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街、春にして不毛フカシ

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 「……まさかあの時にそんなことがあったなんてね」

 「だろ?俺も驚いた」

 誰だってあの状況は驚くだろう。だって学校の中心にいるような生徒が、誰もいない空き教室で女子生徒の格好をしているのだから。

 あの時の俺にはどうしようもなかった。あの現実を、受け入れる程できた人間ではなかった。おそらく大人となった今でも戸惑うだろう。

 「真也くんは、その後どうしたの?」

 「……正直ワケがわからんくて、俺は扉を閉めて逃げた」

 「まぁ、誰だってそうするか」

 この話を聞いている松宮はひどく悲しそうな顔をしていた。

 おそらく、俺も。

 あの出来事は、俺と祐樹だけしか知らない物だったが、思えばあれが原因で起こってしまった事件だったのだ。

 あの時、俺が見ていなければ。

 「自分を責めても、過去は変わらないよ」

 「……あぁ、そうだな」

 変わらないと分かっていても、今でもあの頃に戻れたらと、ふと考えてしまう。

 あの事件以来、俺たちのグループは狂い始めたんだと思う。

 「じゃあ、いこっか」

 「どこへ」

 「本人に会いに、だよ」

 驚いた。松宮は現在祐樹の居場所を知っているのか。でも何故知っている?

 学校の部活動も終わり、夕陽が照らす中でも、松宮の瞳だけは、ひどくくすんでいた。
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