10 / 68
俺は君のヒーローだ。
7 先生と指輪?
しおりを挟むキーンコーンカーンコーン
チャイムの音が四時間目の始まりを告げた。
(次は、国語か…)
三時間を終わらせて、次が今日最後の授業だった。
ガラガラと音を立てて田中先生が入ってきた。
「よし、号令。」
「きりーつ、礼」
「「「おねがいしまーす」」」
「着席」
「よーし、最後の授業は国語です。前の三教科は授業入ってたかー?」
先生が、出席確認を取りながらクラスに聞く。
「ガイダンスと自己紹介したよ!」
幸太がそれにいち早く答えた。
「お、そうか…。授業やりたくない人ー?」
少し考えてから先生が聞くとクラスの大半が「はーい」と言って手を挙げた。
「成る程…まぁ、他のクラスでもやらなかったからな。ガイダンスとまた、先生の自己紹介でもするか。まずは、ガイダンスをするぞ。」
そう言って先生はプリントを配り、今後の学習計画と成績の付け方、提出物などの説明をしてくれた。
「よーし、残りは……15分か…。んー、よし、先生に聞きたいことある人いるかー?」
「彼女いますかー」「好きなタイプはー?」
「何才?」「家どこですか?」
先生の問いに一斉に声が上がった。
「おーおー、隣のクラスも授業中だから静かになー。えー、まず聞き取れたのから答えてくぞー。」
先生は咳払いをした。
「まず、彼女はいない。」
「えー、うそだー」
「嘘じゃないぞ。次、好きなタイプは、教えない。」
「えー、教えてよー」
「駄目。それから歳は29。」
「えー、先生二十代前半だと思ってたー」
「おぉ、そうかー。えー、家は、学校から1時間以内の場所にある。あとは何か聞いたか?」
クラスのがやを華麗に返しながら先生は質問に答えて言った。
「よし、もう授業終わるな。ホームルームは朝言った通り無いから、部活動体験をする人は放送と貼ってあるプリントを参考に各自で行くように。号令の後、国語科係は前へ来てくれ。よし、号令。」
「きりーつ、礼」
「「「ありがとうございました」」」
先生に呼ばれた通り、俺は教卓の前に行く。
「お、真木さっそく仕事だ。一緒に国語科の職員室行くぞ。」
そう言って先生は、持って来た教材を俺に渡して教室を出る。俺は、その後を追って歩く。
「国語科の職員室は、二階の別棟にあるからな。あ、普通の職員室も別棟にあるぞ。」
「…はい」
「真木は、部活動体験行くのか?」
「いや…行かないです。」
俺がそう答えると、先生は少し驚いたように俺を見た。
「陸上しないのか?」
「……はい、まぁ。」
俺は、持っている教材を眺めた。
「……そうか。」
先生は、何かを考えてからそう言ってまた歩き出した。
「よし、ここが国語科室だ。授業前と授業後に一応寄って欲しいかな…まぁ、朝のホームルームで来て欲しい時は言うから、言われなかった時は来なくても大丈夫だぞ。」
「わかりました。」
国語科室は、小さな図書館の様に壁の側面が鍵のかかる本棚で埋まっていた。部屋の中心には、先生のと思われる机が1つあった。
「…1つ?」
俺が、不思議に思って声に出すと先生がそれを聞いて答えてくれた。
「あー、この学校国語科の先生は俺を除いて、進路を担当してる人だから基本進路室にいるんだよ。あと、その教材はそこの机に置いてくれ。」
「そう、なんですか。」
「そういえば昔はここ、文学部が部室に使ってたな。本当は、ここは国語科の資料室だったんだが、国語科室自体を俺1人しか使わないからここでいいだろって言われてなー。」
「じゃあ…今の国語科室って…?」
「あぁ、会議室になってる。」
「え、そうなんですか。」
机に教材を置きながら先生と話していると、装飾のないシンプルな指輪が目に入った。
「…先生、結婚してたんですか?」
俺が聞くと、先生はぽかんとしながら振り返り俺の目線の先を見た。
「っ、れはっ…!」
先生は、猛スピードでそれを机の中にしまい俺の肩を掴んだ。
「真木、お前は何も見ていないな。」
「え、あの。」
「見てない。真木は、何も見ていない。いいな。見ていないから、誰にも何も言わないんだぞ。そして、教室に戻りなさい。」
物凄い圧力のある笑顔で俺に言葉の嵐を投げかける先生に押されて声を出す間も無く国語科室を後にする事になった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
平凡顔のΩですが、何かご用でしょうか。
無糸
BL
Ωなのに顔は平凡、しかも表情の変化が乏しい俺。
そんな俺に番などできるわけ無いとそうそう諦めていたのだが、なんと超絶美系でお優しい旦那様と結婚できる事になった。
でも愛しては貰えて無いようなので、俺はこの気持ちを心に閉じ込めて置こうと思います。
___________________
異世界オメガバース、受け視点では異世界感ほとんど出ません(多分)
わりかし感想お待ちしてます。誰が好きとか
現在体調不良により休止中 2021/9月20日
最新話更新 2022/12月27日
【完結】今夜さよならをします
たろ
恋愛
愛していた。でも愛されることはなかった。
あなたが好きなのは、守るのはリーリエ様。
だったら婚約解消いたしましょう。
シエルに頬を叩かれた時、わたしの恋心は消えた。
よくある婚約解消の話です。
そして新しい恋を見つける話。
なんだけど……あなたには最後しっかりとざまあくらわせてやります!!
★すみません。
長編へと変更させていただきます。
書いているとつい面白くて……長くなってしまいました。
いつも読んでいただきありがとうございます!
大好きな幼馴染は僕の親友が欲しい
月夜の晩に
BL
平凡なオメガ、飛鳥。
ずっと片想いしてきたアルファの幼馴染・慶太は、飛鳥の親友・咲也が好きで・・。
それぞれの片想いの行方は?
◆メルマガ
https://tsukiyo-novel.com/2022/02/26/magazine/
別れてくれない夫は、私を愛していない
abang
恋愛
「私と別れて下さい」
「嫌だ、君と別れる気はない」
誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで……
彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。
「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」
「セレンが熱が出たと……」
そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは?
ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。
その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。
「あなた、お願いだから別れて頂戴」
「絶対に、別れない」
身の程なら死ぬ程弁えてますのでどうぞご心配なく
かかし
BL
イジメが原因で卑屈になり過ぎて逆に失礼な平凡顔男子が、そんな平凡顔男子を好き過ぎて溺愛している美形とイチャイチャしたり、幼馴染の執着美形にストーカー(見守り)されたりしながら前向きになっていく話
※イジメや暴力の描写があります
※主人公の性格が、人によっては不快に思われるかもしれません
※少しでも嫌だなと思われましたら直ぐに画面をもどり見なかったことにしてください
pixivにて連載し完結した作品です
2022/08/20よりBOOTHにて加筆修正したものをDL販売行います。
お気に入りや感想、本当にありがとうございます!
感謝してもし尽くせません………!
【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」
そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。
彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・
産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。
----
初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。
終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。
お読みいただきありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる