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第三章:プリンセス、迷宮に囚わる
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チュンチュン……チュチュ……チュン……。
「……ん……」
眩しい……。あれ? 朝?
「………………」
昨日は遅くまでアンと話をしていて……最後の方はベッドの上で横になっていたのだけれど……。
どうやらそのまま寝てしまったみたいね。
すぐ隣に可愛い羽根が見えた。
アンと朝チュンね……。
別にやらしい事は何もしてないけれど。
着替えていつものように彼のところへ行かないと……。今日の衣装は何かしらね。
寝室を出ると応接室のような部屋がある。毎朝そこにその日の衣装が用意されている。
……のだけれど、今日は違った。
「おはようございますキラリ様」
寝室を出ると部屋からの出入り口である扉の前にレイチェルさんが立っていた。
「……おはようございます……?」
初日以来かしら? 仕事(?)を教えられた時以来の事に少し戸惑っている。どうしてレイチェルさんがいるのだろうか?
「本日の衣装はお一人では難しいかと思いますので」
「なるほど、それで……」
きっと顔に出ていたんだろう私の疑問に即座に答えてくれた。さすが有能な秘書さんね。疑問を口にする前に答えが返ってくるなんて……少し怖い。
「ご準備が出来ましたらお声をお掛けください。それまでこちらで控えておりますので」
「あ、はい。少し待っていてください」
急ぎ寝室とは反対方向に続く扉へと向かう。こちらはお風呂や洗面など水回りの関連する部屋になっている。
どの部屋も広くて綺麗でその上しっかり手入れが行き届いている。今更だけど凄くいい待遇よね私って。塔の拷問部屋から連れて来られたとは思えない程の高待遇……。つまりは最初から私に何かしら思うところがあったという事かしら?
私が自分の事を話したのは……記憶にあるのはこの城に来てから。そうね、この部屋の寝室だったわ。
彼の逞しいアレをアレして欲しくて白状させられたのよね……。酷い話だわ。いくらスキルの影響で快楽に弱いとはいえ……あんまりよね。
朝から少し落ち込んでしまった。そんな気持ちとは裏腹に私の体は……。
「……あまり思い出すと良くないわね……」
少し熱くなった頰を冷たい水で洗って冷ます。
優秀な秘書さんをあまり待たせるわけにはいかないもの、急いで支度をしなくちゃね。
そうして今私は鏡の前で半裸の状態にある。
腰から胸へと豪華な刺繍の施されたコルセットを巻かれ背中の紐を締められている。
久しぶりの息苦しさに情けない声が出そうになる。
同時進行でアンがお化粧をしてくれているので苦しくても顔には出せない。
「久しぶりに本格的にお化粧が出来て嬉しいです。姫様、とってもお綺麗ですよ!」
アンの興奮した声でメイクが完了した事を悟る。小さな体だけどアンはとても器用にお化粧など私の身の回りの世話をしてくれる。お世話妖精というのは決して名前だけではないのだと改めて感心する。
アンに促されて鏡を見る。そこには見慣れた自分の顔だけど、いつもの五割増しくらい可愛くて美人で色気のある美少女がいた。
正直この体になって初めてここまで本格的に化粧をした。キラリとしてのまだ幼い体の頃の記憶と違って正直言って化けたな……という感想が思い浮かぶ。ホントに誰この人というくらい綺麗だ。普段の私も相当の美少女なのだけれど、化粧というのは素材の良さを何倍にも引き上げてしまう。これはちょっと俺くんの記憶が恐怖を覚える程だわ。女って怖い。
コルセットを締め終わると今度はドレスを着せられる。薄いピンク色のドレスはプリンセスラインで裾が長くふわりと広がっていてとても綺麗だ。胸元から裾に向かって淡いピンク色から薄い赤に至るグラデーションがかけられていて揺れると不思議な光沢が煌めく。
ドレスに合わせて華やかな花の髪飾りと煌びやかな宝石を散りばめた首飾り……あ、黒革のチョカーが外されてしまうとなんとも言えない喪失感のようなものがこみ上げて来た。彼のものじゃなくなってしまうようなそんな錯覚に陥ってしまう。
同じ色の肘まであるロンググローブまでつけられて、これで真っ白ならまるでウエディングドレスね。
「お綺麗ですよ姫様!」
何度も繰り返し聞いたアンの言葉に姿見へと視線を向ける。
そこに映るのは花のような美少女。元がいいキラリ姫を更に引き立てるように化粧やドレスや装飾品で飾り立てたのだからそれもそのはず。
大きく開いた胸元からは魅惑的な柔らかい膨らみと自分でも見返してしまうような見事な谷間。首筋や鎖骨ですら白い肌がほんのりと紅く染まっていて見る者の目を奪うに違いない。
私自身ですら目を奪われてしまっているのだから……。
「ーー様? ……姫様?」
「え、あ、はい。ありがとうアン。少し自分でもびっくりしてしまったわ。この姿になって初めてだったから……」
ホントにびっくりだわ。可愛いのはわかっていたけれど今日のこれは少し違う。可愛いすぎる! 綺麗すぎる!
昨日必死で考えた作戦なんて全て無駄になってしまう。いくら策を弄したところでこれだけの美少女、いえこれこそ傾国の美女という呼び名が相応しい美女を手放すバカはいない。そんな奴は頭がおかしい。何故わざわざ手放すのか? 全く理解ができない。故にこの姿を冥王に見せたくはない。ないけれど、彼に会うため以外に着飾るわけがなく、これから私は彼と対面するはずだ。
まさかまだ始まってもいないうちから負けを覚悟しなければならないだなんて……。
まったく、自分自身の美貌という想定外がこれから始める冥王との交渉という難問に更なる暗雲をもたらしてしまうだなんて思いもしなかった。
「……ん……」
眩しい……。あれ? 朝?
「………………」
昨日は遅くまでアンと話をしていて……最後の方はベッドの上で横になっていたのだけれど……。
どうやらそのまま寝てしまったみたいね。
すぐ隣に可愛い羽根が見えた。
アンと朝チュンね……。
別にやらしい事は何もしてないけれど。
着替えていつものように彼のところへ行かないと……。今日の衣装は何かしらね。
寝室を出ると応接室のような部屋がある。毎朝そこにその日の衣装が用意されている。
……のだけれど、今日は違った。
「おはようございますキラリ様」
寝室を出ると部屋からの出入り口である扉の前にレイチェルさんが立っていた。
「……おはようございます……?」
初日以来かしら? 仕事(?)を教えられた時以来の事に少し戸惑っている。どうしてレイチェルさんがいるのだろうか?
「本日の衣装はお一人では難しいかと思いますので」
「なるほど、それで……」
きっと顔に出ていたんだろう私の疑問に即座に答えてくれた。さすが有能な秘書さんね。疑問を口にする前に答えが返ってくるなんて……少し怖い。
「ご準備が出来ましたらお声をお掛けください。それまでこちらで控えておりますので」
「あ、はい。少し待っていてください」
急ぎ寝室とは反対方向に続く扉へと向かう。こちらはお風呂や洗面など水回りの関連する部屋になっている。
どの部屋も広くて綺麗でその上しっかり手入れが行き届いている。今更だけど凄くいい待遇よね私って。塔の拷問部屋から連れて来られたとは思えない程の高待遇……。つまりは最初から私に何かしら思うところがあったという事かしら?
私が自分の事を話したのは……記憶にあるのはこの城に来てから。そうね、この部屋の寝室だったわ。
彼の逞しいアレをアレして欲しくて白状させられたのよね……。酷い話だわ。いくらスキルの影響で快楽に弱いとはいえ……あんまりよね。
朝から少し落ち込んでしまった。そんな気持ちとは裏腹に私の体は……。
「……あまり思い出すと良くないわね……」
少し熱くなった頰を冷たい水で洗って冷ます。
優秀な秘書さんをあまり待たせるわけにはいかないもの、急いで支度をしなくちゃね。
そうして今私は鏡の前で半裸の状態にある。
腰から胸へと豪華な刺繍の施されたコルセットを巻かれ背中の紐を締められている。
久しぶりの息苦しさに情けない声が出そうになる。
同時進行でアンがお化粧をしてくれているので苦しくても顔には出せない。
「久しぶりに本格的にお化粧が出来て嬉しいです。姫様、とってもお綺麗ですよ!」
アンの興奮した声でメイクが完了した事を悟る。小さな体だけどアンはとても器用にお化粧など私の身の回りの世話をしてくれる。お世話妖精というのは決して名前だけではないのだと改めて感心する。
アンに促されて鏡を見る。そこには見慣れた自分の顔だけど、いつもの五割増しくらい可愛くて美人で色気のある美少女がいた。
正直この体になって初めてここまで本格的に化粧をした。キラリとしてのまだ幼い体の頃の記憶と違って正直言って化けたな……という感想が思い浮かぶ。ホントに誰この人というくらい綺麗だ。普段の私も相当の美少女なのだけれど、化粧というのは素材の良さを何倍にも引き上げてしまう。これはちょっと俺くんの記憶が恐怖を覚える程だわ。女って怖い。
コルセットを締め終わると今度はドレスを着せられる。薄いピンク色のドレスはプリンセスラインで裾が長くふわりと広がっていてとても綺麗だ。胸元から裾に向かって淡いピンク色から薄い赤に至るグラデーションがかけられていて揺れると不思議な光沢が煌めく。
ドレスに合わせて華やかな花の髪飾りと煌びやかな宝石を散りばめた首飾り……あ、黒革のチョカーが外されてしまうとなんとも言えない喪失感のようなものがこみ上げて来た。彼のものじゃなくなってしまうようなそんな錯覚に陥ってしまう。
同じ色の肘まであるロンググローブまでつけられて、これで真っ白ならまるでウエディングドレスね。
「お綺麗ですよ姫様!」
何度も繰り返し聞いたアンの言葉に姿見へと視線を向ける。
そこに映るのは花のような美少女。元がいいキラリ姫を更に引き立てるように化粧やドレスや装飾品で飾り立てたのだからそれもそのはず。
大きく開いた胸元からは魅惑的な柔らかい膨らみと自分でも見返してしまうような見事な谷間。首筋や鎖骨ですら白い肌がほんのりと紅く染まっていて見る者の目を奪うに違いない。
私自身ですら目を奪われてしまっているのだから……。
「ーー様? ……姫様?」
「え、あ、はい。ありがとうアン。少し自分でもびっくりしてしまったわ。この姿になって初めてだったから……」
ホントにびっくりだわ。可愛いのはわかっていたけれど今日のこれは少し違う。可愛いすぎる! 綺麗すぎる!
昨日必死で考えた作戦なんて全て無駄になってしまう。いくら策を弄したところでこれだけの美少女、いえこれこそ傾国の美女という呼び名が相応しい美女を手放すバカはいない。そんな奴は頭がおかしい。何故わざわざ手放すのか? 全く理解ができない。故にこの姿を冥王に見せたくはない。ないけれど、彼に会うため以外に着飾るわけがなく、これから私は彼と対面するはずだ。
まさかまだ始まってもいないうちから負けを覚悟しなければならないだなんて……。
まったく、自分自身の美貌という想定外がこれから始める冥王との交渉という難問に更なる暗雲をもたらしてしまうだなんて思いもしなかった。
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