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第三章 亡国の系譜
第百四十六話 ソフィのはからい
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今日の講義はこれが最後だったので、受講者たちはそのまま正面玄関に向かっていた。ジャンたちもその流れに乗ってそちらへ向かうと、入口付近に研究員たちが並んで立っていた。どうやらソフィはそこにはいないようだ。
ジャンが研究員たちの様子をうかがうと、端に立っていたノーマンが彼に気付き、こちらに来るように手で合図をした。
「おい、ノーマンさんが呼んでるみたいだぜ」
「え? どこ? あ、ほんとだ」
三人はノーマンのいるほうへ歩いて行った。
「やあ、お疲れ様」
「「お疲れ様です」」
ノーマンはどうもジャンたちに用事があるようだった。
「終わってすぐで申訳ないけど、所長が奥で待ってるから、ついてきて」
ノーマンはそう言って三人を案内した。彼について後ろの廊下を真っすぐ奥へと進むと、突き当たって右手に休憩室があった。ノーマンはドアを三回ノックした。
「はい」
ソフィの声だ。
「所長、お連れしました」
「そう。じゃあ中に通して」
「はい」
ノーマンはドアを開け、中に入るよう合図した。
三人が休憩室に入ると、ソフィは椅子に掛けてなにやら難しそうな本を読んでいた。彼女は切りのいいところまで読んで本を机に置いた。
「所長、私はこれで」
「ええ、ありがとう、ノーマン」
ノーマンは軽く一礼してドアを閉めた。
「三人とも、そこのソファにかけて」
三人はソフィの指示に従ってソファに座った。
「さっきはどうもありがとう。講義は楽しんでもらえたかしら」
「はい、大変勉強になりました」
「俺も、全部はわかんなかったけど面白かったぜ」
「あたしも、すごく考えさせられました」
「そう、それはよかったわ」
ソフィは満足げに微笑んだ。
「ところであなたたち、今夜の宿はもう決まってるの?」
彼女の質問にはニコラが答える。
「いえ、前の宿を今朝チェックアウトしたきりで、このあと探さなければなりません」
「そう。それならわたしが泊っている部屋を使うといいわ。宿代もばかにならないでしょう?」
「マジ!? おばさんの泊まってるのってすっごい部屋だろ?」
「えー、いいんですか!?」
ソフィの申し出にジャンとシェリーは身を乗り出した。ニコラは申し訳なさそうな顔をしていたが、二人が乗り気な様子だったため口を挟めなかった。
「大丈夫よ。それにわたしはクーラン帝国の国賓扱いだから、先方もできる限りサービスしたいみたいなのよ。昨日ホテルの支配人に甥っ子が友人を連れて来てるみたいだから泊めてもいいかって尋ねたら、二つ返事でオーケーしてくれたわ」
「「やったー!」」
ジャンとシェリーは大喜びした。それもそのはず、彼らがここに来るまでに宿泊してきたのは、クロードの家を除けばすべて安いモーテルばかり。ニコラのようにギルドの依頼先の家にひと月居候させてもらったわけでもない。それが国賓の招かれるような高級ホテルに泊まれるというのだから、興奮しないはずがない。
「喜んでもらえて嬉しいわ。ニコラ、あなたも遠慮しないでいいのよ。気を遣ってくれてありがとう」
「え!? いや、その……僕は別に、気を遣ってなんか……」
ニコラはソフィに気持ちを見透かされ、恥ずかしそうにした。
「それじゃ、わたしは用事を済ませてくるから、ここで待ってて」
ソフィはそう言っていったん休憩室から出て行った。
ジャンが研究員たちの様子をうかがうと、端に立っていたノーマンが彼に気付き、こちらに来るように手で合図をした。
「おい、ノーマンさんが呼んでるみたいだぜ」
「え? どこ? あ、ほんとだ」
三人はノーマンのいるほうへ歩いて行った。
「やあ、お疲れ様」
「「お疲れ様です」」
ノーマンはどうもジャンたちに用事があるようだった。
「終わってすぐで申訳ないけど、所長が奥で待ってるから、ついてきて」
ノーマンはそう言って三人を案内した。彼について後ろの廊下を真っすぐ奥へと進むと、突き当たって右手に休憩室があった。ノーマンはドアを三回ノックした。
「はい」
ソフィの声だ。
「所長、お連れしました」
「そう。じゃあ中に通して」
「はい」
ノーマンはドアを開け、中に入るよう合図した。
三人が休憩室に入ると、ソフィは椅子に掛けてなにやら難しそうな本を読んでいた。彼女は切りのいいところまで読んで本を机に置いた。
「所長、私はこれで」
「ええ、ありがとう、ノーマン」
ノーマンは軽く一礼してドアを閉めた。
「三人とも、そこのソファにかけて」
三人はソフィの指示に従ってソファに座った。
「さっきはどうもありがとう。講義は楽しんでもらえたかしら」
「はい、大変勉強になりました」
「俺も、全部はわかんなかったけど面白かったぜ」
「あたしも、すごく考えさせられました」
「そう、それはよかったわ」
ソフィは満足げに微笑んだ。
「ところであなたたち、今夜の宿はもう決まってるの?」
彼女の質問にはニコラが答える。
「いえ、前の宿を今朝チェックアウトしたきりで、このあと探さなければなりません」
「そう。それならわたしが泊っている部屋を使うといいわ。宿代もばかにならないでしょう?」
「マジ!? おばさんの泊まってるのってすっごい部屋だろ?」
「えー、いいんですか!?」
ソフィの申し出にジャンとシェリーは身を乗り出した。ニコラは申し訳なさそうな顔をしていたが、二人が乗り気な様子だったため口を挟めなかった。
「大丈夫よ。それにわたしはクーラン帝国の国賓扱いだから、先方もできる限りサービスしたいみたいなのよ。昨日ホテルの支配人に甥っ子が友人を連れて来てるみたいだから泊めてもいいかって尋ねたら、二つ返事でオーケーしてくれたわ」
「「やったー!」」
ジャンとシェリーは大喜びした。それもそのはず、彼らがここに来るまでに宿泊してきたのは、クロードの家を除けばすべて安いモーテルばかり。ニコラのようにギルドの依頼先の家にひと月居候させてもらったわけでもない。それが国賓の招かれるような高級ホテルに泊まれるというのだから、興奮しないはずがない。
「喜んでもらえて嬉しいわ。ニコラ、あなたも遠慮しないでいいのよ。気を遣ってくれてありがとう」
「え!? いや、その……僕は別に、気を遣ってなんか……」
ニコラはソフィに気持ちを見透かされ、恥ずかしそうにした。
「それじゃ、わたしは用事を済ませてくるから、ここで待ってて」
ソフィはそう言っていったん休憩室から出て行った。
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