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番外編
3. 涼子編(後編)※
しおりを挟むのぼせる寸前でお風呂から上がり、シルクのパジャマを着てキッチンへ行き冷蔵庫からミネラルウォーターを出してグラスに注ぎ水分補給をし寝室へ。
哲哉さんはベッドの中で本を読んでいたが、私に気づくと起き上がり微笑んだ。
「ちゃんと水分取ったか? もしかしたら疲れて湯船の中で寝てるんじゃないかと思ったよ」
その穏やかな笑みに、さっきのモヤモヤがまた湧き上がる。
何でそんなに余裕なの…? ちょっとくらいヤキモチ焼いてくれてもいいんじゃない…?
いつも落ち着いている大人な哲哉さんが大好きな私だけど、今はそんなあなたが腹立たしくてたまらない。自分勝手なのは承知の上だが。
「…? どうしたんだ、そんな怖い顔して」
もう我慢できなかった。
「ねぇ! 何で? どうしてそんな涼しい顔してられるの?! 私が海堂先生にキャーキャー言ってても何とも思わないの? 別にヤキモチ焼かせるためにわざと言ってたんじゃないけど! それでも、ちょっとぐらい妬いてくれてもいいんじゃない?! もう私に興味ないの? 愛してないの?!」
私が詰め寄るように言うと、哲哉さんの表情が変わった。さっきとは打って変わって口を真一文字に結んで厳しい顔つきになる。
「……涼子」
「えっ……キャッ!」
ものすごい勢いで哲哉さんに手を引っ張られると、ベッドに押し倒された。万歳するような体勢になった両腕を押さえつけられて身動きがとれない。
「あのな…40過ぎの男が情けないが…俺が何とも思ってないとでも思ってるのか?」
「え…」
「まあ、彼は俺より若いし本当にいい男だからお前がキャーキャー言う気持ちはよく分かるが…。だが、夫を目の前にあんなにはしゃがれるとさすがにいい気はしないし腹が立つ。だが、いい歳してそんな気持ちを表に出すのも癪だし、あれ以上聞きたくなかったから先に風呂に入ったんだ。そうだよ、悪いか! 俺は嫉妬している!」
「…!」
哲哉さんが本当に…?
驚いてポカンとしていると、哲哉さんに噛みつくようなキスをされた。
「んっ…! て、哲哉さん…ハァッ…!」
「俺をみっともなく嫉妬させた罰だ。海堂君のことが頭から消え去るくらいお前を抱くから……覚悟しておけ」
「っ…!」
哲哉さんの不敵な笑みに軽く戦慄が走ると同時に顔が引き攣った。
そして、哲哉さんを嫉妬させるととんでもない目に合うということを初めて思い知らされたのだった……。
「……涼子…涼子…そろそろ起きろ…」
「ぅ…ん…」
優しく身体を揺り動かされて、深い海の底からゆっくりと浮上していくように眠りから覚める。
目をそろそろと開けると哲哉さんがベッドの縁に腰かけながら私を見つめていた。
「目が覚めたか…? もう朝だよ、そろそろ9時になる。もっと寝かせてやりたかったが、確か今日買い物に行くって言ってたよな。風呂を沸かしたから入ろう。それに、シーツ類も洗濯しないといけないし…」
「えっ…もうそんな時間…全然気が付かなかった…哲哉さんはいつ起きたの?」
喘ぎ過ぎて嗄らした声で尋ねると、哲哉さんが恥ずかしげに頭を軽く掻いた。
「俺もさっき起きたばかりだ。寝すぎたな」
珍しい…。休日でもいつも早起きなのに…。でも、昨夜のアレなら無理ないか…。うゎ! 思い出してかぁぁ~となる…。そして、今気付いたが私は裸だった。えっ、あのまま寝ちゃったの?! それにシーツを見ると…確かにすごいことになっていた…。慌ててベッドから出た途端、ガクッとなり床にペタンと座り込む。こ、腰に力が入らない…!
「大丈夫か?! 立てないのか…?」
そう言うや否や哲哉さんが私を素早く抱き上げた。
「えっ、あっ、大丈夫だから!」
「大丈夫じゃないだろう。じゃあ、風呂行くぞ」
素っ裸のままで恥ずかしいが、為す術もなくそのまま運ばれた。
ベタベタになっていた全身を哲哉さんが洗ってくれ、サッパリするとようやく完全に目が覚めた。
2人でゆったりとお風呂に浸かっていると、哲哉さんが申し訳なさそうな顔をして謝った。
「…怒りに任せてちょっとやりすぎた…悪かったな…」
「うん…あんな哲哉さん初めてでびっくりした。でも、私も悪かったから…ごめんね」
本当に昨日の哲哉さんはすごかった…あんなの初めてだった…って言っても最後の方はあまり記憶がないけど…。
身体中を舐められ、撫でまわされた。でも、一番敏感な肝心な所は全く触れてくれず、気が遠くなるほど焦らされて…。もう我慢できなくて涙を流しながらねだっても、涼しい顔で「ダメだ、これはお仕置きなんだから。そんな簡単にイかせないよ。んっ? 腰をずっと揺らせながらこんなに濡らして涼子はいやらしいな……」と意地悪を言う。ほんの一瞬敏感な箇所を掠めるように触れたり、何度も何度も私がイく寸前で動きを止められたりして気が狂いそうになった。それに恥ずかしい言葉を耳元で囁かれたり逆に無理やり言わされたり…。どれほどの時間が経ったのか分からないが「頭がおかしくなりそう、お願い、もう許して、もう来て!」と叫ぶと、ようやく渇望していたものが与えられた。その瞬間、身体中に電流が流れたかのような衝撃が走った。それからはもう止まらなかった…。私の感じる場所を知り尽くしている哲哉さんに貪られ、ひっくり返され、今までしたことがない体勢をさせられ、骨の髄までしゃぶりつくされた。でも哲哉さんの熱を中に感じる度に身体を反らせ、腰を振って、泣きながら叫び続けたのはおぼろげながら記憶している…。
思い出して顔を真っ赤にしていると後ろから哲哉さんの腕が回ってきた。
「涼子、お前ももういい大人なんだから、嫉妬させて俺の愛情を図ろうとするような子供じみたことはやめろ」
「本当にそんなつもりじゃなかったの。でも…そうね…結果的にはそうさせてしまったわね」
「俺は、いくら冷たくして突っぱね続けていてもめげずに諦めずに俺に向かって来たお前の真っ直ぐな、これでもかという想いにやられてしまったんだ。完全にお前に絆されてるんだから、俺の愛情を疑うな」
「哲哉さん…」
哲哉さんの方に身体の向きを変えると、一度その広い胸に顔を寄せてから哲哉さんの目をじっと見つめた。
「あのね、いくら海堂先生がカッコよくても、私の中ではいつでもあなたが一番なのよ。そうよ、私は頑張って頑張って死ぬほど頑張ってやっとあなたを捕まえたんだから、絶対に放さない! 愛してる、哲哉さん」
私がキッパリ言うと、哲哉さんがフッ…と微笑み、私をギュッと抱きしめた。
「俺も愛してるよ、涼子」
すると、私の背中を優しく撫でていた哲哉さんの手が徐々に下がってきて…。
「アッ…!」
後ろから私の敏感な部分に触れられて体が跳ね上がり、指の蠢きに腰が揺れる。
「…ん…ダメ…今日はもう…」
「…分かってるよ…最後まではしない…指でイかせてやるだけだ…ああ…濡れてきたな…」
耳元で囁かれ、ゾクッとする。
「あっ…哲哉さん…」
力が抜けてきた私を哲哉さんが抱き上げ、浴槽の縁に腰掛けさせると、私の両足を広げ跪いて…。
「っ、アアッ! 指だけって…言ってたのに…。イヤ、こんな明るいところで…」
熱い舌に触れられてカッとなる。
「気が変わった。やっぱり最後までするから」
「えっ、あっ…! ん…! ダメ…哲哉さん…ああん!」
ねぇ、あれだけ激しく私を抱いたのに、何でそんなに元気が有り余ってるの…? 買い物の他にもやることが色々あるのに…ああ…もう今日は何もできなさそう…。でも…アァッ! 気持ちいい…ぁん…蕩けそう…。
私は哲哉さんの豊かな黒髪を思いっきり掻き乱しながら、たまには嫉妬させるのもいいかも、なんて思いながら愛する人との悦楽に溺れていった。
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