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鮮やかと見間違える程に美しく、
鮮やかと見間違える程に美しく、#02
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「新しい使用人だと? 生憎と間に合っている。お引き取り願おうか」
「無理だって言ってんだろ。俺は、アンタよりえらーい人から、今日からここで働けって言われて来てんの。アンタが、奥に閉じ込めてる〝周防真澄〟の近侍として」
創は目の前の男に、不機嫌さを露にする。数日前、ここら辺一帯を管理している一色家から手紙が届いたのだ。内容は『友好的な関係を築くための、地方政策』という事らしく、一色家が治めている地域の大きな商家に一色家の人員を配置するというのだ。全く迷惑極まりない。断りの書面を送ったが、行き違ったのか、こうして自分の元にも配属されてきた。
「人聞きの悪い事を言うな。アレは、外に出るべき人間じゃないんだ」
「だから、別にただ世話するだけだっつってんだろ。あー……でも、一色様から一個だけ言伝。『周防真澄に、客を取らせるのは直ちに禁ずる』ってさ」
「……大体なんだ、その話し方は。まあいい。どうせ、アレは誰の手にも負えん。一色家との関係を悪くする事は、僕としても避けたいところだ。好きにすればいい」
毎夜、真澄の相手をさせる男達への対応も飽きてきたところだ。それに、一色家の人間が真澄に陶酔したとなれば、あの一色家を取り込む事だって出来るかもしれない。
その日の夜。一色家の命により、目的の屋敷に潜入した〝湯川伊吹〟は『お前の部屋だ』とあてがわれた、周防真澄が隔離されている部屋の、すぐ隣にある部屋へと荷物を運び入れていた。その際に渡された、一本の鍵。創としては、伊吹に鍵を渡したくはなかったのだろう。隔離部屋の空き部屋ではなく、近くの部屋を用意させると言った創に対して、伊吹が断固として譲らなかったのだ。半刻程言い合いをした結果、折れたのは創だった。
・ 真澄の外出は、許可無しには禁ず
・ 真澄に関わる一切の口外を禁ず
・ 真澄に起きた全ての事柄は、貴公の責任とし、如何なる責任も負うものとする
言い合いの末、創が伊吹に提示した条件である。
「アレに手でも出してみろ。即刻、吊るし上げてやるからな」
「ふんっ、俺はアンタみてーに無理矢理やったりしねーから、心配すんなよ」
大方、創の目的は伊吹を自滅させ、一色家より優位に立つ事だろう。
ならば、この条件を呑んでやる義理はないが表面上は渋々了承する意思を見せておく。尚も何か言いたげな創に背を向けて、伊吹は真澄の部屋へと向かう。
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