコンを囲んで、何か言い合っている。
明日生は貴也や夜穂ちゃんの後ろに立って行方を眺めているような気配だ。
腕を組んで立っている姿はやっぱり綺麗で、白のカットソーにジーンズを穿いている。
「「えっと、お待たせ?」」
「いらっしゃい、こんばんは」
「まこちゃん、さとちゃん、こんばんは」
「「こんばんは」」
「ああ、ほんとに来たんだね」
良実ちゃんがどことなくおかしそうに微笑みながら俺たちを見る。
「「え?」」
夜穂ちゃんが俺に肩を組んできながら、困ったようにでも明るく言った。
「いやあさ、甲斐が日本料理がいいって言い出してさ」
「いつものレストランは今日は気分じゃないんです。日本食以外にしても行ける範囲は狭まってくるじゃないですか」
ああ、そっか。
「あの、俺たちのことあんまり気にしなくていいよ?」
「食べられそうなもの適当に頼むしさ?」
俺たちがベジタリアンだから、行ける店に悩んでいるようだ。
「寿司がいいって!」
貴也が良実ちゃんのパソコンに手を出しながら、言った。
「寿司って、かっぱ巻きしか食べれねえじゃん、双子」
「「だから、気にしないで……」」
「おしんこ巻きも食べれるんじゃない?」
そう言った良実ちゃんに、おしんこって何、って尋ねたら、かっぱ巻きはわかるの? と逆に訊かれた。
「いなりずしも食べられるんじゃないんでしょうか」
「いなりって出汁が入ってなかったっけ?」
「「ああ、あの、寿司食べたことないし、初体験してみたいかも?」」
「二人とも、よく言いました! じゃあ、寿司に決定! 行きますよ!」
甲斐がみんなを黙らせて、7人で出かけることにした。
明日生がオレンジ色のニットジャケットを羽織るのをつい眺める。
黒い髪に、オレンジってなんだかかっこいい。
「?? どうしました?」
不思議そうに微笑みかけられて、つい慌てた。
「あ、えっと……!」
「なんか美味しそうなジャケットだね……!」
みんなに笑われた。
明日生が食べるのに夢中になってて、珍しい。
明日生の正面に座って食べながらその様子を見ていた。
良実ちゃんもいつもより多めに食べてるみたいだ。
ここにしてよかったのかもしれない。
「じゃあ、覚は今日は休みだったのか。午後はずっとピアノ弾いてたとか?」
「あ、ううん」
「友達が家に来てたんだ」
「へえ!? 学校の友達!?」
「うん、国際科の友達だよ。お茶飲んで話してたんだ」
甲斐が手を止めて不思議そうな顔をした。
「お二人って、お友達とどんなこと話すんですか? なんだか想像がつきませんけど」
「そうだね、食べ物の話さえもあんまりできなさそうだしね」
良実ちゃんまで首をかしげた。
「普段は、日本のこととか教えてもらってるけど……」
「今日はそうだな、クラシックの話とかしたよ」
夜穂ちゃんがなぜか明日生に凭れ掛かりながらうなだれた。
「もーすこし若者らしい話しようぜ?」
「あ、失礼な。クラシック好きな若者だってたくさんいるよ」
「遠まわしに言ったんだよな? 夜穂が好きそうな話はしないのかって」
まあ、夜穂ちゃんが好きそうな話といったら、おそらく猥談だろう。
「康成は……そういえばそういう話ぜんぜんしないなあ」
「お堅い感じがするよね」
「康成って言うのか。国際科って言うから、外国人かと思ったよ」
「康成は日本国籍で日本育ちなんだけど、金髪碧眼なんだ」
「へえ、金髪」
「うん。ちょうど甲斐が今日金のペンダントつけてるだろ? ちょうどそんな感じの金色」
「けっこう見事な金髪ですね」
明日生が感心したように言うので、ドキッとした。
そういえば、日本人ってせっかくの黒髪を金色っぽく染めてるひとが多い気がする。
「……もしかして、みんな、金髪って好き?」
「俺、好きだな」
貴也が即答した。
「私も結構好きですねえ」
「俺も」
良実ちゃんまで頷いた。
「まあ、嫌いじゃないですけど?」
明日生がなぜか困ったように笑いながら言った。
夜穂ちゃんだけ、首を捻っていた。
「俺、結構どうでもいいかも? いっそ髪なんてなくたって気にしねえし」
うっかり髪がない良実ちゃんを想像してしまって、普通の顔を装うのに苦労した。
夜穂ちゃんは俺たちの様子に気がついたみたいで、何か言うかなと思ったけど話題を変えてきた。
「双子さあ、かっぱ巻きとおしんこまきといなりとナス握りだけで飽きねえの?」
「「え、うん。サラダみたいで美味しいよ」」
「だったら、よかった。誘っておいてつまんない食事だったらどうしようかと思っちゃいました」
明日生が嬉しそうな顔をした。
明日生がいて、つまんないなんて、まずありえないよ。
「ライスってあんまり好きじゃなかったんだけど」
「また食べに来たいかも、気に入っちゃった」
そう俺たちが言うと、みんなは驚いた顔をした。
「日本人なのに米が苦手なんてだめだよ」
「うん、損してるから、それ」
慌てて忠告してくれた貴也と夜穂ちゃんに尋ねた。
「「そこまで、米って大事??」」
「まあ、夜穂先輩と貴也先輩の言うことは放っておいていいですよ」
明日生と良実ちゃんが笑ってる。
「あっ、明日生、そのくくりに俺まで入れるなよな……!」
貴也が抗議して、明日生の肩を揺さぶった。
貴也もけっこうスキンシップが多いほうだから、こういう光景はよく見かける。
俺たちだって、結構気安くひとを触るほうだと思う。
でも恋を自覚してから触れることをやたら意識するようになって、手が止まることがよくある。
だから貴也や夜穂ちゃんがうらやましかった。
今度みんなで外食するときは、明日生の隣に貴也や夜穂ちゃんを座らせないように頑張ろうかな。
目の前で誰かが明日生に触れてるのを見るの、ちょっとつらいんだ。
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