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第1章

アリシアはわたしのものなのに……!

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【クロード王子視点】

「アリシアはどこにいる……?」

 わたしはクロード・フォン・ルクスランド。
 ルクスランド王国の第1王子だ。
 昨日、わたしの婚約者であるファルネーゼが、アリシアをいじめたらしい……
 わたしは心配になって、アリシアを探している。
 さっきアリシアの寮の部屋を訪ねたが、いなかった。
 だから急いで教室へ行ったが――アリシアはいない。

「ソナタたち……アリシアはどこにいるか知っているか?」

 教室にいた学院生の女子に聞く。

「で、殿下……っ! お……おはようございますっ! アリシアさんは、シドさんを連れて教室を出ましたが?」
「シド……! シド・フォン・グランディと一緒に?」
「そうですが……」
「く……っ! 早く見つけないと……」

 わたしは教室を飛び出した。

 ……アリシアとは、4月のダンジョン攻略の授業で一緒だった。
 アリシアは平民だと蔑まれているが、膨大な魔力を持っている。
 わたしたちのクラスは、教師の指示を無視して、ダンジョンの深層の潜ってしまった。
 そこでA級の魔物、ミノタウロスと遭遇した。
 ここでわたしたちは死ぬ――
 まさに絶体絶命の状況だった。
 しかし……
 皆からバカにされていたアリシアが、聖属性魔法を使った。
 強力なミノタウロスが、一瞬で光の中に消えた……
 バカにされていたアリシアが、クラスメイトたちを救ったのだ。

 (なんて優しい女の子なんだ……)

 それからわたしは、アリシアに惹かれた。
 アリシアと話すと、心が軽くなった。
 アリシアの笑顔を見ると、王子としての重責を忘れられた。

「シド・フォン・グランディ。いったい何者なんだ……?」

 昨日、ファルネーゼにブチキレたことは知っている。 
 メイドからアリシアがファルネーゼにいじめられていると聞いて、わたしはダンスホールへ飛んで行った。

 (いくら我が婚約者でも、アリシアをいじめることは許せない……)

 わたしが、アリシアを助けようと思っていた。
 だが――グランディが先に、アリシアを助けた。
 今まで、同じクラスにいることさえ知らなかった。
 しかも爵位は準男爵だ。
 王族のわたしが、気に留めるような存在ではない。
 普通の王族なら、侯爵以下の貴族とまともに話をしない。

「わたしのアリシアをどうするつもりだ……?」

 ★

【シド視点】

「クロード王子……」

 屋上にクロードがやって来た。
 学院の屋上は、クロード王子がアリシアを呼び出して、城下町のデートに誘う場所。
 原作のシナリオでは、重要なイベントシーンがあるところだ。

 (実物はすげえイケメンだな……)

 男の俺でも、惚れ惚れするほどの美形男子。
 さらさらした金髪に、ブルーの大きな瞳。
 すらっと高い、細見の身体。
 爽やかを絵に描いたような存在だ……

 (で、アリシアを溺愛するんだよな)

「アリシア、大丈夫か……?」

 クロードは俺を遮るように、アリシアの前に立った。

「殿下……あたしなら大丈夫です」
「そうか。よかった」
「はい。シドさんに助けてもらいましたから」

 アリシアが俺の名前(シド)を出すと、クロードの表情が険しくなる。

「そうだな。グランディ、ソナタはよくやった。もうよいぞ。後はわたしが、アリシアを守るから――」

 クロードはアリシアの腰に手を回して、アリシアをぐっと引き寄せる。

「殿下、ありがとうございます……」

 アリシアはお礼を言いつつも、クロードの手からすり抜ける。
 それから俺の手を握って、

「シドさん、放課後、あたしの部屋で待ってますから――」
「ま、待って……放課後、アリシアの部屋で、グランディと……?!」

 クロードが驚く。

「シドさんに助けてもらいましたから、お礼にあたしの部屋に招こうと思いまして……」
「いや、しかし……グランディと2人きりで?」
「何か悪いですか? シドさんは紳士ですから大丈夫です」

 アリシアはまた、俺の手を握る。

(おいおい。攻略対象の前でこんなことしたら……)

「わ、悪くはないが……」
「では、問題ないですね。シドさん、すっごおおおく楽しみにしてます! じゃあね!」
「あ、アリシア……っ!」

 クロードの声を無視して、アリシアは走るように去って行った……

「グランディ、貴様……」

 クロードは俺を睨みつけて、

「お、覚えてろよ……っ! 必ず貴様から、わたしのアリシアを取り戻してやる……っ!」

 と、捨てセリフを吐いて、アリシアの後を追って行った。

 (なんだか面倒なことになってきたな……)


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