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釣鐘草より知らせを2
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次の日。学校に登校した俺は、何ら変わり映えのない、いつも通りの生活が続くと思っていた。
そんな淡い期待のような、いやそんなものすら感じさせないような常識を、疑いもせずにいたのだ。
◎◎◎
"号外!!吉田祐樹、女装癖か!?"
そうデカデカと書かれ、その下には記事のような文字列と女装姿で姿見を見つめる祐樹と思しき人物の写真が載っていた。
クラスに入るや否や、その号外とやらのポスターが黒板のど真ん中を占拠し、視界を外させるものかと、我が物顔で佇んでいた。
「なんだよ、これ……」
「真也!これって……」
そう言って駆け寄る彩芽の両肩を力強く掴み、荒々しくも丁寧に彩芽へと言葉を向ける。
「松宮は何処だ!?」
「痛っ!」
「あ、あぁ悪かった……それで、松宮は」
「分かんないよ……でもなんで——」
「クソっ!」
そう言って走り出す。
祐樹の姿が見えないことも心配であったが、まず松宮を見つけなければならない。そう直感的に感じた。
廊下を走りながら、他クラスの様子を見る。ある程度知名度のある祐樹のこのタレコミに対して、既に学年中が騒めきを立てていた。
他クラスの黒板をよく見ると、どうやら同じような記事が貼ってあるようだった。
ある者はヒソヒソと友達と話し、ある者はあの人気者の陥落を喜び、ある者は馬鹿笑いをしていた。
学校中を走る。幸い授業が始まるまでには時間があったため、遠慮なく探すことが出来た。
そして辿り着いたのは、あの部室。
「松宮!!」
「……随分と早かったね。真也くん」
「……!!やっぱりお前だったんだな!どうしてこんな、晒すような真似を——」
「あれ、変なことを言うね?」
首を傾げそう言う松宮の顔には、罪悪感などまるでないような、ある種の犯罪者と相対しているような恐怖があった。
そして続ける。
「私の目的は秘密を暴くこと。最初に会った時も、言ったよね?」
「でもどうして祐樹なんだ!!そりゃあつい先日にも名前が挙がってたが……」
「何でも何も、ないよ?秘密を暴く。これは私に課されたことなの」
「一体、どんな感情でもの言ってんだ。アンタ」
そう言うと少しだけ俯き、しかし表情の変化もなくその後、あっけらかんとした顔で答える。
「私はただ、秘密を知りたいだけだよ。願わくば、この学校の生徒全員のね」
「……イカれてる。アンタ、イカれてるよ……!!」
「そう。なら、その道を進むまでよ」
そう言って立ち上がり、部室から出ていく松宮の背中を見つめながら俺は、何も言葉もかけられずにただただ、立ち尽くしていた。
その後、卒業するまでに起きた悲劇は、語るべきものではない。
その時俺はやはり、ただただ立ち尽くしていただけだった。
そんな淡い期待のような、いやそんなものすら感じさせないような常識を、疑いもせずにいたのだ。
◎◎◎
"号外!!吉田祐樹、女装癖か!?"
そうデカデカと書かれ、その下には記事のような文字列と女装姿で姿見を見つめる祐樹と思しき人物の写真が載っていた。
クラスに入るや否や、その号外とやらのポスターが黒板のど真ん中を占拠し、視界を外させるものかと、我が物顔で佇んでいた。
「なんだよ、これ……」
「真也!これって……」
そう言って駆け寄る彩芽の両肩を力強く掴み、荒々しくも丁寧に彩芽へと言葉を向ける。
「松宮は何処だ!?」
「痛っ!」
「あ、あぁ悪かった……それで、松宮は」
「分かんないよ……でもなんで——」
「クソっ!」
そう言って走り出す。
祐樹の姿が見えないことも心配であったが、まず松宮を見つけなければならない。そう直感的に感じた。
廊下を走りながら、他クラスの様子を見る。ある程度知名度のある祐樹のこのタレコミに対して、既に学年中が騒めきを立てていた。
他クラスの黒板をよく見ると、どうやら同じような記事が貼ってあるようだった。
ある者はヒソヒソと友達と話し、ある者はあの人気者の陥落を喜び、ある者は馬鹿笑いをしていた。
学校中を走る。幸い授業が始まるまでには時間があったため、遠慮なく探すことが出来た。
そして辿り着いたのは、あの部室。
「松宮!!」
「……随分と早かったね。真也くん」
「……!!やっぱりお前だったんだな!どうしてこんな、晒すような真似を——」
「あれ、変なことを言うね?」
首を傾げそう言う松宮の顔には、罪悪感などまるでないような、ある種の犯罪者と相対しているような恐怖があった。
そして続ける。
「私の目的は秘密を暴くこと。最初に会った時も、言ったよね?」
「でもどうして祐樹なんだ!!そりゃあつい先日にも名前が挙がってたが……」
「何でも何も、ないよ?秘密を暴く。これは私に課されたことなの」
「一体、どんな感情でもの言ってんだ。アンタ」
そう言うと少しだけ俯き、しかし表情の変化もなくその後、あっけらかんとした顔で答える。
「私はただ、秘密を知りたいだけだよ。願わくば、この学校の生徒全員のね」
「……イカれてる。アンタ、イカれてるよ……!!」
「そう。なら、その道を進むまでよ」
そう言って立ち上がり、部室から出ていく松宮の背中を見つめながら俺は、何も言葉もかけられずにただただ、立ち尽くしていた。
その後、卒業するまでに起きた悲劇は、語るべきものではない。
その時俺はやはり、ただただ立ち尽くしていただけだった。
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