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1章
冒険者ギルドで剣の鍛錬「しかし、なんでまた剣を? 【剣は下賤な平民のもの】と言っていたじゃありませんか?」
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「アルフォンス様、今日もレギーネ様が来ました」
「え? 3日連続だぞ?」
なぜかレギーネが、ここ最近頻繁に訪問してくる。
「でも話すことないしな……」
レギーネは俺に会いに来るが、レギーネは一言も話さない。
じっと虫を見るみたいに俺を観察するだけ。
正直言って、気味悪いというか……
「何を考えてるのか、サッパリわからないんだよ」
「なるほど……私には、レギーネ様は【言いたいけど言えないこと】を抱えているように見えます」
「うーん。俺に言えないことって何だろう?」
たぶん、婚約を破棄したいのだろう。
クズな性格のアルフォンスがどんな反応をするか怖いのかもしれない。
「とりあえず、今日は先約があるから会えないよ。冒険者ギルドで剣の鍛錬だ」
「け、剣の、たんれん……っ!!」
リコがふっと倒れそうになって、
「リコっ! アブナイっ!」
俺は間一髪のところでリコを抱きとめた。
「あ、アルフォンス様が、剣を握るなんて……明日世界が終わるかも……」
長年アルフォンスの側にいたリコにとって、卒倒するような出来事なのか。
「しかし、なんでまた剣を? 【剣は下賤な平民のもの】と言っていたじゃありませんか?」
たしかに【ドミナント・タクティクス】の設定では、剣で戦うのは平民キャラだ。
この世界では貴族しか魔法が使えない。だから魔法を使えない平民は、剣で戦うことになる。
そして、魔力の強さは血統によって決まるのだが——世界の理(ことわり)の外にいる主人公は、平民でありながら魔法を使えて、貴族たちを蹂躙していく。
主人公は、剣も魔法もどちらも天才なのだ。
もしシナリオ通りに学園で主人公に追放されたとしたら、俺は冒険者になっていきていくつもり。
冒険者の世界は、強さが全ての実力主義。
剣も魔法もどちらも使えたほうがいい。
「少しでも強くなるためだよ。強くなって、ヴァリエ家の領民を守りたいんだ」
俺は予め作っておいた、表向きの理由を言う。
「とても立派ですね。ただ、最近のアルフォンス様は立派すぎて、ちょっと私は寂しいというか……」
「寂しい?」
「いえっ! 今の忘れてください……」
なんだか最近のリコはおかしいな。
★
レギーネのお茶会を断って、俺はガレオンの冒険者ギルドへ行った。
この世界の貴族は、自分の領地に冒険者ギルドを持っている。
建前上、ギルドは貴族から独立した組織だ。
しかし、実際には貴族の金と権力がないと、ギルドはやっていけない。
要するに、貴族はギルドの「ケツモチ」みたいなものだ。
唯一の例外は、主人公の所属する【栄光の盾】と呼ばれるギルドで、貴族から一切の援助を受けずに活動している。
もちろん、SSランクの世界最強ギルドだ。
……と、そんな設定があるせいで、ヴァリエ侯爵家は冒険者ギルドに影響力がある。
ギルドの訓練場に入って、俺は剣の師匠を待っていた。
アルフォンスの父親に頼んでおいたのだ。
「貴族が剣を振れるわけねえ」
「ヴァリエ侯爵のブタ息子じゃん」
「マジで邪魔だわ」
と、やはり冒険者にも嫌われている……
父親が【すごい師匠をつけてやる】と言っていたが、いったいどんな奴なのか。
「アルフォンス殿、待たせましたね」
「え? あなたはSランク剣聖の——」
「え? 3日連続だぞ?」
なぜかレギーネが、ここ最近頻繁に訪問してくる。
「でも話すことないしな……」
レギーネは俺に会いに来るが、レギーネは一言も話さない。
じっと虫を見るみたいに俺を観察するだけ。
正直言って、気味悪いというか……
「何を考えてるのか、サッパリわからないんだよ」
「なるほど……私には、レギーネ様は【言いたいけど言えないこと】を抱えているように見えます」
「うーん。俺に言えないことって何だろう?」
たぶん、婚約を破棄したいのだろう。
クズな性格のアルフォンスがどんな反応をするか怖いのかもしれない。
「とりあえず、今日は先約があるから会えないよ。冒険者ギルドで剣の鍛錬だ」
「け、剣の、たんれん……っ!!」
リコがふっと倒れそうになって、
「リコっ! アブナイっ!」
俺は間一髪のところでリコを抱きとめた。
「あ、アルフォンス様が、剣を握るなんて……明日世界が終わるかも……」
長年アルフォンスの側にいたリコにとって、卒倒するような出来事なのか。
「しかし、なんでまた剣を? 【剣は下賤な平民のもの】と言っていたじゃありませんか?」
たしかに【ドミナント・タクティクス】の設定では、剣で戦うのは平民キャラだ。
この世界では貴族しか魔法が使えない。だから魔法を使えない平民は、剣で戦うことになる。
そして、魔力の強さは血統によって決まるのだが——世界の理(ことわり)の外にいる主人公は、平民でありながら魔法を使えて、貴族たちを蹂躙していく。
主人公は、剣も魔法もどちらも天才なのだ。
もしシナリオ通りに学園で主人公に追放されたとしたら、俺は冒険者になっていきていくつもり。
冒険者の世界は、強さが全ての実力主義。
剣も魔法もどちらも使えたほうがいい。
「少しでも強くなるためだよ。強くなって、ヴァリエ家の領民を守りたいんだ」
俺は予め作っておいた、表向きの理由を言う。
「とても立派ですね。ただ、最近のアルフォンス様は立派すぎて、ちょっと私は寂しいというか……」
「寂しい?」
「いえっ! 今の忘れてください……」
なんだか最近のリコはおかしいな。
★
レギーネのお茶会を断って、俺はガレオンの冒険者ギルドへ行った。
この世界の貴族は、自分の領地に冒険者ギルドを持っている。
建前上、ギルドは貴族から独立した組織だ。
しかし、実際には貴族の金と権力がないと、ギルドはやっていけない。
要するに、貴族はギルドの「ケツモチ」みたいなものだ。
唯一の例外は、主人公の所属する【栄光の盾】と呼ばれるギルドで、貴族から一切の援助を受けずに活動している。
もちろん、SSランクの世界最強ギルドだ。
……と、そんな設定があるせいで、ヴァリエ侯爵家は冒険者ギルドに影響力がある。
ギルドの訓練場に入って、俺は剣の師匠を待っていた。
アルフォンスの父親に頼んでおいたのだ。
「貴族が剣を振れるわけねえ」
「ヴァリエ侯爵のブタ息子じゃん」
「マジで邪魔だわ」
と、やはり冒険者にも嫌われている……
父親が【すごい師匠をつけてやる】と言っていたが、いったいどんな奴なのか。
「アルフォンス殿、待たせましたね」
「え? あなたはSランク剣聖の——」
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