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4話 父上の愛
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「私の娘がどうした?」
後ろを振り返る。この声は父上だ。あぁついにこの時が来てしまった。体を縮めて丸くなる。
「その前に国王陛下、ウィリアム王子、ネオ男爵令嬢は中へ。ロアナはその顔ではパーティーには参加できない。家に帰りなさい」
「はい。父上」
これで終わりなのだ。父上は一瞬ため息をついた。私に絶望し後日勘当されるだろう。父上には落ちぶれた姿など見せまいと最後まで我慢してお辞儀を一つすると顔を前髪だけじゃなく手でも隠しながら出入口から出ていく。
「帰ってちょうだい」
自分の馬車に乗り込むと前に御者がいるにも関わらず席に突っ伏して泣いた。
なぜ私がこんな目に合わなければいけないの。なぜ私は父上を満足にしてあげられないの。
そんな自分を責める言葉ばかりが出てきた。
私は生きている意味などないのだわ。
「お嬢様、着きました」
「...えぇ」
馬車を降りる。降りる時にいつもお礼を言うはずの私もその時ばかりは忘れていた。それくらい父上に勘当される事実が私の中で大きかった。
「ただいま戻りました」
「ロアナお嬢様、どうされたのですか?お早いお帰りですね」
使用人の1人に話しかけられる。下を向いて俯いていると何かを察したのかすぐに自分の部屋へ連れられてパーティー用のドレスから寝巻きに着替えさせられる。
「お嬢様、こちらで目元を温め下さい。腫れてしまいます」
「...何から何までありがとう。世話になったわね」
せめて今までのお礼を言っておこうと使用人が扉から出ていく直前に慌てて言う。父上や母上もこんな慌ててお礼を言うしか出来ない私の引っ込み思案な性格が愛してくれない理由なのかしら。
もう近いうちには勘当されるのだ。父上からそんなことを告げられるなんて考えるだけで辛い。それなら命をもうたってしまうのも手かもしれないわね。
「確か...ここに、あったはず」
本棚の奥に手を伸ばして探す。幼い頃に拾った本だ。父上や母上が来た時もし知らない本が本棚にあって拾ったと知られれば貴族として恥ずかしいと捨てられるかもしれないと思い隠してあったものだ。これは何故か捨てられなかった。可愛い表紙に目を惹かれたのもある。だがそれ以外にこんな分厚い本なのにたった一ページしか書かれていないのだ。魔法だと説明に書いてあるが何の魔法かは書かれておらず注意書きに《この魔法を使ったものは命を落とす可能性が限りなく高い。切羽詰まった場合に使うべし》と書いてある。よく分からないが多分成功はしないだろう。だから呪文を唱える。
「エル...リオル...ロシアンシア...ディ...セプション」
噛まずに言えた。その瞬間、体が光を放ち体の奥から何か熱く痛いものがくるような感覚に陥った。尋常ではないほどの痛みにおそわれ自分の部屋の床に倒れ込む。それと同時に本が落ちて砂のように散っていったのも見えた。
それを最後に暗闇に意識は落ちていった。
後ろを振り返る。この声は父上だ。あぁついにこの時が来てしまった。体を縮めて丸くなる。
「その前に国王陛下、ウィリアム王子、ネオ男爵令嬢は中へ。ロアナはその顔ではパーティーには参加できない。家に帰りなさい」
「はい。父上」
これで終わりなのだ。父上は一瞬ため息をついた。私に絶望し後日勘当されるだろう。父上には落ちぶれた姿など見せまいと最後まで我慢してお辞儀を一つすると顔を前髪だけじゃなく手でも隠しながら出入口から出ていく。
「帰ってちょうだい」
自分の馬車に乗り込むと前に御者がいるにも関わらず席に突っ伏して泣いた。
なぜ私がこんな目に合わなければいけないの。なぜ私は父上を満足にしてあげられないの。
そんな自分を責める言葉ばかりが出てきた。
私は生きている意味などないのだわ。
「お嬢様、着きました」
「...えぇ」
馬車を降りる。降りる時にいつもお礼を言うはずの私もその時ばかりは忘れていた。それくらい父上に勘当される事実が私の中で大きかった。
「ただいま戻りました」
「ロアナお嬢様、どうされたのですか?お早いお帰りですね」
使用人の1人に話しかけられる。下を向いて俯いていると何かを察したのかすぐに自分の部屋へ連れられてパーティー用のドレスから寝巻きに着替えさせられる。
「お嬢様、こちらで目元を温め下さい。腫れてしまいます」
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せめて今までのお礼を言っておこうと使用人が扉から出ていく直前に慌てて言う。父上や母上もこんな慌ててお礼を言うしか出来ない私の引っ込み思案な性格が愛してくれない理由なのかしら。
もう近いうちには勘当されるのだ。父上からそんなことを告げられるなんて考えるだけで辛い。それなら命をもうたってしまうのも手かもしれないわね。
「確か...ここに、あったはず」
本棚の奥に手を伸ばして探す。幼い頃に拾った本だ。父上や母上が来た時もし知らない本が本棚にあって拾ったと知られれば貴族として恥ずかしいと捨てられるかもしれないと思い隠してあったものだ。これは何故か捨てられなかった。可愛い表紙に目を惹かれたのもある。だがそれ以外にこんな分厚い本なのにたった一ページしか書かれていないのだ。魔法だと説明に書いてあるが何の魔法かは書かれておらず注意書きに《この魔法を使ったものは命を落とす可能性が限りなく高い。切羽詰まった場合に使うべし》と書いてある。よく分からないが多分成功はしないだろう。だから呪文を唱える。
「エル...リオル...ロシアンシア...ディ...セプション」
噛まずに言えた。その瞬間、体が光を放ち体の奥から何か熱く痛いものがくるような感覚に陥った。尋常ではないほどの痛みにおそわれ自分の部屋の床に倒れ込む。それと同時に本が落ちて砂のように散っていったのも見えた。
それを最後に暗闇に意識は落ちていった。
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