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第二章 ギルドの依頼
第百十六話 二人の距離
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事が一段落し、ジャンとシェリーは他の居残り組と一緒に帰ることになった。
「さっきは悪かったな、いきなりつっかかったりして」
道場の門前で、ベルナールはジャンに向かって素直に謝った。
「いいよ、もう別に気にしちゃいねぇし。それよりおまえ、鼻は大丈夫か?」
「大丈夫なわけないだろ? あんな重い打撃、シェリー姐さん以外からもらったことねぇよ」
「すまねぇな」
「いいさ、俺の自業自得だし」
二人は互いに笑みを浮かべた。
「では今日はこれにてお開きとしますかな」
シルヴァン師範がそう言うと、みな師範の方を向いた。
「師範、今日はいろいろとごめんなさい」
シェリーは師範に深々と頭を下げた。
「いえいえ、今回の件はベルナールが原因ですから、シェリーさん、ジャンさんはなにも悪くありませんよ」
「いやー面目ない」
ベルナールは頭をかきながら申し訳なさそうにした。
「鼻が治り次第、彼には地獄の特訓で精神を鍛えなおしてもらうとしましょう」
「そんな、師範、勘弁してくださいよぉー」
「「はははははは!」」
ベルナールの情ない声に一同は大笑いした。
「それではみなさん、帰りましょうか」
こうしてその日は丸く収まり、それぞれいつも通り家路についた。
ホテルまで帰る途中、ジャンとシェリーは今日のことを振り返った。
「結局あいつ、なにがしたかったんだ?」
ジャンはベルナールがなぜ自分に絡んできたのかわからないままだった。
「さあ? なにがしたかったのかしらねー?」
シェリーはジャンの質問を適当にはぐらかした。
「あ! おまえわかってて隠してるだろ?」
「知らないわよ。あたしを心配させた罰よ。教えてあげない」
「なんだよそれ?」
「でも……」
「でも……なんだよ?」
「あんたさっき、ちょっとカッコよかったわよ」
シェリーは少し小さな声でそう言うと、振り返ってそのまま速足で先へと歩いていった。
「あ、おい! 待てよ! ちょっと!」
ジャンは彼女の思いもよらぬ言葉に取り乱し、しどろもどろになりながらその後ろを追いかけた。ほんの少しだけ距離が縮まった二人を、煌々と輝く満月が照らしていた。
「さっきは悪かったな、いきなりつっかかったりして」
道場の門前で、ベルナールはジャンに向かって素直に謝った。
「いいよ、もう別に気にしちゃいねぇし。それよりおまえ、鼻は大丈夫か?」
「大丈夫なわけないだろ? あんな重い打撃、シェリー姐さん以外からもらったことねぇよ」
「すまねぇな」
「いいさ、俺の自業自得だし」
二人は互いに笑みを浮かべた。
「では今日はこれにてお開きとしますかな」
シルヴァン師範がそう言うと、みな師範の方を向いた。
「師範、今日はいろいろとごめんなさい」
シェリーは師範に深々と頭を下げた。
「いえいえ、今回の件はベルナールが原因ですから、シェリーさん、ジャンさんはなにも悪くありませんよ」
「いやー面目ない」
ベルナールは頭をかきながら申し訳なさそうにした。
「鼻が治り次第、彼には地獄の特訓で精神を鍛えなおしてもらうとしましょう」
「そんな、師範、勘弁してくださいよぉー」
「「はははははは!」」
ベルナールの情ない声に一同は大笑いした。
「それではみなさん、帰りましょうか」
こうしてその日は丸く収まり、それぞれいつも通り家路についた。
ホテルまで帰る途中、ジャンとシェリーは今日のことを振り返った。
「結局あいつ、なにがしたかったんだ?」
ジャンはベルナールがなぜ自分に絡んできたのかわからないままだった。
「さあ? なにがしたかったのかしらねー?」
シェリーはジャンの質問を適当にはぐらかした。
「あ! おまえわかってて隠してるだろ?」
「知らないわよ。あたしを心配させた罰よ。教えてあげない」
「なんだよそれ?」
「でも……」
「でも……なんだよ?」
「あんたさっき、ちょっとカッコよかったわよ」
シェリーは少し小さな声でそう言うと、振り返ってそのまま速足で先へと歩いていった。
「あ、おい! 待てよ! ちょっと!」
ジャンは彼女の思いもよらぬ言葉に取り乱し、しどろもどろになりながらその後ろを追いかけた。ほんの少しだけ距離が縮まった二人を、煌々と輝く満月が照らしていた。
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