秘密部 〜人々のひみつ〜

ベアりんぐ

文字の大きさ
上 下
9 / 10

釣鐘草より知らせを2

しおりを挟む
 次の日。学校に登校した俺は、何ら変わり映えのない、いつも通りの生活が続くと思っていた。

そんな淡い期待のような、いやそんなものすら感じさせないような常識を、疑いもせずにいたのだ。












         ◎◎◎












"号外!!吉田祐樹、女装癖か!?"



 そうデカデカと書かれ、その下には記事のような文字列と女装姿で姿見を見つめる祐樹と思しき人物の写真が載っていた。

クラスに入るや否や、その号外とやらのポスターが黒板のど真ん中を占拠し、視界を外させるものかと、我が物顔で佇んでいた。



「なんだよ、これ……」

「真也!これって……」



 そう言って駆け寄る彩芽の両肩を力強く掴み、荒々しくも丁寧に彩芽へと言葉を向ける。



「松宮は何処だ!?」

「痛っ!」

「あ、あぁ悪かった……それで、松宮は」

「分かんないよ……でもなんで——」

「クソっ!」



 そう言って走り出す。

祐樹の姿が見えないことも心配であったが、まず松宮を見つけなければならない。そう直感的に感じた。

 廊下を走りながら、他クラスの様子を見る。ある程度知名度のある祐樹のこのタレコミに対して、既に学年中が騒めきを立てていた。

他クラスの黒板をよく見ると、どうやら同じような記事が貼ってあるようだった。

 ある者はヒソヒソと友達と話し、ある者はあの人気者の陥落を喜び、ある者は馬鹿笑いをしていた。

 学校中を走る。幸い授業が始まるまでには時間があったため、遠慮なく探すことが出来た。

そして辿り着いたのは、あの部室。



「松宮!!」

「……随分と早かったね。真也くん」

「……!!やっぱりお前だったんだな!どうしてこんな、晒すような真似を——」

「あれ、変なことを言うね?」



 首を傾げそう言う松宮の顔には、罪悪感などまるでないような、ある種の犯罪者と相対しているような恐怖があった。

そして続ける。



「私の目的は秘密を暴く・・・・・こと。最初に会った時も、言ったよね?」

「でもどうして祐樹なんだ!!そりゃあつい先日にも名前が挙がってたが……」

「何でも何も、ないよ?秘密を暴く。これは私に課されたことなの」

「一体、どんな感情でもの言ってんだ。アンタ」



 そう言うと少しだけ俯き、しかし表情の変化もなくその後、あっけらかんとした顔で答える。



「私はただ、秘密を知りたいだけだよ。願わくば、この学校の生徒全員・・・・・・・・・のね」

「……イカれてる。アンタ、イカれてるよ……!!」

「そう。なら、その道を進むまでよ」



 そう言って立ち上がり、部室から出ていく松宮の背中を見つめながら俺は、何も言葉もかけられずにただただ、立ち尽くしていた。





 その後、卒業するまでに起きた悲劇は、語るべきものではない。

その時俺はやはり、ただただ立ち尽くしていただけだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

今日はパンティー日和♡

ピュア
ライト文芸
いろんなシュチュエーションのパンチラやパンモロが楽しめる短編集✨ おまけではパンティー評論家となった世界線の崇道鳴志(*聖女戦士ピュアレディーに登場するキャラ)による、今日のパンティーのコーナーもあるよ💕

Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説

宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。 美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!! 【2022/6/11完結】  その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。  そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。 「制覇、今日は五時からだから。来てね」  隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。  担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。 ◇ こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく…… ――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――

大志を抱け!乙女たち!

ゆん
ライト文芸
九蘭女子音楽学校は予科・本科の二科制の歌劇に特化した伝統ある音楽学校。 舞台に憧れる乙女たちのお話。

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~

海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。 そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。 そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。

ヤマネ姫の幸福論

ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。 一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。 彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。 しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。 主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます! どうぞ、よろしくお願いいたします!

処理中です...