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俺は君のヒーローだ。

26 壊れた好きの先

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昨日俺に恋人ができた。
そして、幼馴染への好きをやめた。

ベッドの中で天井を見つめて昨日の自分の行動を振り返った。
虎と途中まで一緒に昇降口まで行って、虎にヒーローだから一緒にいる宣言をしたのに虎への想いを爆発させて、智也さんに甘えて……それから……。

(……ちょっと、まて、俺、色々女々しすぎないか?!)

恥ずかしくなって顔を覆おうとして気が付いた。

(なんで、智也さんが隣で寝ているんだ?!)

智也さんは片腕で俺を抱きしめる様な形をして隣で眠っていた。
混乱して視線を部屋の中に移す。

(俺の、部屋だな。)

とりあえず、昨日の記憶を引っ張り出す。

(えっと、虎がいて智也さんにキスされてそれで、それで……)

虎が呆然としながら俺の家を出て行った。
それから、しばらく俺を抱きしめてくれていた智也さんが帰ると言って……。

(あー……俺か、俺が無理に智也さんと一緒に居たいって言って、くっ、なにやってるんだ俺は!)

脳内百面相をしていると智也さんから「ふふっ」と笑い声がした。
まさか、と思って智也さんをみるとニコニコしながら「おはよう」と言われる。

「起きてたんですか。おはようございます。」
「うん。優翔、割とわかりやすいからつい見ちゃってた。」
「……なんか、恥ずかしいから起きてたなら言ってください。」
「ふふ、うん、ごめん。……そういえば今日、学校だよね。時間平気?」

智也さんの言葉に一気に青ざめ、近くにある時計を急いで見る。

「……7時!」
(出席確認が8時35分。学校まで約15分、着替えに5分、朝食は昨日の残りを温めて調理約2分、食べるのが約15分、しめて約40分。ギリギリ8時前には着けるな。)

余裕があるとわかり胸をなで下ろすと、智也さんにもそれがわかったみたいでニコッと笑われた。

「あ、智也さんはカフェ平気なんですか?!」

カフェの開店時間は早く7時からのはずだった。いつも、智也さんは一日中シフトに入っているので本来ならば遅刻の時間だ。

「あー、うん。実は今日昼からなんだ。なんか、店長が半休っていうの?くれて。まぁ、だから全然平気。」

「そうなんですか、よかったぁ……俺のせいで遅刻とか申し訳なさすぎますから……。」

「ははっ、優翔は良い子だなぁ。」

智也さんはそう言うと俺の頭を撫でて笑った。
なんだか、心が久々に穏やかになった気がした。



学校に行く準備を終えると智也さんと一緒に家を出た。それから、昼まで暇だからと智也さんも一緒に学校へ行ってくれることになった。
たわいも無い話をしながらまだ人の少ない道を歩く。
智也さんの隣は不思議だ。心が落ち着いて、会話が弾む。

(もしかしたら、俺はちゃんと智也さんを好きになれるのかもしれないな……。)

刺さる痛みはいつかきっと、消えてくれるだろう。いつか、きっと痛まなくなる日が来るだろう。


「それじゃ、またね。いってらっしゃい。」
「はい。また。行ってきます。」

校門について智也さんに挨拶をしてから昇降口へ向かう。

(あれ?なんで……?)

智也さんの隣から離れた瞬間涙が出そうになった。必死に堪えて涙を消したが、初めてのことに戸惑いを隠せなかった。

ただ、智也さんから少し離れただけなのに。
何故だか、心の中を漠然とした恐怖が支配していた。

(おかしい……なんでだ?こんな……)

とりあえず、頭に残っている冷静さで自分を動かして教室までたどり着いた。

「あ、優翔おはよー!」
「……幸太。おはよう。」

教室には幸太1人だった。
ホッとした。
さっきまでいた恐怖が嘘のようにいつもの自分に戻ったみたいだった。

けれど、しばらくして気が付いた。
俺の恐怖のトリガー。

「真木ちゃん。おはよう。」

違う人みたいだった。
昨日と何一つ変わらないはずなのに。
どうしてだろう。虎が怖くて仕方ないんだ。
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