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僕が思うこと(恋愛編)

自分を優しくないと認識する人だとしても誰かにとっては優しい人なんだ。(優しい人は幸せであってほしいと望んでしまうのはエゴかもしれない。)

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彼女は、自身を“優しい人間ではない”と認識している。

どうすれば、伝わるだろうか。

僕は、彼女が自分のことをどう思おうと、勝手に優しい人だと思っているだけだということを。

彼女の認識なんてどうでもいいんだ。
僕はただ、彼女を優しいと認識した。
それだけなんだよ。

どうすればうまく言えるのだろうか。

僕は表現が下手だから、人に伝えることをしてこなかったから、うまくできない。できている自信がない。

けれど、伝えなくても良いのかもしれない。
彼女を優しいと思うのは僕の考えでしかない。
どうしてそう思ったのか、なんて、言わなくても良いのかもしれない。

でも、自分の中ではこういうことだって、文字にしておきたい。

そもそも、僕は人間は自己の欲を満たすためにしか動かない生き物だと考えている。

人を助けるのも、“助けたい”という欲を満たすためだと考えている。
全部、自分のためだ。
それを勝手に綺麗だと、優しいと他人は感じるんだ。

結局は受け取る側、解釈する側の勝手な判断でしかない。

けれど、その勝手に人は救われたり、悲しんだりする。


僕は、こういった考えを持っていて、そうだったら素敵だと、綺麗だと思った。

それで、これは僕の中では大前提の考えなんだ。

人間は自分のためにしか動かない。
自分がそうしたいから。
他人がそれを望むというのを自分が叶えたいから。

僕が、人のせいにするという考えを素直にできないのは、この前提があるせいだ。

どんなに考えても、結局は自分の責任というところに帰ってくる。

誰かのせいで失敗したというのだって、自分がその人を頼ったせいだ。
自分が信頼したせいだ。

想定外のことが起こったとかも、想定できなかった自分が悪い。

多分、他人を責めるのは面倒だという考えもあるんだろうな。

けれど、この考えは僕自身に当てはめているだけだ。
他者にも同じように動けとは言わないし、思わない。

僕みたいな考えの人が周りに沢山いたら、きっと息が詰まる。
それに、自分を責めすぎるというのは良くない。

責任感の強い人間ほど、自分を責める傾向にあるらしい。

責任感の強い人は、優しい人間が多い。
他人の責任まで背負おうとする。
それなのに、他人の分を背負っていることを気付いていないんだ。

その点、僕はどこか違う。

他人は他人であり、僕の干渉する域ではないと考えている。

だから、他人の責任なんて背負わないし、背負いたくない。
自分の責任は自分で背負う。それ以外は嫌だ。

まぁ、何が言いたいかというと、結局、僕という人間は自分のことしか考えていない。

対して彼女はどうだろう。

自分のために動いているといいながら、その自分の周りを見ている。
彼女の背負う責任というものには、他人が当然のように乗っている。
といっても、彼女も人は選んでいるようだが、それでも、自分以外を見ている。

僕の考えが内向きで自身の中にこもっているのだとするなら、彼女は内向きといいつつ、自分の中に人が、、、友人がいる。

僕の心の世界が僕1人で構成されているなら、彼女の心の世界はきっと1人じゃない。

彼女は、人と関わろうとする。
僕は、人と関わりたくないという思いが底にある。


僕と彼女は考え方が似ているようで、大きく違う。それは、前提が違うからだと、僕は思う。


そして、僕は彼女の考え方が好きなんだ。
僕は友人ですら、他人と括ってしまう。
けれど、彼女には友人という枠がある。それだけで、僕には優しい人だと思う。“友人だから”という言葉を使える彼女は優しい。僕からしたら、とても優しい。

きっと、彼女には当然のことで、前提にあることなんだろう。

僕には、それを当然と考えて、自分は優しい人間ではないと評価する彼女を“優しくない”ということはできない。

彼女に対する“優しい”は、他人に甘いという意味もある。けれど、その甘さを僕は良いものだと思った。

言葉には裏と表があって、受け取り方が人によって違う。
それで、僕は、彼女の行動を良いものとして受け取った。

それは、彼女がそう評価するに値する人間だと、僕が判断したからだ。

彼女が自分で冷酷だと認識している行動は、僕にはあたたかくて仕方がない。

自分の利益になるからと、他人に優しくすることの、どこが冷酷なのだろう。

優しくされた他人は、利益なんてわかっていないのが大半だ。

他人からは、優しさしか残らない。

それに、彼女が優しくしているという事実は変わらない。他人のために動いたという事実はかわらないのだ。

だから、僕は優しいと認識する。

その事実が変わらないのに、自分は利益のために動いていると正直に言えるのは、素敵なことだと僕は思う。

他人のために動いている、助けたいから動いている、誰かの役に立ちたい、そう思う人もきっといるのだろう。

けれど、僕には、そういった人達は眩しすぎる。
“利用されるかもしれない”ということを“人の役に立てる”と考える人は、どうしても、悲しい。
優しすぎて、身を滅ぼしてしまうじゃないか。自分を、大切にしてほしい。自分のために動いてほしい。けれど、その人にとっての“自分のため”は、きっと“誰かを助けること”なんだろう。

だから、僕は悲しい。優しさが痛いんだ。


彼女は自分の利益というけれど、僕にはたまに、身を滅ぼしそうな人に見えてしまう。

自分がしたいからといって、身を滅ぼしそうな勢いで動くから。
自分の利益という負い目から勝手に気遣いを沢山するから。

僕には負い目に見えないそれを、負い目と考えるから。

僕の言葉に、彼女は深く考えるから。自分はそんな人間ではないと、そう、考えてしまうから。

僕は、なんだかそれが悲しくて、腹が立ってしまう。

僕のことなんて、僕の言葉なんて、考えなくて良いのに。彼女は考えるから。僕だけじゃない。誰かの言葉に、彼女は考えるから。

けれど僕は、そんな彼女を尊敬しているし、素敵だと思う。時々酷く悲しくなるけれど、それでも、その悲しいというのは僕の過去の積み重ねのせいで、彼女が素敵な人ということは変わらない。


そうだ、僕には素敵に映るんだよ。


綺麗に見えるんだ。
冷たくなくて、優しい。

だから、悲しまないでほしい。幸せでいてほしい。

彼女だけじゃない。
僕の周りにいる人達は、みんな優しい。綺麗な人ばかりだ。

だから、みんなに幸せでいてほしい。

けれど、僕がその幸せを作るわけにはいかない。
僕は、あくまで傍観者で、他人で、いないものでありたい。

じゃないと、僕が、幸せを作ってしまったら、僕が必要になってしまう。

僕が誰かの幸せに組み込まれたら、僕は…逃げることができなくなる。

だから、あくまで友人Aとかの位置にいて、なんとなく幸せな日常を過ごせればよかったんだ。

そんな考えだから、幸せの中でも消えたくなるし、自分はいらないと思ってしまう。

どうして、僕なんだと、彼女に問い詰めたくなってしまう。

僕以外にも、彼女の周りには人がいたのに。どうして、僕なんだ…。

優しくて、あたたかい人。
僕には時々優しすぎるようにみえる人。
けれど、優しすぎないバランスを彼女はきっと無意識に行なっている。
本当に、尊敬する。

僕は、彼女に幸せになってほしい。

笑っていてほしい。

悲しさや不幸だって、それらの糧になるはずなのに、僕は彼女が悲しむ姿を見たくない。

だから、僕のエゴで彼女の恋人でいる。

きっと、僕が恋人にならなくたって、彼女は幸せになれるはずなのに、僕のエゴで、彼女に笑ってほしいと思ってしまった。喜んでほしいと思ってしまった。

悲しかったのに、苦しかったのに、彼女は僕にそういった思いをしてほしくなかっただろうに…。
僕が苦しむことをしたくないと、言われているのに…。

僕は僕のエゴで、彼女の“僕に苦しんでほしくない”という望みを無視して、隠している。

本当に、僕は自分しか見ていない。

好きな人が自分のせいで苦しむなんて、僕だったら嫌なのに。自分の知らないところで悲しんでいるなんて、きっとそれを知ったら辛いのに。

喜びを与えたいがために、その喜びが悲しみになる可能性を無視して自分のために動いている。

僕は、他人をおもちゃとしか思っていないのか…?
本当に僕は酷いやつだ。

それに、自分が幸せの鍵にも不幸の鍵にもなれるようで怖い。

その他大勢とか友人Aとかに戻りたい。
けれど、彼女を傷付ける覚悟がない。
どこまでも情けない奴だ。


まぁ、怖いだけで、いつか慣れればこう思わなくなるのかもしれない。

そう思うのが先か、彼女が新しい鍵を見つけるのが先か…どちらが早いかな。

兎に角、僕は、彼女が優しくして、優しすぎて身を滅ぼしてほしくないと思っている。中でも僕が原因でってのは、1番嫌だ。


あぁ、本当に、これだから優しい人は苦手なんだ。
傷付けるのが怖いから。苦しめたくないと思うから。笑っていてほしいと願ってしまうから。

これだから、苦手だ。
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