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2章

俺のヒロインたちが全部アイツのものに ジーク視点

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【ジーク視点】

「すげえ……黒狼カルテルを一人で捕まえるなんて」
「アル様カッコいい……」
「学園で1番強いんじゃねえか?」

 Aクラスの教室では、学園生たちが騒いでいた。

 昨日、アルフォンスがアンジェリカ魔宝石店を襲った強盗を捕まえたらしい。
 それが学園新聞の一面に、デカデカと載っている。

「クソ……っ! なんでモブが、主人公のイベントを奪ってるんだよ!」

 黒狼カルテルの襲撃は、リーセリア√専用のイベントだ。
 当然、主人公ジーク、レギーネ、リーセリアの3人でデート中に、発生するイベント。
 2人のヒロイン(レギーネ、リーセリア)が、ジークを取り合うハーレム展開だ。

 (俺はハーレム大好きなのに……っ!)

 オリビィア王女殿下との一対一ラブコメもいいが、

 レギーネとリーセリアのヒロインレースを見るのが好きだった……

 レギーネは、ツンデレ幼馴染。

 リーセリアは、お姉ちゃん系のヤンデレ。

 どっちもジークがめっちゃくちゃ好きで、えっちなことをたくさんしてくれる。

「しかも、この指輪は……っ!」

 俺は学園新聞の写真に目を凝らす。

 アルフォンスの左手の薬指に、リヴァイアサンの指輪がある。
 リヴァイアサンの指輪は、ジーク専用装備。
 装備するだけで攻撃力を2倍にする、最強のステータスバフアイテムだ。
 
「なんでアイツが持ってるんだ……?」

 リヴァイアサンの指輪は、リーセリアがジークと「婚約予約」するためにプレゼントする。
 つまり、ジークへの愛の証。

「ヒロインも装備も、アルフォンスに取られた……」

 ふざけるな。

 ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな。

 こんなの、絶対に、絶対に、おかしい。

 この世界の主人公は、俺だ。

 世界の中心であり、神のはず。

「やっと主人公になれると思ったのに……っ!」

 俺はこのゲームを愛していた。

 誰よりもやり込んだと自負している。

 ドラマCDも買ったし、ヒロインのフィギュアも抱き枕も持っている。

 ヒロインの声優さんにも、毎日毎日、Uwitterで応援のリプを送り続けた。

 コミケで同人誌も売ったし、qixivで二次創作を上げまくっていた。

 えっちシーンは何度も再生して、何度も「俺自身」をティッシュにぶちまけてきた。

 声優のサイン会でも、「えっちシーン最高でした!」と握手しながら叫んだ。愛ゆえに。

「俺は……このゲームを愛してる」

 なのに、

 なのに、

 なのに、

「俺の全てを、あのモブが奪っていく」

 俺は学園新聞を握りしめる。

 アルフォンスはもう、とっくに退場しているはず。

 リーセリア√に入る前にオリビィアを襲って、ジークにボコられることになっていた。

「完全におかしい。アルフォンスには、絶対に何かある……」

 アルフォンスは巧妙に、破滅を避けながら俺の地位を奪ってくる。

「絶対、殺さないと……っ!」

 殺すしかない。

 殺す、殺す、殺す。

 俺の頭にはもう、「殺」しかない。

「冒険者ギルド派遣イベント……そこで殺るか」





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