岬さんには敵わない

ほのぼのうさぎ

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1.僕たちの始まり

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桜が舞う季節になりました。あなたは今どうしてるのでしょうか。私はあなたを今では忘れたい。なのに忘れられない存在になってしまいもういっそのこと、


「恨んでます。とても。」


ハラリとおちる髪。

「私ってなにしてもだいたいのことはできるよなぁ。案外うまいじゃん。」

尽きることのない涙があとからあとから溢れてきて。彼が綺麗だと触った痕跡を落とせばどうにかなると思って、思い出と一緒にゴミ箱に捨てたよ。


      すっきりしたなぁ。




           *

「くぅちゃん。さっぱりしたね。」

桜歌おうかみたいでしょ。」

短く切った髪は弟と同じくらい。

「可愛いよくぅちゃん。」

「それ桜歌が言っちゃう?」

桜歌はぷうっと頬を膨らませた。

「かわいいって嬉しくないんだけど、」

紅葉(くれは)は心なく笑った。

「私もやだよ」

 ちょっと遠かった女子中高生学校を中学でやめて、そこそこの共学高校に進学した。桜歌と一緒になるために、

「ほら早く歩いて、学校始まる」

「わわ、待ってよくぅちゃん」

桜並木を見ながら、紅葉は新しい先を見据えた―――







「がーん」

それ口に出していうものなのか?
 掲示板に貼られたクラス表。同じ特別進学クラスにしたのに。

「私は1-7」

「僕は1-6」

見事にバラバラだ。

「どうしようもないね」

紅葉の一言に涙ぐむ。同じ顔でされると見てる方は正直辛い。

「放課後会いに行くからさ」

「でもぉ~」

なんで双子でこんなに正反対なんだか。

「桜歌大丈夫だよ。友だちできるって」

「うん。」

コクリと頷く。かわいいな。―――。

可愛くない自分がちょっとだけ嫌になる。



クラスについて、僕は自分の席にパーっと座ってしまった。周りが知らない人ばかりで怖い。なんでぇぇえ。
 特進は1クラスしかないと思ってた。今年は人多く募集してたなんて、うわー。せっかく勉強頑張ったのに!紅葉は頭いいし、周りに合わせられるし、僕みたいにコミュ障じゃないしぃ。
 でも、



 紅葉笑わなくなった―――。




どうして、
僕のせいなの。 僕のせい?
 ダメだ。考え出すと止まらない。中学生の頃かな。紅葉って名前で呼ばれるのを周りから拒んだ紅葉。親しくない人に呼ばれるのがイヤっていって。自分だけ呼んでるのはまた恥ずかしいし、周りだけ、愛称で呼んでるのが羨ましくて、
 くぅちゃんは逆に遠くに行ってしまう呼び方だったかもしれない。ても、その時はそれが最善にみえたんだ。


「なぁ、」

ぐるぐる考え事してていきなり呼ばれて桜歌は驚いた。口をへの字に結んでしまうぐらいに。

「ここ男子列の席なんだけど、女子あっちで―」

「やっ、あの」

まってまって、話進めないで!ちょっと待ってよ!

「ぼっ、僕ぅ男の子」

「え…」

相手の男子生徒は硬直した。まじまじと僕をみて。

「ごめん、女顔だから間違ったわー」

……軽っ。「ごめん」が随分と軽いな。男子生徒は僕の前の席に座った。

「俺、広瀬  翔馬ひろせ  しょうま。よろしく」

「僕は岬  桜歌みさき おうか。よろしく。」

「ところでさぁ。なんでピンなんてつけてんの?だから間違えられるんだよ」

「これは……大切な人がくれて」

桜歌の反応に翔馬は黙った。
(大切な人がいるのか。)俺が入るすきなんてないのかな。

「それに姉と似てるから間違われやすいんだよ。目印」

「あ、そう」

学校でつける言い訳にはならないと思うが。

それから、HRで自己紹介があり必要なプリント類を配られ忙しく、あっという間に終わった。


「岬。一緒帰らん?」

「えっと、広瀬くん。岬って呼ばれるの女の子っぽくて僕イヤでその……桜歌って呼んでほしいんだけど」

言ったあとから恥ずかしくなってきた。
(友だちでもないのにいきなり名前呼びはいけなかったかな。)

「いいの。じゃあ俺のことも翔馬って呼んでよ」

「あ、わかった。翔馬くん?」

「ンンンンンん」

「?ん?」

(やばいヤバイめっっっちゃかわいい。最後に?をつけるとか可愛すぎ!きわどい!ってか桜歌の方が岬より女の子っぽいけどなっ)

「ナンデモナイヨー」

「そうだ、僕放課後1-7行かなきゃいけなくて」

「ついてこうか?」

「いいの?」

ありがとうと笑う桜歌の顔は本当に女の子みたいだ。

2人で隣の教室に向かう。入学した当日に隣のクラスにいくなんて。
 まぁ、桜歌人見知りっぽいし。ってか人見知りだし。

「桜歌。」

「くぅちゃん!」

教室に行く前に廊下でばったり出会った。
 桜歌はいままでで一番の笑顔でに抱きついた。

「元気に自己紹介できた?」

「うぅ。」

こりゃダメだったか?
 紅葉は翔馬をチラと見た。

「友だちはできたんだ」

「友だち…友だちでいいのかなぁ」

いや。本人の前でそんな事言うなよ。

「えっと、俺広瀬  翔馬。」

「弟がお世話になりました。ぜひ今後とも仲良く、」

「もうやめてよー。」

「じゃあ友だちって言えるぐらいになろうな」

翔馬の一言に桜歌はうっとうめいて

「だって僕みたいなの迷惑じゃない?」

«迷惑な訳なかろうが!!!»


「私は紅葉。名前で呼んだら〇すから。」

(いきなり物騒だな!)

「なんて呼べば…」

「くぅちゃんはくぅちゃんか、あと苗字だよね?」

「そうだね。そうそう」

なんか

「双子なのに全然似てねぇ」

紅葉と桜歌は顔を見合わせた。

『よく言われるー。』

こういう時だけ息ぴったりだよ。

「くぅちゃんは友だちできた?」

「ああ、うん。できたできた。明日会わせてあげるよ」

「ぇぇえ。会わなくていいんだけど」

「じゃあなんで聞いたんだよ」

紅葉は翔馬に声をかけた。

「広瀬はヒマ?どっか3人で寄り道する?」

「え、俺いていいの?」

「桜歌の友だちならまぁ」

翔馬は桜歌を見た。来てほしそうにコチラを見てくる。

「じゃあ、遠慮なく」

「やったー。広瀬のおごりだ」

「えぇ!?」

「冗談よ」

まって、冗談いう時ぐらいせめて表情変えて。
 コロコロと表情の変わる桜歌と違って、紅葉はあんまり変わらないみたい。ずっと仏頂面っつーか、真顔っつーかな顔。美人だから別に文句のつけ所がないが。

「どこいく?」

嬉しそうに桜歌は紅葉の肩を組んだ。女子同士かよ。

結果的には、紅葉達はファーストフード店でだべって楽しくハンバーガーを食べた。

「桜歌、広瀬イイヤツだったね。」

帰り道つぶやくように紅葉は言った。

「だね。いい人と友だちなれた。僕もう死んでいいかも、」

「死んだら意味ないじゃん」

桜歌は紅葉の手をギュッと握った。

「そうならないようにくぅちゃんが僕をこの世につなぎとめておいてね。」

紅葉は桜歌の手を握り返した。

「うん。」

大丈夫だよ。大丈夫。


―――私が桜歌を守るから―――


私にはもうそれしか残されてないから、
桜歌を守ることで私が意味が生まれる。私の方だよ。あなたに生かされているのは、



私はあなたに逃げているのよ―――










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