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2-2話 一代男爵になる 従者ジジ登場

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 また、学園長から呼ばれました。最近、多いです。
 
 緊張しながらドアをノックします。

「入りなさい」
 良かった、学園長の声は、機嫌が良さそうです。

 学園長室の重いドアを開き、入ります。


「フラン、おめでとう」
「一代男爵の申請が認められた」

 うれしいです。飛び上がりたいですが、気持ちを抑えます。

 一代限りですが男爵として、最下位ですが貴族として認められます。


 第一王子が入室しました。

「王族の方から、爵位を授与して頂きます」

「おめでとう、フラン女男爵」

 国王の名代である第一王子が、私の制服の襟のホールに、男爵を表す黒色の石のバッチを付けてくれます。


「ありがとうございます」

 第一王子の顔が目の前にあります。まつ毛の一本まで美しいです。

 爵位が上がると、王子に近づけるのですね、これは励みになります。


「フラン、私のことは、友人としてアレックスと呼んでくれ」

 第一王子が、私のアゴに手を添え、軽く持ち上げてくれました。

 私と彼が見つめ合う形になります。


「恐れ多いです、第一王子様」

 危なかったです。キスされるかと思いました。

 無礼講だと言われ、その言葉を信じて飛ばされたという話をよく聞きます。


「第一王子様をお名前で呼べるのは、伯爵家以上です」

 学園長が助け舟を出してくれました。

 自分より身分の高い方を名前で呼ぶのは、相手の許可が必要です。

 そして、王族の名前を呼べるのは、伯爵家以上という条件が付加されます。

 平民の私でも知っています。

 でも、あの栗毛の美人令嬢、セレーナ嬢は別格扱いのようなので、気になります。

「そうか、フランが伯爵になったら、名前で呼ぶと約束してくれ」

 まぶしいような笑顔です。

「お約束いたします」
 どうやったら伯爵になれるのか、教えて欲しいです。


   ◇


「フラン嬢、よろしいですか」

 え?
 学園長室を出ると、女性から声をかけられました。

「あ、先生、どうしました?」

 神殿で私を教育して頂いている先生が、なぜか学園にいます。

「神官長の命令で、貴女に従者見習いを付けます」
 従者はうれしいですけど、見習いですか?


「ジジと申します。よろしくお願いします」
 小さな女の子が、可愛い会釈をしました。

「よろしくね」
 金髪の可愛い子ですね、初等部かな?


「今日、平民学生寮から貴族学生寮へ移りますので、ご準備をお願いします」

 貴族学生寮には、従者の部屋も付いています。

 さらに、貴族学生寮のお弁当は、美味しいはずです。

「これから、学園長に挨拶をしますので、詳しいことは後ほど」

 見習いでも、従者が付くのは嬉しいです。

 でも、なんで神官長は、私が一代男爵になったのを知っているのでしょうか?


   ◇


「「キャー」」
 教室に戻る廊下で、令嬢の悲鳴が上がりました。

「この方が、私の胸を触りました」
 巨乳令嬢が騒いでいます。

「私たちも見ました」
 目撃者もいます。

「いや、違う、出会い頭にぶつかったんだ」
 巨乳好き令息が、うろたえています。

 と言うか、早くその手を離しなさい。
 彼の両手は、令嬢の両胸を掴んだままです。

 ん? 巨乳令嬢が、彼の手を掴んで離さないでいるみたいです。

 第一王子が駆け付けました。
「お前、その手を放せ!」

 令息は、令嬢から引き剥がされました。
 自分の両手を見つめ、呆然としています。

 それはそうです。やわらかい感触のはずなのに、両手に残っている感触は硬い鉄板だったのでしょう。

 私の両手も、その硬い感触を知っています。

 令嬢は、顔を手で覆って泣いていますが、あれはウソ泣きですね。化粧が崩れないようにしています。

 巨乳好き令息と、巨乳令嬢は、第一王子に連れられ、学園長室の方に向かいます。

 ん? 巨乳令嬢は、ドサクサにまぎれて、第一王子と腕を組んで、体を密着させています。

 彼女のバイタリティーは、敬服に値します。


   ◇


 数日後、教室の中で、貴族のスキャンダルに花が咲いています。

「あの巨乳好きが謹慎処分だって、ザマァよね」

「令嬢の胸を触ったらしいわ」
「ヒドイ!」

「たぶん、巨乳令嬢のしかけた罠にハマったのよ」

 たぶんそうだと、私も思います。


 あれ? 隠れるように、私の従者見習いの女の子が、令嬢たちの話を聞いています。




(次回予告)
 一代男爵になったフラン。次回は子爵令息とお見合いです。
 でも、その令息は、、、

 そして、中等部の可愛い令嬢”ティファニー”が登場です。

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