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11話 嫉妬(5)

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 抵抗できないまま、私はバスルームでアンリに優しく体を洗われた。
 湯気の立つバスルームで私はぼんやりとアンリの均整のとれた体を見つめる。行為の時は見えなかったけれど、アンリには右足の太ももに変わった形のホクロを持っていた。
(色も青黒いというか……変わってるな)
「何を見てるの」
 アンリは視線を私に合わせると、さっきまでの冷ややかさは消えて、親しみやすい表情で微笑んだ。
「アンリってカメレオンだね」
 優しくなってみたり、冷たくなってみたり。掴めない。
 最初から戸惑わされることが多かったけど、やっぱり改めて理解できない人だ……。
「人って多面体で、普段見えてるペルソナはほんのひとつだって聞いたよ」
 特に不思議でもない様子でそんなことを言う。
「ペルソナ……人格は確かに多面体だよ。でも、これほど外に出す人格がコロコロ変わるアンリと向き合うのは、正直疲れる」
(可愛いヤキモチっていうレベルじゃないもの……)
 この不安定な王子様を、どうにか穏やかな世界に落ち着かせてあげられないだろうかと思う。
 そんなことを思う自分だって決して安定しているわけじゃないのだけど。
「ジュリ……」
 アンリは私をそっと抱き寄せると、甘い声で囁いた。
「どこにも行かないで……ここで一緒に生きていて。僕のために」
「アンリ……」
 お湯で温もったアンリの肌が心地よく、声は優しく心に沁みた。
 この安らぎは、やはり自分がアンリを好きだという証拠なのかもしれない。横暴で自分勝手な人だけれど、どうしても嫌いにはなれない。
「私が一緒にいれば、アンリは幸せになれるの?」
「幸せ?そういうものが僕に与えられることはあるのかな……でも、ジュリといれば少しはいいことがあるかもって、それくらいは思うよ」
 アンリは私の頬を持ち上げると、優しくとろけるようなキスをした。今までで一番愛を感じる、甘いキス。
 微かに開いた唇の隙間から舌が差し入れられ、私のそれとうねるように絡まった。くちゅくちゅと音を立てながら、キスは呼吸が乱れるほど激しくなる。
「ん……はぁ」
(あ……さっきと違う。あそこが求め始めてる)
 体温が上がり、鼓動が早まり、じゅくんっとあそこが蜜であふれるのを感じた。恥ずかしくなり、私はとっさにアンリの胸を押した。
「アンリ、これ以上は……」
「どうして……ジュリはここで止められるの?」
 意地悪に聞いてくるアンリの顔は、少しいたずらっ子のようだ。私の敏感になった胸をさすり、嬉しそうに微笑む。
「ここだってすごい感じてるし、中もきっととろけてる。今ならきっと最高に気持ちよくなれると思うよ」
「でも」
「嫌なら僕のここを噛んだらでしまえばいい。もう二度とできなくなる」
 そう言って、アンリは自分の硬くなったそこを私の手に握らせた。
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