上 下
12 / 23

12

しおりを挟む
「アスモデウス卿」

 嫌なところで声を掛けられちゃったなあ。振り向きたくないけど、無視したらそれはそれで面倒なことになる。間違いなく煩い。俺は渋々、本っ当に渋々、振り返った。

「あーらら、ダンタリオン卿。俺、これからお出かけする予定なんだけど、用があるなら手早く済ませて欲しいなぁ」
「ならば、手早く済ませよう……最近、勇者共に会いに行っているご様子だが」
「あっはは! よくご存知で。俺のことそんなに気になるの~?」

 うっわ、ついに言われたかあ。主戦派のダンタリオン卿のことだから、いつまでも黙認してくれるとは思ってなかったけどさあ。
 舌打ちしそうになったけど、なんとか笑みを浮かべてみせた。俺ってばすごくない?

「貴殿の振る舞いが何を意味しているか、分からないとまでは言わないが」
「……だったらそのまま黙認してくれても良いじゃん~」
「否、だからこそ言わせてもらおう。あれは、我が王と貴殿の友ではない。我等に刃を向けた以上、敵以外の何者でもないのだ」

 堪えきれずに溜息をついてしまったけれど、それくらいは許されるでしょ。
 ダンタリオン卿は主戦派筆頭で、穏健派筆頭の俺とバチバチすることも少なくないけれど、互いに対して悪感情を抱いている訳でもない。お互いに、お父様を思っているからこそ、意見が異なっていることを理解しているからだ。
 この忠告も、お父様と俺を慮っていることくらい、ちゃんと理解している。

「どうせ意地悪するんなら、ベッドの中でしてくれたら良いのにぃ」
「私に抱かれたいなら、もう少し慎ましく振る舞うことだな」
「はぁい、ご忠告どーも」

 パチンっと指を鳴らして、目的の地へと一瞬で飛ぶ。アヴァリス王国とヴィクスルート王国に跨がる最東端の街、ラート。
 ラートの街から一昼夜歩くと黒領に入る為か、この地に住んでいるニンゲンへの税金は軽いらしく、比較的栄えている方の街だ。
 俺が着いた頃には、周囲はすっかり夜になっていた。橙色の街明かりが、道行くニンゲンたちの顔をほんのり照らしている。

「さあて、聖騎士様はどこかなぁ?」

 会えるかどうかは分からない。もう休んでいるかもしれない。最後に会った出来事を思えば、きっと俺の顔なんて見たくもないだろうに、こうしてわざわざ会いに来たなんて、我ながらどうかしてる。 
 宿屋の方へ向かったとき、風に乗って聞こえてきた声に、心臓が大きく脈打った。

「僕、あなたが……ルシウス様が好きなんです」

 それは、可愛い可愛い勇者様の声。建物の影から覗くと、勇者様と聖騎士様が見つめ合っているようだった。
 聖騎士様は本人さえ嫌がらなかったら、セックスしよ? って誘いたいくらい格好良いと思う。勇者様が恋に落ちちゃっても当然だ。
 聖騎士様だって、異なる世界の事情に巻き込まれて、それでも戦ってくれる健気な勇者様を憎からず思っていたとしても不思議ではない。
 いくら俺だって、他人の恋路を邪魔するほど野暮じゃないので、気付かれる前に退散することにした。

「……なんだろ。変なの」

 ちくちくと喉が痛い。こんな気分は初めてだ。落ち着かなくて、聖騎士様と勇者様の横顔が、目の前にちらついて離れない。追い出すように固く目を瞑ったら、その拍子に誰かにぶつかってしまった。

「わ、ごめんごめん。大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ」

 金色の長い髪を耳に掛け、彼女の赤い唇が微笑んだ。手足を露出させた装いから、彼女の職業が娼婦だと察することができた。
 甘ったるい香りを漂わせ、柔らかな胸を押し付けてくる彼女が何を望んでいるかなんて、わざわざ言うまでもない。

「私、お兄さんのお眼鏡に叶ったかしら」
「えぇ? どーしよっかなぁ」
「一緒に楽しみましょうよ、ね?」

 それも、悪くはないかもしれない。何も考えられないくらい快楽に耽ったなら、この訳の分からない吐き気も収まるだろうか。
 彼女の柔らかな身体を抱き寄せようと腕を伸ばし掛けたとき、ぐいっと肩を強く引かれた。

「────こいつは止めておけ」

 今、一番聞きたくない声で、一番聞きたかった声。信じられない気持ちで振り返ったら、聖騎士様が眉間に皺を寄せて立っていた。

「行くぞ」
「えっ、ちょ、聖騎士様!?」

 肩に置かれた手は二の腕へと滑り、半ば引きずられるようにその場を後にする。
 ずんずんと人気のない方へと歩く聖騎士様は、時間も時間だからか、白銀の鎧でなく軽装だった。女神の加護が付与された鎧や聖剣もないくせに、俺に声をかけるなんて何を考えてんだか。

「それで、こんなところで何をしている」

 街の明かりも遠く、人気のない街外れ。ラートは黒領の近くの割りには栄えている街だけれど、街を棄てて出て行くニンゲンも少なくない。特に街外れの地区ともなれば、それがより一層顕著だ。
 聖騎士様のことだから、もしものことを考えて、辺りに廃屋しかないこの地区まで俺を引っ張って来たのかもしれない。
 俺、穏健派だって言ったと思うんだけどなあ。家主を失って久しい廃屋に背を預け、溜息をつく。

「俺はなぁんにも。ぶらぶらしてたら、あっちから一晩どう? って声をかけてきたんだよ」
「おまえから声をかけた訳じゃないのか?」
「かけた訳じゃないよ。乗っても良いかなぁとは思ったけどね」

 聖騎士様の青い瞳がすっと細められた。なんか、怒ってる?
 聖騎士様に怒られる理由が分からない。魔族がニンゲンの雌に手を出すのは許せない、とか?

「……心配しなくとも、気持ち良いことしかしないよ。お父様に与えられた《アスモデウス》の名にかけて、痛いことなんかしないってば。聖騎士様だって、この前は気持ち良かったでしょう?」

 もしくは、誰彼構わずセックスをするような節操のなさが許せないのかなあ。ユルティア神殿の神殿騎士って、清廉潔白さを求められるらしいし。
 残念ながら、俺の予想は全て外れた。というか、聖騎士様が怒ってる理由は分からなかった。何故なら、当の本人が別のことを気にしたからだ。

「与えられた、名?」
「そうだよぉ。《魔の王》麾下に選ばれるとき、俺たちは王に名前をもらうの」

 気が遠くなるほど遠い昔。俺の前に現れたお父様が、俺に《アスモデウス》という名を与えてくれた。その日から、俺はそれまでの俺とは別れを告げて、《アスモデウス》になった。

「……本来の名前は、また別にあるのか?」
「あるよ。さすがに教えないけどねぇ」

 俺たち魔族にとって、《真名》は魂も同然だ。名を明かすということは魂を差し出すということ。知られてしまったが最後、逆らえなくなる。
 一度だけ、差し出しても良いかな、と思ったことがある。この世でただ一人、お父様や俺たちが友だと思った人の子。結局差し出すこともなく、この世から消えてしまったけれど。
 ふと、聖騎士様の手が伸びる。頬を撫でる手は妙に優しくて、くすぐったい気持ちになった。

「何か、あったのか?」
「……なんでそう思うの?」
「少し、いつもと様子が違うような気がした」

 それを、よりにもよって聖騎士様が問うのか。詰りたいような、笑いたいような、おかしな衝動に襲われた。

「聖騎士様こそ、どうしたの? あんなことがあったのに、過ぎてちょっとびっくり」

 瞬間、聖騎士様の表情が微かに強張った。あえて思い出さないようにしていたのだろう。残念ながら、俺はそんなに優しくない。この綺麗なニンゲンの心に爪を立てて、柔い肉を裂いて、流れる血の味に舌鼓を打ちたいのだから。そう、それが目的で、それ以外に目的なんかない。

「……言っただろう。俺に、おまえを責める資格などない。あの村人たちの心を救う術があったかどうか、俺にだって分からない。おまえが何もしなかったら、もしかしたら、俺が介錯してやったかもしれない」
「聖騎士様が無辜の民を切り捨てるの?」
「弱き者を真の意味で救えない称号に、一体どれほどの価値がある?」

 そう思うほどに、聖騎士様は自分の無力さを味わい、これまでの価値観が壊れているようだ。俺の望んだ光景だ。胸が歓喜に打ち震えている────筈なのに、何故だかちらちらと目の前から消えない光景。
 だったら、と。どうして聖騎士様がここにいるの。勇者様はどうしたの。訊く勇気は、ない。

「それで、おまえは? 何かあったんじゃないのか」
「別に。ちょっと嫌なことがあっただけ」
「……そうか」
「後は、まあ……大事な友達のことを、思い出しちゃったって言うか────」

 ふと、影が落ちた。気付いたときには、聖騎士様に口付けられた後だった。
 たった一瞬の触れ合い。でも、唇には確かに熱と感触が残っている。

「な、んで」

 聖騎士様は、どうして魔族の俺にキスなんてしたの。それに、勇者様はどうしたの。
 言いたいことはいくらでもあるのに、苦しくて苦しくて、声が出なかった。
 目を丸くしたまま黙り込む俺に何を思ったのか、聖騎士様が俺の肩口に顔を埋めた。

「……最近、分からなくなる」
「何が……?」
「俺と、おまえ。何が違う?」

 それは、人類の敵から無辜の民を守る神殿騎士が、口にしてはいけない問いだった。
 在り方も、肉体を構成する要素も、魔族と《ニンゲン》では異なっている。同じものもあるけれど、違うものだっていくらでもある。
 ひとつひとつ挙げて、俺たちはこんなにも違うのだと教えてやれば良いものを、俺はうっかり踏み外してしまった。

「知りたい?」

 聖騎士様、と甘く囁いた。おもむろに持ち上がった聖騎士の顔に手を添えて、今度は俺から口付ける。上唇を柔く食んで、もっと味わいたい衝動を押し殺し、ゆっくりと離れた。

「……分かった?」

 多分、ここが分水嶺。あと一歩踏み越えてしまったなら、もう後には退けなくなる。
 俺は狡いから、聖騎士様に委ねてしまった。聖騎士様がただ一言、分かったと答えるならば、この馬鹿馬鹿しい戯れも終わる。
 けど、もしも違う答えを出したのなら────。

「……いいや。だから、おまえが教えてくれ」

 俺は、まだ良い。いくらでも言い訳は立つし、俺の在り方を知っている同胞たちは呆れこそすれ、罰したりはしない。
 でも、聖騎士様はだめだ。人を守る為に神殿騎士になった聖騎士様が、よりにもよって魔族と触れ合うなんて禁忌中の禁忌だ。決して許されない。
 分かっていて尚、俺も多分きっと聖騎士様も止まれなかった。止まらなかった。

「……聖騎士様が、それを望むなら」
「ルシウスだ。ルシウス・ブランジェ、それが俺の名だ」
「ルシ、ウス……」

 言うや否や、噛み付くようなキスをされた。分厚い舌が口の中に入ってきて、俺の舌を絡め取っていく。甘く歯を立てられ、吸い付かれた。何も考えられなくなる、溺れてしまいそうほどのキス。
 溺れる夜の、始まりだった。


 ◇


 連れ込み宿に向かうだけの余裕はなく、適当な空き家に転がりようになだれ込んだ。
 粗末なベッドに辿り着くまでの間、口付けては離れ、また口付けるを繰り返していた。
 腰を下ろしたルシウスの上に、アスモデウスがしなだれかかる。普段は雄弁な舌も、今夜はろくに動きそうにない。

「ん、まって……」

 ルシウスの首に回していた腕を外す。訝しげに眉を寄せるルシウスの前で、アスモデウスは指を振った。しゅるり、とリボンが解けるようにアスモデウスの衣服が、下着を残して床に落ちた。手袋は霧のように溶けて、消える。

「……そんなことまでできるのか」
「ふふ。俺、天才だし。脱がしたがるのもいるけど、今夜は時間がな、ッ!?」

 月に照らされた肌に朱が散る。吸うと言うより、歯を立てたと言う方が正しいのではないだろうか。痺れるような痛みを訴える肩を押さえ、何をするんだとルシウスを睨む。

「こういう場で、他を匂わせるのはマナー違反じゃないのか?」
「そ、れは……そうかも」

 たとえ一夜の関係であろうと、他の誰かを想起させる言葉や振る舞いは褒められたことではない。
 だけど、とアスモデウスは思う。どうして、ルシウスがそんなことを気にするのか。淡い期待が胸に灯りかけるも、そんなことはないと握り潰す。これはひとときの夢なのだから。

「怒らないでよ、ね?」

 真一文字に結ばれた唇を、そっとなぞる。ルシウスの手が、アスモデウスの悪戯な手を包み込むように捕らえた。

「傷は、治ったようだな」
「おかげさまで~」

 ルシウスの唇が、指先に落ちる。慈しみさえ感じる行為にそわそわと落ち着かない。
 そんなことよりも、とルシウスから取り返した手を、彼の両肩へと乗せた。
 そして、どちらからともなく口付ける。火傷しそうなほどに熱を孕んだ舌が、アスモデウスの口内へ入り込んできた。絡み付く舌に身悶えながら、清廉潔白が聞いて呆れる、とアスモデウスは思う。

「ん……あ、はぁ、ッ!」

 長年剣を握っていた手はごつごつと節くれだっていて、固い皮膚で撫でられる度に、じわじわと甘い熱が広がる。
 不埒な手が下着の中に潜り込もうとして、アスモデウスは大きく肩を揺らした。

「ちょっと、まって……さすがの俺も、今日は何も準備してないっていうか」
「準備?」
「こっち使う経験なんてないでしょ。特別に見せてあげる」

 音もなく、アスモデウスの手に現れた透明な緑色の物体。指で軽く押すと容易にかたちを変えるそれは、所謂潤滑剤だ。はらの中に入れると、体内の熱で溶け、中を洗浄する仕組みだ。快楽に妥協はしないアスモデウスが発明し、気に入っている魔術具でもある。
 清廉潔白な聖騎士様が、よもや同性同士の性交に必要な前戯に関する知識を有しているとは思えない。気恥ずかしさがないと言ったら嘘になるが、痴態を前にしたルシウスがどんな反応をするのか、興味をそそられた。

「ん……」

 親指ほどの大きさの潤滑剤を、はらの中へと招き入れた。どろりと溶け出した液体を指に絡め、卑猥な音を立てながら中をかき混ぜる。
 ふと、突き刺さるような視線に、アスモデウスは顔を上げる。ああ、と堪らず口許が緩んだ。

「ふふ……やーらしい顔」
「……おまえの所為だ」
「褒め言葉として受け取っとくね~」

 ルシウスの大きな喉仏が、上下に動いた。アスモデウス自ら解す様は、彼の欲望を引きずり出すには十分だったらしい。
 視線だけで愛撫されているような気分だ。気付けば指が二本、三本と増えて、いやらしい水音が響き渡る。

「あー……もうだめ、たまんない」

 熱い視線に晒されて、陰茎は先走りをだらだらと溢している。後ろを解す指もいつのまにか快楽を追い求めていた。
 こんなものでは足りない。もっと太くて長い熱が欲しい。衣服越しにも分かる、張り詰めたルシウスのそれに熱っぽい視線を送る。

「っ、すまない。退いてくれ」
「え?」
「そんな物欲しそうな目で見られて、大人しくできると思うか?」

 言うが早いか、ルシウスはアスモデウスの身体をベッドへと横たえた。ぱさり、と衣擦れの音。窓から差し込む月光が、ルシウスの鍛え上げられた肉体を淡く照らす。がちゃがちゃと余裕のない手付きで緩められたベルト。下履きの中から姿を現した雄は、アスモデウスの痴態で先端をてらてらと濡らしていた。

「入れるぞ。痛かったら言ってくれ」
「俺が痛がったからって止めないでくれるって約束してくれるなら?」
「……止められると思うか?」

 深い青に凶暴な光が瞬く。喰われる、と思った。痛ければ痛いほど、気持ち良ければ良いほど、今夜のことは忘れられなくなる。忘れられないほど、ほかに何も考えられないほど、このひとときに溺れたかった。

「ッ……」

 貫かれる衝撃は何度経験しても慣れない。しかし、アスモデウスの身体はその先の快楽を知っているからか、或いは彼に抱かれているからか、萎える様子はなかった。

「本当に、入るものなんだな……」

 本当なら欲に任せて腰を打ち付けたいだろうに、ルシウスはアスモデウスの息が整うまで耐えていた。
 あんなにも小さな孔に、自身の昂りが入ったことに目をぱちぱちと瞬かせる。きゅうっと咥え込む孔の縁をそっと撫でる彼の様子に、アスモデウスはふっと眉を下げた。

「どうせならさあ、こっち触ってよ……?」

 ルシウスの腕から手まで、指をすっと滑らせて、絡ませる。そのまま引き寄せて、アスモデウスは自らの下腹部まで招いた。薄い腹の皮膚と肉の下に、ルシウスの熱が収まっている。ほんの少し力を込めれば、胎を貫くかたちを感じ取れた。

「ココに、ルシウスのが入ってる」
「っ、おまえ、それはわざとか……?」
「ふふ。もう動いてほしくって」
「眠れると思うなよ」
「最高」

 瞬間、アスモデウスの視界に星が散った。あまりの衝撃に、背中が弓なりにしなる。逃げることは許さないとばかりに、ルシウスの節くれた指が、華奢な腰をしかと掴んだ。

「ひッ、あっ、あっ、ん、ん……あうッ!」
「声が、変わったな……おまえの、好きな処か?」
「んッ、んんっ、そこ、好きっ、カリで、すら、れる、と、イイ……!」
「締め、付けるな……!」

 腰を前後に動かすうちに、ルシウスの昂りがを掠める度、アスモデウスの口からは悲鳴にも似た嬌声が上がる。胎を穿つ熱も淫らな水音も肌を滑る吐息も、何もかもが快感を煽った。

「んッ、んんッ、ヨすぎ、て、あっ、あっ、あたま、バカに、んんッ!」
「くっ、おまえは……!」

 ぽた、と雫が落ちる。滲む視界の中のルシウスは、清廉さからは程遠い顔をしていた。
 汗を滲ませ、欲を堪えて眉を寄せる顔は、正しく雄だ。それほどまでに求められ、アスモデウスは歓喜の声を上げる。

「も、イき、そッ、奥、いっぱい、突いてっ、ルシウスので、イかせて……!」
「ああ、イかせてやる……!」
「ひんッ、あっ、あっ、あっ、う、んッ、ああッ!」

 アスモデウスが達した瞬間、胎にじんわりと熱の広がりを感じた。優秀な雄の雌を孕ませる精が、子を成せない胎に吐き出された事実は、仄暗い優越感をくすぐった。

「ねえ、これで終わりなんて野暮なこと、言わないよね?」
「……当然だ」

 胎の中の陰茎は、未だ固さを保っている。意図して締め付ければ、ルシウスが微かに唸った。
 ひとときの夢なれど、夜はまだ更けたばかり。アスモデウスは、思考を溶かす快楽に身を委ねた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】敗北した雑魚の魔族ですが幸せな生活を手に入れました

うらひと
BL
洗脳、監禁あり。最弱の魔族であるアイナは最後のチャンスも逃して敗北してしまった。これで魔王様に敗北報告をすれば魔王様に殺されると思っていたアイナは育てていた弟に一方的にお別れをした。 その後予想通り魔王様に殺されたと思っていたアイナは、意識を取り戻し助けてくれた高位魔族の総統に感謝を伝えるが……。 弟に翻弄されながら優しい?弟と幸せ?な生活を手に入れる話です。他サイトで掲載した分に+相手sideを投稿します。

生贄として捧げられたら人外にぐちゃぐちゃにされた

キルキ
BL
生贄になった主人公が、正体不明の何かにめちゃくちゃにされ挙げ句、いっぱい愛してもらう話。こんなタイトルですがハピエンです。 人外✕人間 ♡喘ぎな分、いつもより過激です。 以下注意 ♡喘ぎ/淫語/直腸責め/快楽墜ち/輪姦/異種姦/複数プレイ/フェラ/二輪挿し/無理矢理要素あり 2024/01/31追記  本作品はキルキのオリジナル小説です。

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。

みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。 男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。 メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。 奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。 pixivでは既に最終回まで投稿しています。

絶滅危惧種の俺様王子に婚約を突きつけられた小物ですが

古森きり
BL
前世、腐男子サラリーマンである俺、ホノカ・ルトソーは”女は王族だけ”という特殊な異世界『ゼブンス・デェ・フェ』に転生した。 女と結婚し、女と子どもを残せるのは伯爵家以上の男だけ。 平民と伯爵家以下の男は、同家格の男と結婚してうなじを噛まれた側が子宮を体内で生成して子どもを産むように進化する。 そんな常識を聞いた時は「は?」と宇宙猫になった。 いや、だって、そんなことある? あぶれたモブの運命が過酷すぎん? ――言いたいことはたくさんあるが、どうせモブなので流れに身を任せようと思っていたところ王女殿下の誕生日お披露目パーティーで第二王子エルン殿下にキスされてしまい――! BLoveさん、カクヨム、アルファポリス、小説家になろうに掲載。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う

hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。 それはビッチングによるものだった。 幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。 国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。 ※不定期更新になります。

処理中です...