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五話

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 弟は仲間達の褒め言葉に満更でも無さそうだ。俺は兄として誇らしかった。そして俺は去ったのである...。

「兄さん。何逃げようとしてるの?」
「ちっバレたか」

 いい感じで逃げようとしたのに腕を掴まれ阻止されてしまった。椅子ではなく弟の膝に座らされる。こんな歳にもなってさすがに。

「兄さんはこれからずっと僕と暮らすんだよ。なんで逃げるの?」
「子供達に教えなければいけないことがまだ沢山ある」
「ここで教えればいいじゃん」
「訳ありの子達だからあそこ一帯からは出れないんだ」

 そう。俺たちと理由は違えど状況は同じ。俺らは母親から見つからないためだった。でももう亡くなったから出てもいい。だけど今の子供達はまだ暴力を振るう母親や父親から逃げてる子、種族の問題で出れない子もいた。あそこ一帯はその子達の保護、治安改善をしてくれている組織が支配している。あそこのスラムに入るのも難しいし入ったとしても殺される可能性がある。あそこの組織は内部のものには優しく外部のものにはとことん厳しい。子供達も街に買い物に行ったヤツらが見つけてきて俺に預けた。俺は体力とかはないけど独学で学んだ知識がある。子供達には毎日、半グレにたまに教えている。

「出れない子ですの?」
「貴族様には分からないかもしれないが親に見つかると酷いことをされてしまう子供達がいるんだ。だから保護して俺が教育係をしている」
「僕も兄さんに勉強とかは教えてもらった」
「だからテストが毎回一位なのか」

 一位とは初耳だ。そんな難しいことまで教えてないから弟の努力の結果なのだろう。

「そうですよ。王族である私を差し置いて一位ばっかり取られては困ります」

 イケメンが眉を曲げながら言った。イケメンは王族だったのか。

「自己紹介がまだでしたね。私はこの国の第二王子セン・フリアシテルと申します。お兄さんよろしくお願いします」
「よろしく...お願いします」

 王族にさすがにタメ口は失礼だから一応敬語を使うがあまり使わないから違和感がすごいある。

 センと握手をする。俺の予想とは違い手の甲は固かった。剣をよく握る手をしている。それも実力者だろう。子供達に剣を教えてもらいたい。

「私もしますわ。レアネット公爵家のレーナ・レアネットですの。ルイのお兄様であれば大歓迎ですわ」

 公爵...。王族に続いて公爵。この集まりがなんなのか気になるところだ。それに恋人ではなく恋人枠と言っていたことも気になる。

 レーナは優雅に立ちあがってお辞儀をして座った。さすが公爵家なだけはあると思う。優雅さ素人目からしてもすごく良いものだと分かる。あの怪力の持ち主とは思えない。

「俺はレオ!俺は元平民で今は男爵位を貰っているぞ」

 それは興味深い。平民から貴族となったとあれば大大大出世だ。ぜひ子供達に聞かせてあげたい。

「レオは武の部分で秀でていて爵位を貰ったんだよ。それで僕達、若英雄にゃくえいゆうの中にも加えられたんだよ」

 何かに秀でているとやはり爵位を貰ったりするんだな。最近、武を立てるとこがあったとすればあの戦争か。そういえば若英雄にゃくえいゆうって言ってたな。!?

 ハッと弟を見る。

「ルイ、お前英雄になったのか」
「そうだよ。兄さん。手紙で報告しようとしたけどあそこら辺は何も通してくれないから伝えられなかったんだ」
「そうだったのか」

 悲しく呟く。子供達や訳あり保護のため手紙も外部からのものは厳しく制限されている。親なんてもってのほか。だが最近は事前に申請したものだけ厳しい審査の上、本人に届けられる。弟はその前に出ていったから申請なんてできなかったんだ。

「弟からの手紙は通してくれと頼んでおく。だが人にも見られることを重々承知しておけ」

 恋人という突拍子もない発言によって弟に抱いていたあの時の純粋で可愛いイメージは崩壊した。
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