上 下
7 / 27
第1章

すべてグランディの仕業に違いない クロード視点

しおりを挟む
【クロード視点】

「いったい何があったんだ……?」

 わたしはグランディの肩を借りて、寮の部屋へ戻った。
 クッキーを食べた途端、強烈な眠気が襲ってきた。
 まだ頭がガンガンする……

 (まさかアリシアがクッキーに仕込んだのか……?)

 あのクッキーはアリシアが作ったと言っていた。
 ただアリシアが何か仕込んだとしても、いったい何のために?
 ――違う。
 わたしの愛するアリシアがクッキーに睡眠薬を仕込む……なんてあり得ない。

「グランディの仕業だ……っ!」

 絶対にそうだ。
 きっとグランディが隙を見て、催眠魔法をかけたに違いない。
 わたしからアリシアを奪うために……

 (なんて酷いヤツなんだ!)

「必ずグランディから、アリシアを取り戻す……っ!」

 あんな準男爵ごときに、王族であるわたしが負けるはずない。
 絶対に潰してやる――
 と、思っていた時。
 わたしは部屋のカレンダーを見た。

「そろそろ魔法祭の日か……」

 今は7月1日。
 2週間後、7月15日に行われる魔法祭。
 学院生がチームを組んで、魔法の腕を競い合う。

 (よし……魔法祭が使えるな)

 魔法祭で、グランディに「格の違い」を見せつけてやる。

「ふっふっふ……待っていろよ。グランディ」
 
 ★

【シド視点】

「今日は魔法祭のチーム分けを行いたいと思います。【統率者】になりたい学院生は挙手してください。あるいは、統率者にふさわしい学院生を推薦してください」

 ここは教室――

 魔法祭のチーム分けをするらしい。
 魔法祭は学院の重要行事のひとつだ。
 チームに分かれて魔法で決闘を行う。
 原作では、アリシアは攻略対象とチームを組んで優勝を目指すことになる。
 優勝したチームには、五大魔法祭の出場資格が得られる。
 五大魔法学院が集まって戦うのだ。
 その五大魔法祭で優勝すれば、【賢者の石】が手に入る。
 賢者の石は味方全員の魔力を増幅させる。
 ラスボスを倒すためには、必須のアイテムだ。

 (どっか適当なチームに入るかな……)

「誰か……統率者になりたい学院生は?」

 統率者はチームの学院生を指揮する役割だ。
 あと、チームに魔力を供給する役割もある。
 だから魔力の多いヤツが適任だ。

 (原作だと、クロード王子がアリシアを統率者に推薦するだよな……)

 すっと手を挙げたのは――アリシアだった。

 (な……っ! ここはクロード王子が手を挙げるはずじゃ……?)

 まさか、自ら立候補する気か?

「……あたしは、シド・フォン・グランディ準男爵令息を推薦しますっ!」

 (えっ? お、俺……!?)

 ざわ……っ!
 クラスメイト全員が、かなり驚く。

【準男爵令息なんかを推薦……?】
【マジで意味わからん】
【あんなヤツ、クラスにいたんだ……】

「……わ、わかりました。グランディさんを統率者としましょう。他に統率者になりたい方は……?」

 教師も戸惑っているようだ。

 すっ――
 ひとりから、手が上がった。

「クロード殿下……?!」
「わたしが統率者に立候補する。何か問題でもあるか?」
「そんな滅相もごさいません……っ!」
「ならばよし」
「……他に立候補したい人は?」

 しーん……
 誰も手を挙げようとしない。
 それも当然だ。
 なぜなら誰も、クロード王子と争いたくないからだ。
 王族と戦うなんて、貴族として絶対にあり得ない。

「……他に立候補はないようですね。このクラスからは、殿下とグランディさんが立候補となりました」
「そのようだな。では、【統率者の決闘】を行う」

 クロード王子が宣言する。
 各クラスの代表は1チームだけ。
 統率者の決闘は、クラス代表をひとつに絞る戦いだ。

「我がチームに参加する者は、挙手せよ!」

 クロード王子がそう言うと、クラスメイトたちが一斉に手を挙げた。
 俺と、ただ1人を除いて――

「アリシア……なぜ手を挙げない?」
「殿下。あたしは殿下のチームには入りません。シドさんのチームに入ります」

 (な、なんだって……?! 俺はモブだぞ……)


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

二度目の異世界に来たのは最強の騎士〜吸血鬼の俺はこの世界で眷族(ハーレム)を増やす〜

北条氏成
ファンタジー
一度目の世界を救って、二度目の異世界にやってきた主人公は全能力を引き継いで吸血鬼へと転生した。 この物語は魔王によって人間との混血のハーフと呼ばれる者達が能力を失った世界で、最強種の吸血鬼が眷族を増やす少しエッチな小説です。 ※物語上、日常で消費する魔力の補給が必要になる為、『魔力の補給(少しエッチな)』話を挟みます。嫌な方は飛ばしても問題はないかと思いますので更新をお待ち下さい。※    カクヨムで3日で修正という無理難題を突き付けられたので、今後は切り替えてこちらで投稿していきます!カクヨムで読んで頂いてくれていた読者の方々には大変申し訳ありません!! *毎日投稿実施中!投稿時間は夜11時~12時頃です。* ※本作は眷族の儀式と魔力の補給というストーリー上で不可欠な要素が発生します。性描写が苦手な方は注意(魔力の補給が含まれます)を読まないで下さい。また、ギリギリを攻めている為、BAN対策で必然的に同じ描写が多くなります。描写が単調だよ? 足りないよ?という場合は想像力で補って下さい。できる限り毎日更新する為、話数を切って千文字程度で更新します。※ 表紙はAIで作成しました。ヒロインのリアラのイメージです。ちょっと過激な感じなので、運営から言われたら消します!

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。

大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。 ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。 主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。 マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。 しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。 主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。 これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

誰でも職業をもらえる世界で無職と言われた俺は「職業合成師」の力に覚醒する ~剣聖奴隷や王女メイドの最強ハーレムパーティーを作る~

今川幸乃
ファンタジー
ラザフォード王国に暮らす者は十五歳の誕生日になると皆神殿で「職業」をもらうことが出来る。 が、アレンはなぜか職業をもらうことが出来ず、神官には「神を冒涜したからだ」と言われ、「聖剣士」の職業をもらった幼馴染のリオナにも見捨てられてしまう。 しかしアレンは自分の力が職業の受け渡しや合成、強化を行うことが出来る唯一無二のものであることに気づいていく。そして集めた職業によって自身も強化されていくことに気づく。 アレンは奴隷として売られていたリンや元王女のティアにオリジナル職業を覚えさせ、最強ハーレムパーティーを作るのだった。 ※「カクヨム」で先行連載中。約8万字書き溜めあり。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

転生したらやられ役の悪役貴族だったので、死なないように頑張っていたらなぜかモテました

平山和人
ファンタジー
事故で死んだはずの俺は、生前やりこんでいたゲーム『エリシオンサーガ』の世界に転生していた。 しかし、転生先は不細工、クズ、無能、と負の三拍子が揃った悪役貴族、ゲルドフ・インペラートルであり、このままでは破滅は避けられない。 だが、前世の記憶とゲームの知識を活かせば、俺は『エリシオンサーガ』の世界で成り上がることができる! そう考えた俺は早速行動を開始する。 まずは強くなるために魔物を倒しまくってレベルを上げまくる。そうしていたら痩せたイケメンになり、なぜか美少女からモテまくることに。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

処理中です...