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普通

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「どうしてだろう」

例えば、好きな食べ物の話とか

「どうしてだろう」

例えば、家で親と何を話したとか

「どうしてだろう」

例えば、アンケートにある性別欄とか

「どうしてだろう」

例えば、普通だと作られた枠の外にいるような感覚とか


「どうしてだろう。どうして、自分にはそれが、上手くできないんだろう。どうして、わからないのだろう。」

己ですらわからないことを、どうやって他人に伝えればいいのだろうか。

どうして、普通なら悩まなくていいことを、こんなにも悩まなくてはいけないのだろうか。

どうして、普通になれないのだろう。

「ただ、生まれてきただけなのに。」

でも、普通ってなんだろう。
どうすれば、普通になるんだろう。

「だけど、本当に普通になりたいのかな?」

ただ、自分になりたいだけなんだ。

普通っていう枠組みの中にいないといけないとしても
ただ、自分として、そこにいたいんだ。

普通は、自分にとっては苦しくて、演じなきゃいけないものだ。

だって、それは自分じゃないから。
普通として生きていくための手段でしかないから。


言わなければ誰にも伝わない。
言わなければ、誰も気付かない。
きっと、外からは自分が普通に見えるんだ。


だから、みんな知らない。

ご飯の美味しさなんてわからないこと。美味しいかおいしくないかじゃなくて、食べられるか、食べられないかの2択なんだ。

親と会話なんて何年もしてないこと。
親は怖いし気持ち悪いし、関わりたくないんだ。仲良くなることを目的になんてしていないんだ。ただ、もう嫌な思いをしたくないだけ。
仲良くなるってことは、長年いじめてきた人に謝られて、仲良くしようって、そう言われることを、望むのと同じなんだ。そして、その相手が親だっただけ。

男女のどっちを選んでも心か書類には嘘をついてしまうこと。
生まれてきた性別は変えられない。そんなことはわかっていて、心がどんなに叫んでも、書類に嘘をつく方が、きっと、面倒だと、そう諦めるのが己の普通なんだ。


普通に生きているはずなのに、自分は自分なのに、悩まないといけないことが多すぎて、苦しむことに慣れすぎて、どこか心がすり減った。

「ただ、生まれてきただけなのに」

時々、どうしようもなく悲しくなるのは、きっと・・・
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