星屑のメロウディーヴァ

ベアりんぐ

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episode"2"

episode2.2

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 クラウドが何やら準備をしている。機械やら食料やらを、その老体で背負うには大きすぎるバックパックに詰め込んでいた。

ホープがそこに近寄っていき、クラウドに邪険にされる。そうした後、登ってきたタウリーへと駆け寄っていく。



「ワンッワンッ!!」

「ホープ~。良い子にしてたか?」

「ワン!」

「ほう犬か。時代が変わっても、犬は愛くるしいものだな」

「ホープはいつでも元気ですね」



 三人の足元を駆け回り、特にサダルの匂いを嗅いでいた。

危険がないとわかったのか、サダルの顔を舐め始め、サダルは抵抗していたがやがて抵抗をやめ、ただホープを撫でるだけとなった。



「アンタたち何やってるんだい?今から旅に出るってのに」



 荷物の支度が終わったのか、その身に合わない大きさのバックパックを背負って玄関へと足を向けてこちらを見てそう言った。



「探すって言ってたけど……クラウドさん、これから行くの!?」

「もちろんさね。生い先短いんだから、ぼーっとしてたらポックリ逝っちまう。なら、思い立ったら行くのさ。私は」

「私も同行しよう。仲間達が目を覚ましてパニックを起こしでもしたら……何が起こるか分からないからな」

「私も」



 力強く、ルミナが続ける。



「私も……他のアンドロイド、METSISと会ってみたいです。もしかしたら、自分が何者かが分かるかも知れないから……」



 タウリーへと視線を向ける。

タウリーは無言で頷く。その顔には少しの諦めと、納得が見られる。



「ルミナが何者か、僕も知りたいし……勿論行くよ。クラウドさんに着いていけば、大陸一周出来るかも知れないしね」

「……ありがとうございます」

「なんだアンタ達?大陸一周を目指しているのかい?ならそのルートで行こうじゃないか」

「え、良いんですか?何か手掛かりがあるんじゃ……」

「そんなもんないよ。ただ探すのさ。強いて言えば、この二人の共鳴だけだよ」

「それは、見つかるの……?」

「細かいことは良いのさ!コイツを見つけたのも偶然だったしね」

「ええ……?」



 多少困惑しつつ、ルミナに向くタウリー。そんな姿に既に背を向けて歩き出すクラウド。そこに着いていくサダルとホープ。

 それぞれの目的、目標を持ってしまった旅は、大きく強く。しかし小さな渦となって周りを巻き込んでいくことになる。

そんな旅が、今始まりを改めて、咲いたばかりの釣鐘草が揺れながら告げた。












         ◎◎◎












 集落に別れを告げ、彼ら彼女らの旅が始まった。と言っても、今までとそこまで大きく変わったわけではない。

既に日が落ちかけている時にスタートしたものだから、集落を出る頃には他の集落からの荷車を引く者や、他の旅人は道に居なかった。

クラウドが突発的に行くことを決定してしまったからである。



「ねえクラウドさん。何もこんな暗い中出発することないんじゃない?」

「ん?細かいことは良いのさ。それに一刻も早くアンドロイドどもを見つけたいのさアタシは。もうおい先短いからね」

「これだけ元気なら、まだまだ長生きしそうだなぁ……」

「ワン!!」



 そう会話しながら、タウリーとクラウド、そしてホープが進んでいく。

タウリーは持っていた懐中電灯をいつものようにつけていたが、クラウドが持っていた電灯の方が性能が良く、一つでも十分明るかったため、その内消してバックパックにしまった。



「ルミナ、誰に作られたとかは本当に、覚えていないのか?」

「すみません……どうしても思い出せなくて」

「いや、良いんだ。むしろ知らない方が幸せなことだってある」



 タウリー、クラウドの後ろを、ルミナとサダルは歩いていた。



「私たちを作った奴は、国だった。いや、実際には一人の学者が主導して作っていたが……奴は時々漏らしていた。"なぜこんな物を"ってな。だから本当は作りたく、無かったんだろうな」

「私も……私を作った人も、そうなのでしょうか?」

「それは分からない。けれど、何処か君は……何か私たちとは違うように感じる。これは私の感だけどね。君からは、祈りを感じる」

「祈り……」

「作られたモノだからこそ、そういった作り手の意図を推察することには、どうも私は長けていてな。そして私のその考えは良く当たる。だから、そんなに深く考えなくても良いと思うぞ。もっと気楽に行こう」

「はい、ありがとうございます」

「うん、どういたしまして」



 そうサダルは言うと、あ、それと…と呟いて、もう一つルミナに質問した。



「ルミナには、何か武器になりそうな機能は付いていないのか?それが一つ気がかりでな」

「?そういった機能は分かりません。記憶がないことも関係しているかも知れませんが……」

「……そうか。ありがとう」



 思案顔のまま、歩き続けるサダル。そんな顔を覗き込みながらルミナが横を歩いていると、いつの間にか先へ先へと歩いていたタウリーとクラウドが、何やら話しながら立ち止まっていた。

そして二人へ向かってタウリーが声を掛けた。



「ルミナ、サダル!今日はここで一晩明かそう。なんかクラウドさんが良いもの持ってるらしいしね」

「フン。良い物どころの話じゃないわい小僧。こりゃ一番の発明と言っても過言じゃないんだからな」

「……それじゃ、行こうかルミナ。まだ旅は長い。少しずつ、君の素性が明らかになっていくような手掛かりが見つかると良いな」

「はい」



 そう言うと二人は、タウリー達の元へと少し早歩きで向かっていった。

 タウリー達の元へとつくと、クラウドがニヤニヤしながら何やら小さな箱を抱えていた。

他の三人は不思議にソレを見てみると、本当にただの箱である。ただ、小さくボタンが備え付けてある。



「それじゃ、とっておきを見せてやろう。今日アタシらが泊まるのは、この箱と言っても過言じゃないことをね」

「それは、異次元収納庫だな。成程、この時代にも残っていたのだな」

「…………」



 サダルがそう言うと、クラウドは驚いた顔をした後に、少し不貞腐れたように頷いた。



「……チッ、アンタ先に言うんじゃないよ。全く……」

「すまない。クラウドが言いたかったんだな」

「ええい!律儀に謝りやがって!!……はぁ、そうだよ。コイツは異次元収納庫。サダル以外は見たことないだろうから、今から実際に開いて見せてやろう」

「クラウドさん。何が起こるんです?」

「ワン」

「まあ見てな。ここのスイッチを押して、開きたい場所に置く。するとね……」



 箱がガシャガシャ音を立てて、みるみるうちに何倍もの四角へと大きくなっていく。

しばらくすると音がなくなり、扉が一つだけついた真四角の小屋のようなものが出来上がった。しかし、到底それに四人と一匹が入るサイズではなかった。



「……え?これに入って、一晩明かすの?無理じゃない、クラウドさん?」

「フッフッフ……ここからが、驚きポイントなのさ。良いから入りな」

「では、失礼します」



 ルミナがそう言って扉を開ける。そこにタウリーとサダルも続く。

すると、中には明らかに、あの真四角の小屋よりも大きく、また複数の部屋を抱えた大部屋が、眼前に現れた。

二人が驚いていると、クラウドが言った。



「今日は、ここで一晩明かすよ。ホラ入んな!!」
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