魔法の国のプリンセス

中山さつき

文字の大きさ
上 下
17 / 278
第一章:プリンセス、冒険者になる

(17)

しおりを挟む
 ガルム様が女性用の下着をたくさん抱えて帰ってきたのはそれから程なくしてのこと。
 いくらイケメン王子様風とはいえ色とりどりのランジェリーを抱える殿方というのは……見ているこちらの方が恥ずかしかった。
 当人はなんとも思っていない様だったけれど何というか嬉し恥ずかしな感じ(?)だね。うん、さすがエ□狼だわ。

 そうした沢山の下着の中から自分に合うサイズのものを選んでもらった。
 いやぁおぱんつはともかくブラはよくわからない。おおよその身につけ方はわかるよ? ただ適正サイズがよくわからない。最初適当に身につけたらアンにダメ出しされた。
 そりゃそうだ。俺にもキラリにも縁がないものだから仕方がない。それでもある程度想像がつくのはこの世界の衣類が現代地球と同様のものが出回っている為である。
 それはもちろん下着も同様で素材、機能性、肌触り、デザインに至るまで十分に女の子を満足させてくれるものばかり。
 ファンタジー世界なのに何故衣類や下着が現代風なのか? それは勿論、可愛い下着を身につけた女の子にあんな事やこんな事をしたい制作者の趣味だから。
 理由なんて今更でしょ? リアルに中世風の野暮ったい下着じゃ萌えないもの。基本的な衣類もそういう理由から現代風のものが沢山ある。ただし、ファンタジーテイストを忘れてしまうとなんだかよくわからない世界観になってしまうので、あからさまに違和感のある衣類は存在しない。
 例えば……何があるだろうか? ……ちょっと思い浮かばない。
 まぁ別にその辺はどうでもいいわね。
 それとガルム様あれで意外と気がきくようでアン用のサイズのものも用意してくれた。ただし、何故お人形サイズとも言えるアンに合うものがあるのかという疑問には女物の服が色々ある点も含めて目をつむっておくことにした。
 詮索しない方がいい事も世の中にはあるわよね。私ってば大人だわ。

 お洋服は私とお揃いのデザインのものを。羽根があるから背中が開いていてちょっとセクシー。アン用の下着も適当にいくつかいただいた。
 その他何種類もの衣服や靴などの小物も沢山用意してくれたので好きに持っていけという言葉に甘えさせてもらった。
 洋服や小物なんかにウキウキするのは私も女の子らしくなってきたという事なのだろうか? 俺の記憶と経験にはない感なくだけど、意外と悪くないかもしれない。着飾るのがキラリ姫のような美少女だからかもしれないけれど……。
 思わず鏡に映る自分の姿に見惚れてしまったのは内緒です。
 可愛い服を着ると気持ちがウキウキするのはアンも同じようで凄く嬉しそうにしている。
 私もお揃いのワンピースが嬉しい。

 衣類の他にも護身用の短剣や丈夫な背負い袋、タオルや水筒などなど……あれもこれもと次々に用意してくれたんだけど……。こんなに持ちきれないわよね、困ったわ。
 どうお詫びしようかと悩んでいた時にふと思い至った。あれ? もしかして???

「ねぇアン、ストレージの魔法使える?」
「もちろんです。頂いたものは全てそちらに収納いたしましょうね」

 ダメ元で聞いてみたのだったがアンはとっくにそのつもりだったようです。
 ゲームと同様にアイテムボックスが利用出来るのはとても便利な事だ。これは旅をする上でとても重宝するし有利にもなる。
 ありがとう神様!! 他のことは色々と文句を言いたかったけれどこれに関しては超絶感謝いたします!! 本当にありがとうございます!!
 おかげで必要なものを全て持って行くことができる。今後の旅をスムーズに進められるようあれもこれもと言ってみればガルム様ったら全部用意してくれちゃいました。
 ガルム様……素敵です。でもちょっとチョロすぎませんか?(笑)
 それとも私のことをそんなにも気に入ってくださったのかしら?
 物に釣られてとか相応訳じゃないけれど、純粋に好かれるのは嬉しいと思う。ガルム様ってば見た目もそうだけど、意外と抜けている所とかもあって……こういうのを女性は可愛いって表現するのかな? なんて思ってしまった。
 そしてどうやらキラリ姫の心の琴線にもろに触れたらしい。キラリとしての感情が私にガルム様の事を愛おしく思わせるようだ。私自身も彼の事を嫌いだとは思っていないのだけれど……。うん。誰かに好かれるっていいわよね。そして誰かを好きになるのもいいわよね。

 一通り旅の支度を整え終わるといよいよお別れの時が迫ってきた。短い間だったけれどとても楽しかった……? いや待て。私ってばエ□いことされてただけのような気がする。
 なんか色々な事に惑わされていい思い出みたくなってたけど、よくよく考えるととんでもないわね。
 ちょっと気持ちを引き締めないといけないわ。やられたい放題だった事をいい思い出にしたらダメだわ。気をつけよう。
 それでも感謝しなくちゃいけない事は沢山ある。それはそれ、これはこれよね。

「ガルム様、色々とお世話になりました。ちょっとエ○チな事を沢山されましたけれどお礼を言わなくてはいけない事も沢山あります。だからありがとうございました」
「気にせずとも良い。我が眷属を救ってくれた礼だからな。それに我も久方ぶりに楽しかった。また訪ねて来るが良い。お前たちならいつでも歓迎しよう。夜明け前に森の端まで送ろう。それまでに一休みしておけ。湯の用意もしておいた。好きに使うといい」

 おおっ! お風呂は嬉しい。あとでアンと一緒に入ろう。

「何から何まで本当にありがとうございます。ガルム様のおかげで故郷への旅路に随分と光明が見えてきました」

 多分だけど、盗賊のアジトから直接街へ出ていた場合、うまく冒険者として登録できたかどうか怪しい。
 だってまるで逃亡奴隷の様なみすぼらしい小娘が一人で冒険者にだなんて、絶対に警戒されていたと思う。でも今なら身なりもしっかりしているし、最低限の道具と武器もある。これなら問題なく登録できると思う。

「それでも魔族の国へは相当困難な旅になるぞ」
「そうですね、覚悟は!? わかって……。気が付いていたのですか? 私が魔族だと」

 私たち魔族は特別魔狼王と敵対しているわけではないけれど、かといって仲良しでもない。そもそもこんなところに魔族がいる理由がないのに気がつかれるとは思わなかった。

「我も随分と見くびられたものだな。そんな事は見ればわかる」
「さすがですね……。ですが何か後ろめたい事があったわけではないのです」
「どちらでも良い。その方は我が眷属を救い、我が元へと届けたのだ。その恩に報いてやっただけだ。何が目的でも構わぬよ」
「ガルム様……」

 偶々助け出す事になっただけ。届けたと言ってもアジトまで迎えにきていたくせに……。
 この世界の頂点の一つの割に随分と優しいのですね。
 いやだ、なんだか胸が熱くなってきちゃったわ!? 凄くドキドキしてる。ホント、キラリちゃんったらガルム様の事が好きなのね。私まで影響されてしまいそうだわ。
 火照る頬を手で扇いで冷まそうとするけれど……もうっ! そんなに見つめないでくださいよ! ドキドキが治らないじゃないですか!!


ーーーーー
2021.02.07改稿
いつも通り誤字脱字と少し加筆致しました。
自分の未熟さを痛感してしまいます。
今ならもう少しだけ上手に表現できそうな気がしますが、別物にする訳にはいきませんので程々に。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

初めてなら、本気で喘がせてあげる

ヘロディア
恋愛
美しい彼女の初めてを奪うことになった主人公。 初めての体験に喘いでいく彼女をみて興奮が抑えられず…

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

【R18】転生先のハレンチな世界で閨授業を受けて性感帯を増やしていかなければいけなくなった件

yori
恋愛
【番外編も随時公開していきます】 性感帯の開発箇所が多ければ多いほど、結婚に有利になるハレンチな世界へ転生してしまった侯爵家令嬢メリア。 メイドや執事、高級娼館の講師から閨授業を受けることになって……。 ◇予告無しにえちえちしますのでご注意ください ◇恋愛に発展するまで時間がかかります ◇初めはGL表現がありますが、基本はNL、一応女性向け ◇不特定多数の人と関係を持つことになります ◇キーワードに苦手なものがあればご注意ください ガールズラブ 残酷な描写あり 異世界転生 女主人公 西洋 逆ハーレム ギャグ スパンキング 拘束 調教 処女 無理やり 不特定多数 玩具 快楽堕ち 言葉責め ソフトSM ふたなり ◇ムーンライトノベルズへ先行公開しています

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

処理中です...