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2章

アル様と既成事実を作らないと リーセリア視点

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【リーセリア視点】

 ——アルフォンスとのデートの後、学園の寮。

「レギーネはアル様を絶対好きよね……」

 アル様を「クズフォンス」と言っているけど、それは気持ちを誤魔化しているだけ。

「自分の気持ちに、きっと気づいてないのね」

 レギーネらしいと言えば、レギーネらしい。

 あたしとレギーネは、令嬢学校でずっと一緒だった。

 令嬢学校は、貴族の令嬢としての教養や礼儀作法を学ぶ学校。
 魔法学園に入る前に、令嬢たちが学ぶ場所。
 授業はすこぶる退屈だったけど、レギーネと一緒なら楽しかった。

「いつまでも親友でいようって、約束したのに」

 あの頃からレギーネは、幼馴染のアル様を悪く言っていた。

【アルフォンスはキモい】
【アルフォンスは無能】
【アルフォンスは臭い】

 「キモブタ」「キモブタ」とよく言っていた。

 親友のレギーネがそこまで悪く言うのだから、すごく酷い人だと思っていた。

 だけど、実際にアル様に会ってみたら——

「すっごくカッコいい人だった……」

 ガベイジ伯爵との決闘の時。

 アル様はみんなに笑われながらも、1年生で1番強いガベイジ伯爵を倒した。

 魔力が多くても謙虚だし、魔法だけでなく剣の才能もある。

 亜人の女の子を助けたことも聞いた。

「あんな貴族は見たことない……」

 魔力の多い貴族は、ほとんど傲慢になる。

 ユリウス王子殿下みたいに。

 王族と言えば……

「アル様はオリビィア王女殿下のお茶会に誘われていたっけ……」

 幼馴染のレギーネもライバルだけど、オリビィア王女殿下はもっと強いライバルだ。

「オリビィア王女殿下も、アル様を好きよね……」

 オリビィア王女殿下の目を見ればわかる。

 あの目は、恋する乙女の瞳。

 何より、アル様とは「呼び捨て」で呼び合う仲だ。

「はあ……アル様の周りは可愛い女の子だらけ」

 オリビィア王女殿下はもちろんすごく可愛い。

 令嬢の中でもファンがたくさんいるくらいだ。

 レギーネは……まあ性格はともかく、見た目は可愛いと思う。

 (昔はあんな子じゃなかったのに……)

 アル様の悪口は昔から言っていたけど、あたしや他の子たちには優しかった。
 でも、今は人の悪口ばっかり言っている。  
 
 なんだかイライラしているというか……

「レギーネとオリビィア王女殿下よりも先に、アル様と【既成事実】を作らないと……」

 まず、アル様のいる男子寮に忍び込む。

 それから、アル様の部屋に入る。

 寝ているアル様のベッドの中に……

「メイドと騎士が部屋にいるから、催眠草を焚いて眠ってもらいましょう」

 街で買っておいた催眠草を使う。

 催眠草を燃やして出る煙を吸えば、朝まで起きない。

「朝まで何回できるかしら……?」

 既成事実を証明するためには、血のついたシーツが必要。

 ちゃんとアル様を楽しませるために、あたしも準備しておかないといけない。

 令嬢学校では、初夜の心得まで教えてくれなかった。
  
「まさかお母様に聞くわけにいかないし……」

 あたしはベンツ伯爵家の長女だから、上にお姉様もいない。

「誰に聞けばいいのかしら……?」

 もちろん、レギーネにも聞けない。

「もしかして……レギーネもオリビィア王女殿下も、同じこと考えているかも」

 レギーネもオリビィア王女殿下も、アル様を手に入れるためには、既成事実を作らないといけない。
 
 先に既成事実を作られたら、もうあたしはアル様と一緒になれない。

「あ、冒険者ギルド派遣があった……」

 オリビィア王女殿下は、冒険者ギルド派遣でアル様と一緒だ。

 そこなら、誰にも邪魔されずにアル様と「事」をなせる。

「どうしよう……アル様がオリビィア王女殿下に取られてしまう」
 
 アル様の「初めて」をいただくのはあたしなのに……っ!

「なんとしても、あたしも潜り込まないと!」

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