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 翌週の日曜日、捻挫した足が完全によくなったので、久しぶりに街に出た。
 
 向かったのは、倉光堂という、明治時代創業の文房具店だ。5階建ての重厚感溢れる店構えで堂々たる老舗の風格を漂わせている。ありとあらゆる文房具類を取り揃えており、ここにないものはない、と言われているほどの有名店だ。
 店に入ると、3階に行った。このフロアの一角に、お目当てのガラスペンのコーナーがある。ショーケースの中に、シンプルなものから芸術作品のような美しい模様が施されたものまで、様々な色や種類のガラスペンがディスプレイされている。私はそれらを1本1本じっくりと眺めた。
 この数ある中から私の目を奪ったのは、イタリア職人による手作りの、繊細なデザインのブルーのガラスペンだった。ただのブルーではなく薄いブルーから濃いブルーへとグラデーションになっていて、まるで澄み切った青い空から神秘的な深い海へと繋がっているようで、ため息が出るほど美しい。ペン先には渦巻き状の細かな溝が施されていて、しかも付け替えられるので、もしペン先がダメになってしまっても交換できる。もうこれしかない、と思い、店員さんを呼んでこれを見せてほしいとお願いすると、同じ商品のサンプルを出してくれた。手に取って間近で見るとその細工の美しさにますます魅了された。試し書きをさせてもらうと、とてもなめらかな書き心地に感動した。インクとペンホルダーのセットにもできるというので、購入することに決めた。少し値は張ったが全く構わなかった。
 ラッピングをしてもらっている間、再びショーケースを見ていると、購入したブルーと同じデザインのピンクのペンに目を惹きつけられた。桜色からペン先に向かってだんだんと濃いピンクになっていくグラデーションの優美さに、すっかり見惚れてしまった。少し悩んだが、思い切って自分用に買うことにした。 
 
 ラッピングされた品物と自分用のが入った紙袋を受け取ると店を出て、デパートに寄って買い物をした後、夕方帰宅した。

 気に入ってくれるかな…。学校で使うには実用的ではないかもしれないけど、家で使ったり、インテリアとして飾ってくれるといいな…。期待と不安が入り混じる。そう、これは先生へのお礼のプレゼント。何がいいか散々悩んで、結局、前々から気になっていたガラスペンに決めた。これが最初で最後のプレゼントになるかもしれないので、自分なりに納得できるものが見つかってよかったと思っている。
 そしてピンクのガラスペン。色違いだけど、先生とお揃い…。自然に頬が緩む。先生には内緒だけど、いいよね?
 本棚の中段の空いているスペースに、やはりセットで買ったインクとペンホルダーに挿したペンを並べて飾った。

 夜、夕飯を終えると、さあ、これからが本番だ、とばかりに気合いを入れた。
 スマホをバッグから出すと、すでに登録してある先生の連絡先を開く。先生がくれたのは、電話番号とメールアドレスだった。さすがにいきなり電話をするのは緊張するのでメールを送ることにした。それでもやはりドキドキして指が震えた。打っては消して、打っては消してを何度も繰り返して、結局、ビジネスメールのような感じになってしまった。逆にその方がいいのかもしれない。
 
 最後に誤字脱字がないか確認した後、覚悟を決めて、送信ボタンをタップした。

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