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第5章 女装男子と永遠に
7 忘れないside真琴
しおりを挟む自分の口から自然に出た言葉。
運命は変わり始めた。
「…記憶は…戻って、ない。……ごめん。」
驚いた様に僕を見た秋桐くんにそう告げる。
「……そ、か……。いや、真琴が謝る事なんて無いよ。大丈夫。僕は、どんな真琴でも好きなんだから。」
「秋桐くん……。」
その時、携帯が鳴った。
「……。」
「出ないの?」
秋桐くんが、携帯を見続けている僕に聞く。
「……出たく、無いんだ。」
携帯の表示には[美緒]と書かれていた。
「……でも、出ないと、駄目だよね?……ごめんね。」
秋桐くんに謝って、電話に出る。
『マコト。気が変わったわ。特別に、今日は迎えに行ってあげる。』
「え…。美緒ちゃん、何言って!」
『だって、その方が楽しそうだわ。』
電話の向こうで美緒ちゃんが笑い声を上げた。
『それで、マコトは今…どこにいるのかしら?』
「……っ、れは…」
ヒソッ「真琴?大丈夫?」
秋桐くんが僕の手を優しく包んだ。
僕は、頷いてから深呼吸をした。
包まれた手の中から、力が湧いてくるみたいだった。
『…マコト、聞こえないの?どこにいるのって、聞いてるの。』
「言わない。」
『はぁ?今、なんて言ったの?』
「言わないし、教えない。美緒ちゃんとは、僕はもう会わない。」
『あんた、何言ってんの?』
「言葉の通りだよ。僕は、もう…君には縛られない。」
そう言ってから、美緒ちゃんの言葉を待たずに電話を切った。
ドタッ
「真琴?!だ、大丈夫!?」
電話が終わって気が抜けたのか、僕は地面にへたり込んでいた。
「うん…大丈夫。秋桐くん、ありがとう。」
「え?」
「僕と一緒に居てくれて、僕を諦めないでくれて…ありがとう。」
きっと、美緒ちゃんはまた僕の所に来るだろう。それでも、きっと僕は前に進む。今の僕は、1人じゃないから。
兄さんが帰ってきて、カフェを2人で出た。
僕の記憶を秋桐くんに教えてもらうために、僕の住まいへ行くためだ。
駄弁りながら2人で歩道橋を渡る。
「それで、真琴ったら女装して大学内に入ってきたんだよ?」
「えぇ、僕がそんな事を?」
「うん、僕も驚いてね…でも、嬉しかったんだ。真琴が、僕のためにしてくれた事だから。」
階段を降りようとして、背後に違和感を感じた。
「?」
「真琴?どうしたの?」
振り返ると、笑顔の彼女がいた。
「え、真琴の知り合い?」
「あはは…マ・コ・ト、ドン♪」
「、っ!?」
「ぇ…真琴…!」
秋桐くんが手を伸ばす。
だけど、秋桐くんはどんどん遠くなった。
(なんて、顔してるんだよ。)
ドン
鈍い音がした。それが、自分が原因の音だとわかるのはすぐだった。
(あぁ、また秋桐に心配かけちゃうなぁ…あぁ…でも、今度はもう…忘れないからね…)
僕の意識はそこで途絶えた。
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