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第二章 第一王子
第33話(閑話休題)冒険者“踊り子”ユニット
しおりを挟む「フラン、こちらのお二人は?」
王弟殿下の前に、美人二人が座っています。
日曜日、離宮から王宮へ引っ越しを終えた時です。
同級生だった冒険者“踊り子”が、王弟殿下へのつながりを求めて、私を訪ねてきました。
応接室で、王弟殿下と一緒に、冒険者“踊り子”の美人二人から、話を聞きます。
「彼は、同級生の冒険者“踊り子”です」
「彼? 男性なのか? そうか」
なぜ、残念そうな顔をするのですか。以前も、話をしましたよね。
「彼女は、同級生の冒険者“踊り子”です。隣国の侯爵家に雇われていたのは、彼女です」
「え!」
王弟殿下が驚くのも無理ありません。
第三王子の事件で、裏で糸を引いていたと考えられ、密かに探していた黒幕が目の前にいるのですから。
「俺は今、魅了にかかっているのか?」
王弟殿下が、珍しく焦っています。
「私たちとは別の魅了にかかっているかも」
美人二人が、意味深に笑いました。
冒険者“踊り子”の話では、冒険者学校が閉校された後、隣国からスカウトされ、魅了の技を教える仕事をしていたそうです。
異世界の魔法を発動する準備が進められていた事に気が付き、ヤバいと思っていたところに、第三王子が駆け落ちしてきたそうです。
王子に魅了の技が使われていることに気が付き、これはヤバいと、密かに隣国から逃げ戻ったそうです。
鑑定の技を使って、彼女の心拍数、発汗の変化、顔の表情を見ていましたが、ウソを付いていない事を確認しました。
「ウソはないようだな。話を聞こう」
王弟殿下も、美人二人を信用することにしたようです。でも、普段から、美人にならだまされても良いと言っている、困った彼です。
「私たち、ユニットを組みました」
冒険者“踊り子”の美人二人で、これからは、歌を仕事にするようです。
「二人で、スーパースターを目指すのね」
スーパースターは、踊り子なら誰しもが目指す、憧れの称号です。私が目指した勇者と、肩を並べる称号です。
「それで、王宮で初ライブを開催したいので、全体放送のカギを教えて欲しいの」
二人から、今日の本題となる要望がありました。
王宮の全体放送は、王宮の廊下や、中庭にいる人々に、王族のメッセージや緊急事態を、声で伝える装置です。
放送装置である魔道具を動かすためには、魔法のカギが必要になります。
そして、そのカギを有していれば、王族から全体放送を使う事が許された人だと、証明されます。
「交換条件がある」
「侯爵家令嬢が魅了を使っているようだ。解除する方法を教えてくれ」
「相手がどんな魅了の術を使っているのかが判らないから、解除は個別に行う必要があります。ですので、私たちにしかできないです。でも、魅了にかからない魔道具なら、作ることができます」
美人二人が、私たちを見て、なぜかニヤニヤしています。
◇
「この指輪を、薬指に着けていればいいのか?」
王弟殿下が、冒険者“踊り子”から、今朝、私室に届いた指輪を、まじまじと見ています。
朝のお茶を、二人で楽しんでいる時です。
「左手だそうですよ」
左手じゃないと効果が発揮しないと、冒険者“踊り子”の美人二人から聞きました。
「これ、魔道具だよな?」
宝石類は付いておらず、見た目は、結婚指輪です。
「ですね。王弟殿下用と私用に、美人二人が作ってくれました」
試しに鑑定してみると、加護“呪いよけ”が見えました。
これなら魅了よけになると思います。
ただ、一緒に“結婚の誓い”という、聞いたことのない加護が付いていましたが、彼には伝えていません。
これ、やはり結婚指輪です。
「冒険者は、魔道具を作れるのか?」
「適正が合えばですけど、私はポーション作成の適性がありますよ」
身体強化ポーションくらいなら、学園の研究室でも調合できます。
「もしかして、ほれ薬は作れるか?」
あ、これは、悪いことに使おうとしていますね。
「あの二人の力を借りれば、つくれますが」
「作りましょうか?」
作る気はありませんが、彼にゆさぶりをかけて、表情の変化を観察します。
「いや、自分の力で、なんとかする……」
あれ? 予想と違います。
みだらな考えを誤魔化す顔になると思っていましたが、顔を赤面しただけです……
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