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第4話 S・M倶楽部
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陸人はオーガストの手書きの地図を頼りにひたすら歩き続けた。
街の中心部を出て雑草の生い茂る野原を半時間ほど歩き続けると、隙間なく入り組んだ茨の壁が見えてきた。
茨の壁には一ヵ所だけ大きな穴が開いており、その穴の縁を囲うように石のアーチ門が設けられている。
アーチ門の奥には不気味で鬱蒼とした森が広がっており、門には大きく“メラースの森”と刻まれていた。
陸人はいったん地図に目を落とし、それからさっと後ろを振り返った。
オーガストが教えてくれた通り、向かい側にはゴルフ場のような大きなコースが見える。
「“S・M倶楽部”…。すごい名前のゴルフ場だな」
ゴルフ場の看板から視線をそむけ、あらためて石のアーチ門を見上げてみる。
この門の奥にどんな世界が広がっているのか、森の中に一体どんなお宝が眠っているのか―――そんな期待に胸を躍らせながら、陸人は少しの躊躇もなく森へと足を踏み入れた。
恐怖や不安など一抹も持ち合わせておらず、ちょっと近くの公園へ行くような、軽い気持ちだったのだ。
陸人は曲がりくねった獣道に沿ってひたすら突き進んだ。
辺りもだいぶ薄暗くなってきたが、彼は比較的視力が良かったため、方向がわからなくなったり、小石や枝に足を取られることもなかった。
奥へ進めば進むほど、鳥や虫の鳴き声が大きくなってくる。
しかしこの重低音の不気味な声は、祖父の家の近くで聞こえる鳥や虫の鳴き声とは少し違うような気がした。
と、ふいに背後から、ザザザッと何かが近付いてくる音が聞こえた。
立ち止まって背後を確認してみたが、特に何も見当たらない。
きっと狐かたぬきでも通ったのだろうと、再び歩き始める。
が、三歩も歩かないうちに、陸人はまた立ち止まった。
彼自身にもよくわからないが、背中に名状しがたい嫌な気配を感じたのだ。
取り合えず大木の陰に隠れ、ひたすら息をひそめる。
すると次の瞬間、野犬の群れが茂みを軽々と飛び越えて陸人の目の前に姿を現した。
いや、野犬というより、魔犬と呼ぶ方が適切だろうか。
全体の輪郭は確かに犬だが、その全身は鎧のように硬質な鱗で覆われており、目は火のように爛々と光り、巨大な牙を剥きながら、絶え間なく唸り声を上げている。
「嘘だろ?モンスターいるとか聞いてないよ!しかも最初のダンジョンからいきなり魔犬の大群なんて鬼畜過ぎるだろ!なんでスライムとかじゃないんだよっ!」
陸人は迷わず“逃げる”という選択肢を選び、魔犬達に背を向けて韋駄天走りで駆けだした。
街の中心部を出て雑草の生い茂る野原を半時間ほど歩き続けると、隙間なく入り組んだ茨の壁が見えてきた。
茨の壁には一ヵ所だけ大きな穴が開いており、その穴の縁を囲うように石のアーチ門が設けられている。
アーチ門の奥には不気味で鬱蒼とした森が広がっており、門には大きく“メラースの森”と刻まれていた。
陸人はいったん地図に目を落とし、それからさっと後ろを振り返った。
オーガストが教えてくれた通り、向かい側にはゴルフ場のような大きなコースが見える。
「“S・M倶楽部”…。すごい名前のゴルフ場だな」
ゴルフ場の看板から視線をそむけ、あらためて石のアーチ門を見上げてみる。
この門の奥にどんな世界が広がっているのか、森の中に一体どんなお宝が眠っているのか―――そんな期待に胸を躍らせながら、陸人は少しの躊躇もなく森へと足を踏み入れた。
恐怖や不安など一抹も持ち合わせておらず、ちょっと近くの公園へ行くような、軽い気持ちだったのだ。
陸人は曲がりくねった獣道に沿ってひたすら突き進んだ。
辺りもだいぶ薄暗くなってきたが、彼は比較的視力が良かったため、方向がわからなくなったり、小石や枝に足を取られることもなかった。
奥へ進めば進むほど、鳥や虫の鳴き声が大きくなってくる。
しかしこの重低音の不気味な声は、祖父の家の近くで聞こえる鳥や虫の鳴き声とは少し違うような気がした。
と、ふいに背後から、ザザザッと何かが近付いてくる音が聞こえた。
立ち止まって背後を確認してみたが、特に何も見当たらない。
きっと狐かたぬきでも通ったのだろうと、再び歩き始める。
が、三歩も歩かないうちに、陸人はまた立ち止まった。
彼自身にもよくわからないが、背中に名状しがたい嫌な気配を感じたのだ。
取り合えず大木の陰に隠れ、ひたすら息をひそめる。
すると次の瞬間、野犬の群れが茂みを軽々と飛び越えて陸人の目の前に姿を現した。
いや、野犬というより、魔犬と呼ぶ方が適切だろうか。
全体の輪郭は確かに犬だが、その全身は鎧のように硬質な鱗で覆われており、目は火のように爛々と光り、巨大な牙を剥きながら、絶え間なく唸り声を上げている。
「嘘だろ?モンスターいるとか聞いてないよ!しかも最初のダンジョンからいきなり魔犬の大群なんて鬼畜過ぎるだろ!なんでスライムとかじゃないんだよっ!」
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