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第六章 父祖の土地へ
第二百六十五話 いまこの瞬間
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魔法錠で剣を施錠したジャンが保安官にそれを見せると、保安官は三人を解放した。
「これからは気を付けるんだぞ」
「はい。すみません……」
立ち去って行く保安官を見届けると、ジャンはホテル群のほうを向いた。
「さてと! 気を取り直して宿取ろうぜ! せっかくだし、あの七階建てのとこにすっか」
「ちょっと待って」
ニコラがそこで止めに入った。
「なんだよニコラ。なんか問題でもあんのか?」
「その……。あのホテルはすでに下調べが済んでるんだけど、ちょっとお高いんだ」
「それがなんだよ? ハリルさんの依頼でたくさんお金もらっただろ?」
「たしかに資金には余裕があるけど……」
「けど、なんだよ?」
どうもなにか問題があるらしい。ニコラはどうにも言い難そうな顔をしていた。
「……さっき言った通り、クーラン帝国は平和で発展もしてるから危険が少ないんだ。だから、その……。あれがほぼないんだ」
「あれって?」
「ローハンターズギルドだよ」
「「えー!!」」
ジャンとシェリーは人目をはばからず大声を上げた。
「じゃ、じゃあお金はどうするのよ!?」
「そうだぜ! 帰りの船賃とか大丈夫なのかよ!?」
「二人ともおちついて! いま言った通り資金にはまだ余裕があるから!」
ニコラは二人をなだめ、ひとつひとつ丁寧に説明することにした。彼が言うには、現在の残金でもクーラン帝国を横断するだけなら準高級ホテルに泊まってもおつりが来る。しかし他の国も回るとなると、宿泊施設は庶民向けのところでないと難しいとのことだった。
「あの七階建てのホテルは人気だし、完成して間もないから割高なんだ。でももっと古いところなら十分の一の代金で泊まれるし、古いって言ってもリゾート地だからそれなりに綺麗だし」
「えー! せっかくビーチに来たのにぃ! 安いホテルなんかやだ!」
リゾートでお姫様気分を味わいたいシェリーは納得がいかなかった。しかしジャンのほうは、なぜかいつになくものわかりがよかった。
「仕方ねぇな。じゃあ安いとこにしようぜ」
「はぁ? なにあんた急に素直になってるのよ!」
「だって金が尽きたらオリンピア王国行けねぇし」
けっきょくのところ理由はそれだけだった。
「そんな、あたしは興味ないし……」
「いいだろ別に。それによー、ホテルがショボくても海は同じだろ? ホテルは荷物を置いとくだけ。さっさと準備して戻って来ようぜ。なんだかんだで俺たち、もう何年も一緒に海で遊んでなかったし、たまにはいいだろ?」
「え……。それは……」
シェリーの気持ちが少し揺らいだ。三人は幼馴染の縁でよくお互いの家に行くことはあった。しかし目の前に漁港があるためか、海の存在が当たり前すぎて、そこで一緒に遊ぶことから六、七年は離れていた。それがいま、異国のリゾート地でジャンのほうから誘ってきている。
「船ん中で読書ばっかして身体なまってるしよー、なんか思いっきり身体動かしたくなってきたぜ。メシはあそこの掘っ立て小屋で食えるみたいだし、あそこで先に昼飯食ってから宿探してもいいかもな」
彼の変わらぬ裏表のない態度と潮騒の音がシェリーのハートをくすぐった。
「しょ、しょうがないわね。いいわよ。それなら早くお昼食べてチェックインするわよ」
彼女は照れ隠しのつもりなのか、さっさと掘っ立て小屋のほうへ歩いて行った。
「よっしゃ! じゃあ行こうぜ、ニコラ!」
「ああ、そうだな」(こいつだんだんシェリーの扱い方が上手くなってきたな)
贅沢できるほどの余裕はないものの、楽しみはなくならない。十代最後の思い出作りにはそれで十分だった。
三人は掘っ立て小屋の前まで来た。店先にはジャンに負けず劣らずの、やや筋肉質で浅黒い、いかにも海の男といった風体の男が客に出す料理を作っていた。
男の目の前にはレンガで組んだ窯があり、その上には鉄板が敷かれていた。下から赤黒い木炭が煙を上げ、それが鉄板の上の鶏肉と香辛料の香りと混ざり、なんとも食欲をそそるいい匂いを漂わせていた。
シーズン前でまだ客足がまばらなのか、外に出されているテーブルは五組ほどで、そのうち客が座っているのは一組だけ。座っているのはややがっしりとしているがどこか知的な中年男性が一人だけ。いま調理しているのはその客の注文だろう。
「んー。いい匂いだぜ」
ジャンが鼻をくんくんさせて近付くと、男は調理を続けながら声をかけてきた。
「いらっしゃい。兄ちゃんたち、卒業旅行かなにかかい?」
「まあそんなとこかな。おっちゃんはここに住んでんの?」
「いーや。昔は家族で住んでたんだが、戦争で半壊しちまったんで改装して店にしたんだ。毎年夏だけ店開いてる。もうちょっとしたら客でごった返すぜ」
どうやら男は観光客の多い夏だけここで海の家をやっているようだった。
「夏以外はなにしてるんですか?」
シェリーが尋ねた。
「うちは大工やってる。木造専門だからあそこのホテルには関わってないがね」
「そうなんですねー」
男はちょうどそこで料理を完成させた。そしてそれを慣れた手つきで切って皿に盛ると、テーブルで待つ客へ持って行った。
「へい! おまちどう!」
男は軽快な声で料理を出すと、中年の客は微かな笑みを返した。
「ありがとう。いい香りだな」
「ありがとうございやす。味も香りに負けてませんぜ」
「それはそれは。期待していただくことにするよ」
「へい! どうぞごゆっくり!」
中年の客は薄手のシャツにひざ丈のパンツと見た目はラフだったが、その佇まいは非常に落ち着いており、物腰も柔らかだった。ただ少し弱っているようにも見えた。
男は客に料理を出すと、窯の前に戻ってきた。
「さてと。兄ちゃんたちはなににするんだ? メニューはこれだ」
彼は脇に立てかけてあるボードを指さした。三人はそのボードを見た。
「メニューはシンプルに四つか。なら全部頼んで三人で分けるのもありかな」
ニコラがそう言うと、ジャンとシェリーも軽く頷いた。
「そうだな。そうしようぜ。シェリー、それでいいか?」
「うん、いいよ」
「じゃあおっちゃん。そういうことだから。あと水三人分ね」
「あいよ! じゃあ適当なテーブルでかけて待っててくんな。水はそこに瓶があるから適当に持ってってくれ」
「「はーい」」
三人は各々水の入った瓶とコップを手に取ると、適当なテーブルに着いた。そしてさっそく瓶の蓋を開けコップに水を注ぐと、ひとまず一口飲み、辺りを見渡した。
「ここもおっちゃんがやったのかな?」
「なのかな。けっこうおしゃれなデザインだよね」
掘っ立て小屋と言っても店舗用に改装しただけあって、中も外もそれなりによい雰囲気を醸し出していた。リゾート地で営業許可を得ているだけあって、そこのところはしっかりしていた。奥には更衣室もあるようで、至れり尽くせりといった感じだった。
海の方に目をやると、視界には青い海。深緑の葉。黄色い砂浜。すべてがカラフルに彩られていた。そして潮と共に満ちる波の音。風に揺れる木々のこすれる音。鉄板にへらが当たる音。時折聞こえる人の声。ホテル工事の金属音すらも、場の雰囲気に溶け込んでいた。
「ちょっと思ったんだけどよー」
少し間が空いてから、ジャンが話を始めた。
「写真は白黒だし、蓄音機の音はガサガサしてるけど、俺たちがいま見てる色とか、聴いてる音は本物なんだよな」
いきなり柄にもなく漠然とした話をしはじめたので、シェリーとニコラはきょとんとして彼を見た。
「え? 俺、なんか変なこと言ったか?」
「ちょっとジャン。あんた慣れない読書なんかしておかしくなっちゃったの?」
「なんだよそれ。おかしくねーよ。なんつーかさ……たとえばだぜ? 俺たちの子どもとか孫とか、ずっと先の奴はもっといい機械で写真撮ったり、音を録ったりするんだろうなって、なるだろ? いまよりずっとリアルなやつ。でも俺たちがいま見てる世界はほんとの本物なんだぜ? どんなに科学が発展して、本物そっくりの絵や音を残せるようになっても、俺たちが見て、聴いてる世界と同じじゃねぇじゃん?」
「もー、急にこんがらがる話しないでよー」
知的好奇心が芽生え始めたジャンの結論の見えない話に、シェリーは軽い拒絶反応を示した。それを察して彼も話を引っ込めた。
「悪ぃ悪ぃ。ただなんとなくよー、いまこの瞬間の、こうやっておまえやニコラと一緒にいる時間。なんかいいよなって。そう思ったんだよ」
時は過ぎ去る。未来の写真が本物そっくりに記録を残せるようになっても、本物はいまこの瞬間にしかない。そういうことが言いたかったのだろうが、彼はまだそれを表現するのに十分な言葉を持ち合わせていない。
「いまこの瞬間のリアルが大切ってことだな」
いつも難しい話をしがちなニコラが、ここではシンプルな言葉で話を上手くまとめた。
「そう! そういうことなんだよ! さすがニコラだぜ!」
ジャンもそれがしっくりきたのか、すべてすっきりしたといった感じだった。
「話が難しいのよ。急に賢こそうなこと言っちゃってさ。そんなことより海よ! 海! いまこの瞬間の海!」
「その前にメシだろ? もうすぐできそうだし、まずは目の前の食い物だぜ!」
調理も仕上げに入っていい匂いがあたりに立ち込めていた。その香りも、いまこの瞬間、彼らにとってのリアルだった。
「これからは気を付けるんだぞ」
「はい。すみません……」
立ち去って行く保安官を見届けると、ジャンはホテル群のほうを向いた。
「さてと! 気を取り直して宿取ろうぜ! せっかくだし、あの七階建てのとこにすっか」
「ちょっと待って」
ニコラがそこで止めに入った。
「なんだよニコラ。なんか問題でもあんのか?」
「その……。あのホテルはすでに下調べが済んでるんだけど、ちょっとお高いんだ」
「それがなんだよ? ハリルさんの依頼でたくさんお金もらっただろ?」
「たしかに資金には余裕があるけど……」
「けど、なんだよ?」
どうもなにか問題があるらしい。ニコラはどうにも言い難そうな顔をしていた。
「……さっき言った通り、クーラン帝国は平和で発展もしてるから危険が少ないんだ。だから、その……。あれがほぼないんだ」
「あれって?」
「ローハンターズギルドだよ」
「「えー!!」」
ジャンとシェリーは人目をはばからず大声を上げた。
「じゃ、じゃあお金はどうするのよ!?」
「そうだぜ! 帰りの船賃とか大丈夫なのかよ!?」
「二人ともおちついて! いま言った通り資金にはまだ余裕があるから!」
ニコラは二人をなだめ、ひとつひとつ丁寧に説明することにした。彼が言うには、現在の残金でもクーラン帝国を横断するだけなら準高級ホテルに泊まってもおつりが来る。しかし他の国も回るとなると、宿泊施設は庶民向けのところでないと難しいとのことだった。
「あの七階建てのホテルは人気だし、完成して間もないから割高なんだ。でももっと古いところなら十分の一の代金で泊まれるし、古いって言ってもリゾート地だからそれなりに綺麗だし」
「えー! せっかくビーチに来たのにぃ! 安いホテルなんかやだ!」
リゾートでお姫様気分を味わいたいシェリーは納得がいかなかった。しかしジャンのほうは、なぜかいつになくものわかりがよかった。
「仕方ねぇな。じゃあ安いとこにしようぜ」
「はぁ? なにあんた急に素直になってるのよ!」
「だって金が尽きたらオリンピア王国行けねぇし」
けっきょくのところ理由はそれだけだった。
「そんな、あたしは興味ないし……」
「いいだろ別に。それによー、ホテルがショボくても海は同じだろ? ホテルは荷物を置いとくだけ。さっさと準備して戻って来ようぜ。なんだかんだで俺たち、もう何年も一緒に海で遊んでなかったし、たまにはいいだろ?」
「え……。それは……」
シェリーの気持ちが少し揺らいだ。三人は幼馴染の縁でよくお互いの家に行くことはあった。しかし目の前に漁港があるためか、海の存在が当たり前すぎて、そこで一緒に遊ぶことから六、七年は離れていた。それがいま、異国のリゾート地でジャンのほうから誘ってきている。
「船ん中で読書ばっかして身体なまってるしよー、なんか思いっきり身体動かしたくなってきたぜ。メシはあそこの掘っ立て小屋で食えるみたいだし、あそこで先に昼飯食ってから宿探してもいいかもな」
彼の変わらぬ裏表のない態度と潮騒の音がシェリーのハートをくすぐった。
「しょ、しょうがないわね。いいわよ。それなら早くお昼食べてチェックインするわよ」
彼女は照れ隠しのつもりなのか、さっさと掘っ立て小屋のほうへ歩いて行った。
「よっしゃ! じゃあ行こうぜ、ニコラ!」
「ああ、そうだな」(こいつだんだんシェリーの扱い方が上手くなってきたな)
贅沢できるほどの余裕はないものの、楽しみはなくならない。十代最後の思い出作りにはそれで十分だった。
三人は掘っ立て小屋の前まで来た。店先にはジャンに負けず劣らずの、やや筋肉質で浅黒い、いかにも海の男といった風体の男が客に出す料理を作っていた。
男の目の前にはレンガで組んだ窯があり、その上には鉄板が敷かれていた。下から赤黒い木炭が煙を上げ、それが鉄板の上の鶏肉と香辛料の香りと混ざり、なんとも食欲をそそるいい匂いを漂わせていた。
シーズン前でまだ客足がまばらなのか、外に出されているテーブルは五組ほどで、そのうち客が座っているのは一組だけ。座っているのはややがっしりとしているがどこか知的な中年男性が一人だけ。いま調理しているのはその客の注文だろう。
「んー。いい匂いだぜ」
ジャンが鼻をくんくんさせて近付くと、男は調理を続けながら声をかけてきた。
「いらっしゃい。兄ちゃんたち、卒業旅行かなにかかい?」
「まあそんなとこかな。おっちゃんはここに住んでんの?」
「いーや。昔は家族で住んでたんだが、戦争で半壊しちまったんで改装して店にしたんだ。毎年夏だけ店開いてる。もうちょっとしたら客でごった返すぜ」
どうやら男は観光客の多い夏だけここで海の家をやっているようだった。
「夏以外はなにしてるんですか?」
シェリーが尋ねた。
「うちは大工やってる。木造専門だからあそこのホテルには関わってないがね」
「そうなんですねー」
男はちょうどそこで料理を完成させた。そしてそれを慣れた手つきで切って皿に盛ると、テーブルで待つ客へ持って行った。
「へい! おまちどう!」
男は軽快な声で料理を出すと、中年の客は微かな笑みを返した。
「ありがとう。いい香りだな」
「ありがとうございやす。味も香りに負けてませんぜ」
「それはそれは。期待していただくことにするよ」
「へい! どうぞごゆっくり!」
中年の客は薄手のシャツにひざ丈のパンツと見た目はラフだったが、その佇まいは非常に落ち着いており、物腰も柔らかだった。ただ少し弱っているようにも見えた。
男は客に料理を出すと、窯の前に戻ってきた。
「さてと。兄ちゃんたちはなににするんだ? メニューはこれだ」
彼は脇に立てかけてあるボードを指さした。三人はそのボードを見た。
「メニューはシンプルに四つか。なら全部頼んで三人で分けるのもありかな」
ニコラがそう言うと、ジャンとシェリーも軽く頷いた。
「そうだな。そうしようぜ。シェリー、それでいいか?」
「うん、いいよ」
「じゃあおっちゃん。そういうことだから。あと水三人分ね」
「あいよ! じゃあ適当なテーブルでかけて待っててくんな。水はそこに瓶があるから適当に持ってってくれ」
「「はーい」」
三人は各々水の入った瓶とコップを手に取ると、適当なテーブルに着いた。そしてさっそく瓶の蓋を開けコップに水を注ぐと、ひとまず一口飲み、辺りを見渡した。
「ここもおっちゃんがやったのかな?」
「なのかな。けっこうおしゃれなデザインだよね」
掘っ立て小屋と言っても店舗用に改装しただけあって、中も外もそれなりによい雰囲気を醸し出していた。リゾート地で営業許可を得ているだけあって、そこのところはしっかりしていた。奥には更衣室もあるようで、至れり尽くせりといった感じだった。
海の方に目をやると、視界には青い海。深緑の葉。黄色い砂浜。すべてがカラフルに彩られていた。そして潮と共に満ちる波の音。風に揺れる木々のこすれる音。鉄板にへらが当たる音。時折聞こえる人の声。ホテル工事の金属音すらも、場の雰囲気に溶け込んでいた。
「ちょっと思ったんだけどよー」
少し間が空いてから、ジャンが話を始めた。
「写真は白黒だし、蓄音機の音はガサガサしてるけど、俺たちがいま見てる色とか、聴いてる音は本物なんだよな」
いきなり柄にもなく漠然とした話をしはじめたので、シェリーとニコラはきょとんとして彼を見た。
「え? 俺、なんか変なこと言ったか?」
「ちょっとジャン。あんた慣れない読書なんかしておかしくなっちゃったの?」
「なんだよそれ。おかしくねーよ。なんつーかさ……たとえばだぜ? 俺たちの子どもとか孫とか、ずっと先の奴はもっといい機械で写真撮ったり、音を録ったりするんだろうなって、なるだろ? いまよりずっとリアルなやつ。でも俺たちがいま見てる世界はほんとの本物なんだぜ? どんなに科学が発展して、本物そっくりの絵や音を残せるようになっても、俺たちが見て、聴いてる世界と同じじゃねぇじゃん?」
「もー、急にこんがらがる話しないでよー」
知的好奇心が芽生え始めたジャンの結論の見えない話に、シェリーは軽い拒絶反応を示した。それを察して彼も話を引っ込めた。
「悪ぃ悪ぃ。ただなんとなくよー、いまこの瞬間の、こうやっておまえやニコラと一緒にいる時間。なんかいいよなって。そう思ったんだよ」
時は過ぎ去る。未来の写真が本物そっくりに記録を残せるようになっても、本物はいまこの瞬間にしかない。そういうことが言いたかったのだろうが、彼はまだそれを表現するのに十分な言葉を持ち合わせていない。
「いまこの瞬間のリアルが大切ってことだな」
いつも難しい話をしがちなニコラが、ここではシンプルな言葉で話を上手くまとめた。
「そう! そういうことなんだよ! さすがニコラだぜ!」
ジャンもそれがしっくりきたのか、すべてすっきりしたといった感じだった。
「話が難しいのよ。急に賢こそうなこと言っちゃってさ。そんなことより海よ! 海! いまこの瞬間の海!」
「その前にメシだろ? もうすぐできそうだし、まずは目の前の食い物だぜ!」
調理も仕上げに入っていい匂いがあたりに立ち込めていた。その香りも、いまこの瞬間、彼らにとってのリアルだった。
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