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3章

授爵式で公爵に昇格してしまう

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「これより、授爵式を始めます……」
  
 壇上から、大神官が授爵式の開始を宣言する。

 バルト神殿跡ダンジョンから帰ってきた俺たちは、王都へ帰ってきた。
 その後、すぐに授爵式が行われることに
 オリヴィアが、事前にアルトリア国王に連絡していたらしい。
 セプテリオン学園の大講堂に、学園生が全員集められた。
 前世で言うなら大きな体育館みたいな場所。
 壇上には、大神官とアルトリア国王がいた。

「バルト神殿跡ダンジョンから、神剣デュランダルを持ち帰った功績を讃えて、アルフォンス・フォン・ヴァリエ侯爵令息に、新たな位階を授けます」

 この世界の貴族には、爵位に対応する位階がある。
 
 公爵:上1位、下1位
 侯爵:上2位、下2位
 伯爵:上3位、下3位
 子爵:上4位、下4位
 男爵:上5位、下5位
 準男爵:上6位、下6位
 騎士爵:上7位、下7位

 俺の位階は、侯爵の「下2位」だ。
 ここから昇格するとれば「上2位」になる。
 ちなみに、「下1位」に昇格することはあり得ない。
 もし「下1位」になれば、俺は侯爵から公爵に爵位が上がってしまう。
 公爵は王族の親類のみがなれる、特別な爵位だ。
 どんなすごい功績を上げても、それまで出世することは絶対になかった。

 (それにしても、かなり目立ってしまったな……)

 壇上の前で跪く俺を、全校の学園生が注目している。
 原作のシナリオなら、アルフォンスはとっくに学園を追放されて、爵位も剥奪されていた。
 そんなアルフォンスが逆に昇格してしまうのだから、また原作を破壊してしまったわけで……

 俺の後ろには、今回のダンジョン攻略を共にしたオリヴィア、ユリウス、ジークがいる。
 
 (なんかジークが震えてるな……?)

 手が震えてるし、顔色も悪い。
 体調でも悪いのか……?
 後で部屋に、薬草でも持って行こう。

「では、国王陛下、お願いします」

 大神官が、アルトリア国王に王剣ビスマルクを渡す。
 アルトリア王家に代々伝わるレガリアで、王位を継ぐ者が手にする剣だ。
 
 アルトリア国王は王剣ビスマルクを抜いて、俺の肩に当てる。

「汝、アルフォンス・フォン・ヴァリエに——【下1位】の位階を授ける」
「えっ……?」

 (今、下1位って言わなかったか……?)

 俺の聞き違いだろうか?

「ヴァリエ侯爵令息。ご出世、おめでとうございます。これが授爵状です」

 大神官が、俺に授爵状を手渡した。
 授爵状は、爵位を授与されたことを証明する文書。

 (上2位って書いてあるよな……)

 チラッと、俺は授爵状を見ると——

【アルフォンス・ファン・ヴァリエを、下1位の公爵とする】

「う、ウソだろ……」

 動揺していた俺に、アルトリア国王が、

「そなたは、神剣デュランダルを引き抜いた勇者だ。特例として位階を2つ上げることにしたのだ。今後もそなたに期待しておるぞ……っ!」

 アルトリア国王は、ニッコリ笑って俺の肩に手を置いた。

「あと……我が娘、オリヴィアのことも頼んだぞ」
「いや、それは……」

 俺の耳元で、アルトリア国王が囁く。

「さあ、皆の者! アルフォンス殿の功績を讃えて拍手しようっ!」

 ——パチパチパチパチっ!

 学園生たちが、拍手してくれる。

「公爵に昇格ってマジかよ」
「王族の仲間入りじゃん」
「アル様すごいですわー!」

 いろいろ噂する声も聞こえてくるが、

「さすがアルフォンスっ! やっぱりあたしが見込んだ男性です……っ!」

 オリヴィアが俺の元へ、駆け寄ってくる。

「ありがとう。次はオリヴィアたちの番だね」

 オリビィア、ユリウス、ジークも一緒にダンジョンを攻略したんだ。
 だから俺が終われば、次はオリヴィアの番で——

「……え? 授爵式はこれで終了ですよ」

 オリヴィアはキョトンとした顔をした。

「いや、オリヴィアたちも頑張ったんだし……」
「あたしとユリウスお兄さまは、王族ですから、もらえる爵位がありません」
「じゃあ、ジークは……?」

 原作のシナリオでは、ジークは「騎士爵」を授かる。
 平民が爵位を賜ることは前列がなく、学園の貴族たちを驚かせるのだが——

「……あの、俺には何もないんですか?」

 ジークが壇上の前に出てきた。

「えっ? だってジークさんは何もしなかったじゃないですか? 何もしてない人に爵位はありませんよ」  

 オリヴィアが真顔で言う。

「でも、ジークも一緒にダンジョンに来てくれて——」

 ジークも危険なダンジョンに来たんだ。
 だから何か褒美はあるべきだろう。
 それに、原作では騎士爵になってるわけだし……

「……ふむ。アルフォンス殿。そなたは優しいな。だが、我が国は実力主義である。功績なき者に、爵位を与えることはできん」
「そうですよ。実際、ジークさんは【ただ着いてきただけ】なんですから。爵位をもらうのはおかしいです」
「我が娘の言う通りだ。よし。これにて、授爵式は終了である!」

 アルトリア国王が閉会を宣言すると、

「え、ちょ、ま、待ってくれええええええっ!」

 ジークが叫んだ。


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