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第三章 亡国の系譜
第百四十八話 ホテル到着
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それからホテルに到着するまで、シェリーはソフィにべったりとくっつき、美容の話から普段着ている服のブランドまで根掘り葉掘り尋ねた。ソフィは積極的なシェリーにやや押され気味ながらも、気前よく質問に答えていた。そのおかげで向かいに座るジャンは特にやることがなく、到着までニコラと一緒に居眠りをすることになった。
そして乗車から二十分ほどのときが過ぎ、馬車はホテルに到着した。
「着いたみたいね。ジャン、ニコラ、起きなさい」
ソフィはまずジャンをゆすって起こした。
「ふぁー、よく寝た。なに? 着いたの?」
「ええ。ニコラも起こしてあげて」
「はーい」
ジャンはニコラの肩を叩いた。
「おい、ニコラ、着いたぜ。起きろよ」
「ん……?? あれ? いつの間に寝てたんだ?」
「おまえ、おばさんに褒められたショックで気絶してたぜ。そのあと魔法で回復してもらって……」
「え!? ……ソフィさん、ご迷惑をおかけしてすみません」
ニコラは赤面しながらソフィに向かって頭を下げた。
「いいのよ、気にしなくて。それにわたしのこと、そんなに良く思ってくれて嬉しいわ。でももっと気楽に接してくれていいのよ」
「そうだぜニコラ。おばさんは俺の親戚なんだからよー」
「いやぁ、まいったなぁ」
ニコラは困り顔をして頭をかいた。
「いいわ、今晩ゆっくりお話ししましょ。さ、行きましょ」
四人は馬車から降り、ホテルの中へ入った。
ホテルはさすが国賓クラスを迎え入れているだけあって、高級感が漂っていた。ロビーの床は全面大理石で出来ており、壁面は古代の王宮をモチーフとした荘厳な意匠をたたえ、その所々にフェーブル王国のエンブレム――二本のツルハシがクロスしており、その中央に船舶が象られている――が彫られていた。
ソフィはまずフロントでジャンたちの入館手続をすることにした。そこにいた二人の受付嬢は迅速に手続を進めた。
「では形式だけですが、お連れ様の照合カードをご提示ください」
「わかったわ。ジャン、昨日あげたカードを出して」
「うん。……これのことだよね?」
「そう、それよ」
ジャンは昨日ソフィから貰ったカードを鞄から取り出し、フロントに提示した。
「ありがとうございます。照合が完了いたしました。どうぞごゆっくり」
受付嬢はカードの照合を済ませると、部屋の鍵を二本差し出した。それを受け取ったソフィは一本をジャンに渡した。
「それじゃあ行きましょ」
「うん」
三人はソフィのあとについて行った。
「セミナー期間中はうちが貸し切ってるから、周りに気を遣う必要はないわ。夕食もビュッフェスタイルでお願いしてるから、テーブルマナーを知らなくても大丈夫よ。もうしばらくしたらみんな帰ってくると思うから、荷物を置いて一息ついたら食堂に行きましょう」
ソフィはジャンたちが緊張してしまわないように配慮しているようだった。
会話をしているうちにソフィの部屋の前に着いた。
「ここよ。それじゃあ中に……あっ」
ソフィは部屋の鍵を開けようとした瞬間、何かを思い出したようだ。
「どうしたの? おばさん」
ジャンは彼女に尋ねた。
「ううん、なんでもないわ。中に入って」
彼女はなにごともなかったかのように三人を中へ通した。
そして乗車から二十分ほどのときが過ぎ、馬車はホテルに到着した。
「着いたみたいね。ジャン、ニコラ、起きなさい」
ソフィはまずジャンをゆすって起こした。
「ふぁー、よく寝た。なに? 着いたの?」
「ええ。ニコラも起こしてあげて」
「はーい」
ジャンはニコラの肩を叩いた。
「おい、ニコラ、着いたぜ。起きろよ」
「ん……?? あれ? いつの間に寝てたんだ?」
「おまえ、おばさんに褒められたショックで気絶してたぜ。そのあと魔法で回復してもらって……」
「え!? ……ソフィさん、ご迷惑をおかけしてすみません」
ニコラは赤面しながらソフィに向かって頭を下げた。
「いいのよ、気にしなくて。それにわたしのこと、そんなに良く思ってくれて嬉しいわ。でももっと気楽に接してくれていいのよ」
「そうだぜニコラ。おばさんは俺の親戚なんだからよー」
「いやぁ、まいったなぁ」
ニコラは困り顔をして頭をかいた。
「いいわ、今晩ゆっくりお話ししましょ。さ、行きましょ」
四人は馬車から降り、ホテルの中へ入った。
ホテルはさすが国賓クラスを迎え入れているだけあって、高級感が漂っていた。ロビーの床は全面大理石で出来ており、壁面は古代の王宮をモチーフとした荘厳な意匠をたたえ、その所々にフェーブル王国のエンブレム――二本のツルハシがクロスしており、その中央に船舶が象られている――が彫られていた。
ソフィはまずフロントでジャンたちの入館手続をすることにした。そこにいた二人の受付嬢は迅速に手続を進めた。
「では形式だけですが、お連れ様の照合カードをご提示ください」
「わかったわ。ジャン、昨日あげたカードを出して」
「うん。……これのことだよね?」
「そう、それよ」
ジャンは昨日ソフィから貰ったカードを鞄から取り出し、フロントに提示した。
「ありがとうございます。照合が完了いたしました。どうぞごゆっくり」
受付嬢はカードの照合を済ませると、部屋の鍵を二本差し出した。それを受け取ったソフィは一本をジャンに渡した。
「それじゃあ行きましょ」
「うん」
三人はソフィのあとについて行った。
「セミナー期間中はうちが貸し切ってるから、周りに気を遣う必要はないわ。夕食もビュッフェスタイルでお願いしてるから、テーブルマナーを知らなくても大丈夫よ。もうしばらくしたらみんな帰ってくると思うから、荷物を置いて一息ついたら食堂に行きましょう」
ソフィはジャンたちが緊張してしまわないように配慮しているようだった。
会話をしているうちにソフィの部屋の前に着いた。
「ここよ。それじゃあ中に……あっ」
ソフィは部屋の鍵を開けようとした瞬間、何かを思い出したようだ。
「どうしたの? おばさん」
ジャンは彼女に尋ねた。
「ううん、なんでもないわ。中に入って」
彼女はなにごともなかったかのように三人を中へ通した。
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