25 / 58
2章
やっぱりクズフォンスが水の魔術師なの? レギーネ視点
しおりを挟む
【レギーネ視点】
学園の鍛錬場。
決闘に勝ったクズフォンスを、あたしは呆然と見ていた。
「クズフォンスが勝っちゃった……」
信じられない。
あの「クソ雑魚のキモブタ」が、ガベイジ伯爵に勝つなんて……
あたしは夢でも見てるのかしら……?
嫌われ者のクズフォンスの周りに、人がたくさん集まっている。
オリヴィア王女殿下まで、クズフォンスに期待している。
(なんだか異世界に転生したみたいだわ……)
まるで別の世界線、まるで想像できなかった未来。
「……ねえ。レギーネ、大丈夫?」
友達のリーセリアが、あたしに話しかけてきた。
心配そうな表情で、あたしの顔を覗き込む。
「ありがとう。何でもないわ……」
「そう? 悩みがあれば相談してね。最近、様子が変だから……」
たしかにあたしは、最近おかしくなっている。
(もう気になって仕方ないわ……っ!)
クズフォンスが――水の魔術師なのかどうか。
いや、それはあり得ないはず。
あたしは、クズフォンスを子どもの頃から知っている。
クズフォンスは、怠惰で無能なくせに傲慢で、どうしようもない存在。
一緒にいるのが嫌で嫌で仕方なかった……
(なのに、今のクズフォンスはカッコい——)
ううん。そんなことない……っ!
痩せて(ほんのちょっと)カッコ良くなっても、水の魔術師様とは全然違う。
中身は昔のクズフォンスのままだから。
(どうせクズフォンスとは、婚約破棄するんだから……)
「レギーネ。あたし、アル様に賭けたんだ」
リーセリアが、あたしに耳打ちしてきた。
「えっ? じゃあ、アルフォンスに賭けた1人って……」
「うん。あたしなの」
「…………!」
あたしは驚いて、よろめいてしまう。
「どうしてアルフォンスに賭けたの?」
「それは……アル様が好きだから」
「えぇぇぇっ!」
声が裏返ってしまうあたし。
学園生の視線が、あたしとリーセリアに集まる。
「しーっ! 声が大きいよ!」
「アルフォンスが好きって……リーセリアの婚約者はどうなるの?」
「あたしの婚約者とは、婚約破棄するつもり」
あたしは言葉を失う。
リーセリアは、本気でアルフォンスのことが好きみたいだ。
自分の婚約者を捨ててまで、アルフォンスと結ばれようとするなんて……
「で、でも……アルフォンスにも婚約者がいるから……」
「アル様の婚約者よりあたしが愛されて、アル様にも婚約破棄してもらうから」
「……いや、いやいやいや、そんなのめちゃくちゃよ。お互いの家が認めるわけない」
「もしアル様が今の婚約者さんと婚約破棄しないなら、あたしは二番目でもいい。アル様のためなら、死んでもいいから」
アルフォンスの「今の婚約者」は、あたしだ。
つまり、リーセリアは、あたしから婚約者のアルフォンスを奪おうとしているわけで……
(リーセリア、目が真剣だ……)
「そんなにアルフォンスがいいの? あんなヤツのどこがいいの?」
「! アル様はすっごおぉくカッコいいよっ! 優しくて強くて、最高の男性だと思うっ!」
「そう……かな? たぶんリーセリアの勘違いだと思う。アルフォンスは、怠惰で傲慢で無能で変態のクズだよ。あたしは子どもの頃から知ってるから……」
「……レギーネ。アル様のこと嫌いなの?」
鬼の形相で、あたしを睨むリーセリア。
「き、嫌いじゃないわよ……っ! ただ、昔のアルフォンスはダメだったわけで……」
「じゃあ、今のアル様は【すごい】と思うのね?」
「くぅぅぅ~っ! す、すごい……かも。ほ、ほんの少しだけ、ね」
あのクズフォンスを「すごい」と認めるなんてムカつく。
(クズフォンスのくせに生意気よ……っ!)
「レギーネは、アル様と幼馴染でしょ。協力してほしいの。あたし、アル様を本気で好きだから」
リーセリアは、あたしの手をぎゅっと握った。
「……わかったわ。もちろん協力する」
「ありがとうっ!」
リーセリアがあたしに抱きつく。
(ま、いいか。あたしには水の魔術師様がいるし)
学園の鍛錬場。
決闘に勝ったクズフォンスを、あたしは呆然と見ていた。
「クズフォンスが勝っちゃった……」
信じられない。
あの「クソ雑魚のキモブタ」が、ガベイジ伯爵に勝つなんて……
あたしは夢でも見てるのかしら……?
嫌われ者のクズフォンスの周りに、人がたくさん集まっている。
オリヴィア王女殿下まで、クズフォンスに期待している。
(なんだか異世界に転生したみたいだわ……)
まるで別の世界線、まるで想像できなかった未来。
「……ねえ。レギーネ、大丈夫?」
友達のリーセリアが、あたしに話しかけてきた。
心配そうな表情で、あたしの顔を覗き込む。
「ありがとう。何でもないわ……」
「そう? 悩みがあれば相談してね。最近、様子が変だから……」
たしかにあたしは、最近おかしくなっている。
(もう気になって仕方ないわ……っ!)
クズフォンスが――水の魔術師なのかどうか。
いや、それはあり得ないはず。
あたしは、クズフォンスを子どもの頃から知っている。
クズフォンスは、怠惰で無能なくせに傲慢で、どうしようもない存在。
一緒にいるのが嫌で嫌で仕方なかった……
(なのに、今のクズフォンスはカッコい——)
ううん。そんなことない……っ!
痩せて(ほんのちょっと)カッコ良くなっても、水の魔術師様とは全然違う。
中身は昔のクズフォンスのままだから。
(どうせクズフォンスとは、婚約破棄するんだから……)
「レギーネ。あたし、アル様に賭けたんだ」
リーセリアが、あたしに耳打ちしてきた。
「えっ? じゃあ、アルフォンスに賭けた1人って……」
「うん。あたしなの」
「…………!」
あたしは驚いて、よろめいてしまう。
「どうしてアルフォンスに賭けたの?」
「それは……アル様が好きだから」
「えぇぇぇっ!」
声が裏返ってしまうあたし。
学園生の視線が、あたしとリーセリアに集まる。
「しーっ! 声が大きいよ!」
「アルフォンスが好きって……リーセリアの婚約者はどうなるの?」
「あたしの婚約者とは、婚約破棄するつもり」
あたしは言葉を失う。
リーセリアは、本気でアルフォンスのことが好きみたいだ。
自分の婚約者を捨ててまで、アルフォンスと結ばれようとするなんて……
「で、でも……アルフォンスにも婚約者がいるから……」
「アル様の婚約者よりあたしが愛されて、アル様にも婚約破棄してもらうから」
「……いや、いやいやいや、そんなのめちゃくちゃよ。お互いの家が認めるわけない」
「もしアル様が今の婚約者さんと婚約破棄しないなら、あたしは二番目でもいい。アル様のためなら、死んでもいいから」
アルフォンスの「今の婚約者」は、あたしだ。
つまり、リーセリアは、あたしから婚約者のアルフォンスを奪おうとしているわけで……
(リーセリア、目が真剣だ……)
「そんなにアルフォンスがいいの? あんなヤツのどこがいいの?」
「! アル様はすっごおぉくカッコいいよっ! 優しくて強くて、最高の男性だと思うっ!」
「そう……かな? たぶんリーセリアの勘違いだと思う。アルフォンスは、怠惰で傲慢で無能で変態のクズだよ。あたしは子どもの頃から知ってるから……」
「……レギーネ。アル様のこと嫌いなの?」
鬼の形相で、あたしを睨むリーセリア。
「き、嫌いじゃないわよ……っ! ただ、昔のアルフォンスはダメだったわけで……」
「じゃあ、今のアル様は【すごい】と思うのね?」
「くぅぅぅ~っ! す、すごい……かも。ほ、ほんの少しだけ、ね」
あのクズフォンスを「すごい」と認めるなんてムカつく。
(クズフォンスのくせに生意気よ……っ!)
「レギーネは、アル様と幼馴染でしょ。協力してほしいの。あたし、アル様を本気で好きだから」
リーセリアは、あたしの手をぎゅっと握った。
「……わかったわ。もちろん協力する」
「ありがとうっ!」
リーセリアがあたしに抱きつく。
(ま、いいか。あたしには水の魔術師様がいるし)
40
お気に入りに追加
2,796
あなたにおすすめの小説
無能な悪役王子に転生した俺、推しの為に暗躍していたら主人公がキレているようです。どうやら主人公も転生者らしい~
そらら
ファンタジー
【ファンタジー小説大賞の投票お待ちしております!】
大人気ゲーム「剣と魔法のファンタジー」の悪役王子に転生した俺。
王族という血統でありながら、何も努力しない怠惰な第一王子。
中盤で主人公に暗殺されるざまぁ対象。
俺はそんな破滅的な運命を変える為に、魔法を極めて強くなる。
そんで推しの為に暗躍してたら、主人公がキレて来たんだが?
「お前なんかにヒロインと王位は渡さないぞ!?」
「俺は別に王位はいらないぞ? 推しの為に暗躍中だ」
「ふざけんな! 原作をぶっ壊しやがって、殺してやる」
「申し訳ないが、もう俺は主人公より強いぞ?」
※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル総合週間ランキング50位入り。1300スター、3500フォロワーを達成!
神様に転生させてもらった元社畜はチート能力で異世界に革命をおこす。賢者の石の無限魔力と召喚術の組み合わせって最強では!?
不死じゃない不死鳥(ただのニワトリ)
ファンタジー
●あらすじ
ブラック企業に勤め過労死してしまった、斉藤タクマ。36歳。彼は神様によってチート能力をもらい異世界に転生をさせてもらう。
賢者の石による魔力無限と、万能な召喚獣を呼べる召喚術。この二つのチートを使いつつ、危機に瀕した猫人族達の村を発展させていく物語。だんだんと村は発展していき他の町とも交易をはじめゆくゆくは大きな大国に!?
フェンリルにスライム、猫耳少女、エルフにグータラ娘などいろいろ登場人物に振り回されながらも異世界を楽しんでいきたいと思います。
タイトル変えました。
旧題、賢者の石による無限魔力+最強召喚術による、異世界のんびりスローライフ。~猫人族の村はいずれ大国へと成り上がる~
※R15は保険です。異世界転生、内政モノです。
あまりシリアスにするつもりもありません。
またタンタンと進みますのでよろしくお願いします。
感想、お気に入りをいただけると執筆の励みになります。
よろしくお願いします。
想像以上に多くの方に読んでいただけており、戸惑っております。本当にありがとうございます。
※カクヨムさんでも連載はじめました。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
乙女ゲーのモブに転生した俺、なぜかヒロインの攻略対象になってしまう。えっ? 俺はモブだよ?
水間ノボル🐳
ファンタジー
↑ お気に入り登録をお願いします!
※ 5/15 男性向けホットランキング1位★
目覚めたら、妹に無理やりプレイさせられた乙女ゲーム、「ルーナ・クロニクル」のモブに転生した俺。
名前は、シド・フォン・グランディ。
準男爵の三男。典型的な底辺貴族だ。
「アリシア、平民のゴミはさっさと退学しなさい!」
「おいっ! 人をゴミ扱いするんじゃねぇ!」
ヒロインのアリシアを、悪役令嬢のファルネーゼがいじめていたシーンにちょうど転生する。
前日、会社の上司にパワハラされていた俺は、ついむしゃくしゃしてファルネーゼにブチキレてしまい……
「助けてくれてありがとうございます。その……明日の午後、空いてますか?」
「えっ? 俺に言ってる?」
イケメンの攻略対象を差し置いて、ヒロインが俺に迫ってきて……
「グランディ、決闘だ。俺たちが勝ったら、二度とアリシア近づくな……っ!」
「おいおい。なんでそうなるんだよ……」
攻略対象の王子殿下に、決闘を挑まれて。
「クソ……っ! 準男爵ごときに負けるわけにはいかない……」
「かなり手加減してるんだが……」
モブの俺が決闘に勝ってしまって——
※2024/3/20 カクヨム様にて、異世界ファンタジーランキング2位!週間総合ランキング4位!
王女に婚約破棄され実家の公爵家からは追放同然に辺境に追いやられたけれど、農業スキルで幸せに暮らしています。
克全
ファンタジー
ゆるふわの設定。戦術系スキルを得られなかったロディーは、王太女との婚約を破棄されただけでなく公爵家からも追放されてしまった。だが転生者であったロディーはいざという時に備えて着々と準備を整えていた。魔獣が何時現れてもおかしくない、とても危険な辺境に追いやられたロディーであったが、農民スキルをと前世の知識を使って無双していくのであった。
恋人を寝取られた挙句イジメられ殺された僕はゲームの裏ボス姿で現代に転生して学校生活と復讐を両立する
くじけ
ファンタジー
胸糞な展開は6話分で終わります。
幼い頃に両親が離婚し母子家庭で育った少年|黒羽 真央《くろは まお》は中学3年生の頃に母親が何者かに殺された。
母親の殺された現場には覚醒剤(アイス)と思われる物が発見される。
だがそんな物を家で一度も見た事ない真央は警察にその事を訴えたが信じてもらえず逆に疑いを掛けられ過酷な取調べを受ける。
その後無事に開放されたが住んでいた地域には母親と自分の黒い噂が広まり居られなくなった真央は、親族で唯一繋がりのあった死んだ母親の兄の奥さんである伯母の元に引き取られ転校し中学を卒業。
自分の過去を知らない高校に入り学校でも有名な美少女 |青海万季《おおみまき》と付き合う事になるが、ある日学校で一番人気のあるイケメン |氷川勇樹《ひかわゆうき》と万季が放課後の教室で愛し合っている現場を見てしまう。
その現場を見られた勇樹は真央の根も葉もない悪い噂を流すとその噂を信じたクラスメイト達は真央を毎日壮絶に虐めていく。
虐められる過程で万季と別れた真央はある日学校の帰り道に駅のホームで何者かに突き落とされ真央としての人生を無念のまま終えたはずに見えたが、次に目を覚ました真央は何故か自分のベッドに寝ており外見は別人になっており、その姿は自分が母親に最期に買ってくれたゲームの最強の裏ボスとして登場する容姿端麗な邪神の人間体に瓜二つだった。
またそれと同時に主人公に発現した現実世界ではあり得ない謎の能力『サタナフェクティオ』。
その能力はゲーム内で邪神が扱っていた複数のチートスキルそのものだった。
真央は名前を変え、|明星 亜依羅《みよせ あいら》として表向きは前の人生で送れなかった高校生活を満喫し、裏では邪神の能力を駆使しあらゆる方法で自分を陥れた者達に絶望の復讐していく現代転生物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる