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2章

やっぱりクズフォンスが水の魔術師なの? レギーネ視点

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【レギーネ視点】

 学園の鍛錬場。

 決闘に勝ったクズフォンスを、あたしは呆然と見ていた。

「クズフォンスが勝っちゃった……」

 信じられない。

 あの「クソ雑魚のキモブタ」が、ガベイジ伯爵に勝つなんて……

 あたしは夢でも見てるのかしら……?

 嫌われ者のクズフォンスの周りに、人がたくさん集まっている。

 オリヴィア王女殿下まで、クズフォンスに期待している。

 (なんだか異世界に転生したみたいだわ……)

 まるで別の世界線、まるで想像できなかった未来。

「……ねえ。レギーネ、大丈夫?」

 友達のリーセリアが、あたしに話しかけてきた。
 
 心配そうな表情で、あたしの顔を覗き込む。

「ありがとう。何でもないわ……」
「そう? 悩みがあれば相談してね。最近、様子が変だから……」

 たしかにあたしは、最近おかしくなっている。

 (もう気になって仕方ないわ……っ!)

 クズフォンスが――水の魔術師なのかどうか。

 いや、それはあり得ないはず。

 あたしは、クズフォンスを子どもの頃から知っている。

 クズフォンスは、怠惰で無能なくせに傲慢で、どうしようもない存在。

 一緒にいるのが嫌で嫌で仕方なかった……

 (なのに、今のクズフォンスはカッコい——)

 ううん。そんなことない……っ!

 痩せて(ほんのちょっと)カッコ良くなっても、水の魔術師様とは全然違う。

 中身は昔のクズフォンスのままだから。

 (どうせクズフォンスとは、婚約破棄するんだから……)

「レギーネ。あたし、アル様に賭けたんだ」

 リーセリアが、あたしに耳打ちしてきた。

「えっ? じゃあ、アルフォンスに賭けた1人って……」
「うん。あたしなの」
「…………!」

 あたしは驚いて、よろめいてしまう。

「どうしてアルフォンスに賭けたの?」
「それは……アル様が好きだから」
「えぇぇぇっ!」

 声が裏返ってしまうあたし。

 学園生の視線が、あたしとリーセリアに集まる。

「しーっ! 声が大きいよ!」
「アルフォンスが好きって……リーセリアの婚約者はどうなるの?」
「あたしの婚約者とは、婚約破棄するつもり」

 あたしは言葉を失う。

 リーセリアは、本気でアルフォンスのことが好きみたいだ。

 自分の婚約者を捨ててまで、アルフォンスと結ばれようとするなんて……

「で、でも……アルフォンスにも婚約者がいるから……」
「アル様の婚約者よりあたしが愛されて、アル様にも婚約破棄してもらうから」
「……いや、いやいやいや、そんなのめちゃくちゃよ。お互いの家が認めるわけない」
「もしアル様が今の婚約者さんと婚約破棄しないなら、あたしは二番目でもいい。アル様のためなら、死んでもいいから」

 アルフォンスの「今の婚約者」は、あたしだ。

 つまり、リーセリアは、あたしから婚約者のアルフォンスを奪おうとしているわけで……

 (リーセリア、目が真剣だ……)

「そんなにアルフォンスがいいの? あんなヤツのどこがいいの?」
「! アル様はすっごおぉくカッコいいよっ! 優しくて強くて、最高の男性だと思うっ!」
「そう……かな? たぶんリーセリアの勘違いだと思う。アルフォンスは、怠惰で傲慢で無能で変態のクズだよ。あたしは子どもの頃から知ってるから……」
「……レギーネ。アル様のこと嫌いなの?」

 鬼の形相で、あたしを睨むリーセリア。

「き、嫌いじゃないわよ……っ! ただ、昔のアルフォンスはダメだったわけで……」
「じゃあ、今のアル様は【すごい】と思うのね?」
「くぅぅぅ~っ! す、すごい……かも。ほ、ほんの少しだけ、ね」

 あのクズフォンスを「すごい」と認めるなんてムカつく。

 (クズフォンスのくせに生意気よ……っ!)

「レギーネは、アル様と幼馴染でしょ。協力してほしいの。あたし、アル様を本気で好きだから」

 リーセリアは、あたしの手をぎゅっと握った。

「……わかったわ。もちろん協力する」
「ありがとうっ!」

 リーセリアがあたしに抱きつく。

 (ま、いいか。あたしには水の魔術師様がいるし)


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