GELADEN~装弾済み~

如月 風佳

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犬の巣

予測

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 「だから、美奈子ちゃんが此処に居る理由はおそらくタイムマシンではなくて、時空の歪みにたまたま入り込んじゃったとか…なんだと俺は思ってる。」

ケンが話を冒頭に引っ張りつけた。
「けどよ、こっちとあっちを繋ぐ何かが無いとそれって無理なんじゃねぇーか?」
ヒビキの発言に、ケンは首を横に振った。
「それは、なくてもいいんだ。多分本当にたまたまが重なったんだと思う。こっちの世界で時空空間に穴を開けるようなことあったら、美奈子ちゃんはこっちの世界へたどり着ける。」
「時空空間に穴を開けるようなことって?」
ヒロの問いかけにアキラは緑色の目を彼女に向け言った。
「例えば、爆発とか。」
静寂の中に水道の水がポチャンポチャンと落ちるような不気味さを感じさせる声だ。彼は落ち着きすぎている。ケンは頷いて続けた。
「うん、爆弾とかは大いにありえるね。……美奈子ちゃん、気付いたら辺りは火の海だったんじゃない?」
美奈子はケンの問いかけにも動けずにいた。ヒビキが「おい…」と優しく声をかけて現実に引き戻ってくる。現実から酷く逃避しているようだ。けれど、解からないというわけではない。辛いだろう、信じていたものがすべて作り物だったと知ったのだから。友達だと信じていた人に急に敵に回られた気分なのだろう。きっと、自分もこうなってしまうだろうから。誰も何もいえなかった。
人間とは無力に感じる。
 「はい…確かに…気付いたら…火の海で…私…テロでも起きたのかと…。どこに行ってもいいか分らなくて…。」
現実にひき戻ってきた彼女の声は酷く弱々しかった。
アキラが見るに見かねて、彼女の頭に腕を回して引き寄る。
「もういいよ。怖かったね…」
引き寄せられ、美奈子の髪の毛に彼の頬が擦り寄る。「はい…」とだけ答えられたが、涙が止まらない。あの火の海を思い出すと体が走らなくてはならないと反射的な行動を起こしだす。

 「ねぇ?もし、時空に穴が開かなかったらどうなってたの?」

ヒロの言葉に、ケンは美奈子を横目で気遣いながら、言った。

「そのまま時空空間の中に閉じ込められる…かな。」

「そっか、なら、よかったじゃん。」

ヒロは八重歯を出して顔を隠している美奈子に笑った。

「いい方に考えようよ☆こーんなとこでも時空空間の中でミイラよか、断然いいと思うし、」

ヒロの言葉に美奈子は怒りを爆発させていた。

「いい加減なこと言わないでください!!!」

「美奈子ちゃん…」

ケンが思わず口を挟み、アキラが引き寄せている彼女の頭を無言で撫でる。

「落ち着つけよ…」

ヒビキの囁きは優しい。
アキラの右手は撫でる手つきが心なしか、怪我をしている子猫をいたわるような手つきだった。女慣れしているという感じよりは自分より遥かにか弱い者をいたわる時のもののように感じた。こういう経験が無い美奈子でも解るほどに。傷つけないように恐る恐るだった…と言ったら分かりやすいかもしれない。誰にでもこういう風なのだろうか。
美奈子はヒビキの優しい言葉とアキラのいたわるような手で泣きだしそうになっていた。けれど、ココは…自分のいた時代じゃない…。皮肉になってしまう。

「落ち着けると…思いますか…?」

美奈子は目を覆った。
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