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第二章 歪んだ歯車

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 脚に四魔獣を彫り込んだ机。オウルーク・ブレードにとってこれは自分の地位を表す象徴だった。この職に就く際、ローテンブレード家当主より賜ったものだ。ありがたいと同時に疎ましい。四魔獣のそれぞれが、結局自分はブレードの人間、つまりは傍系であるという象徴になっている。出世しようにも見えない天井があるようなものだった。
 書き付けや手紙の散らばる机に肘をつき、しわだらけの顔を洗うようになでる。ケラトゥス、無能なウィング。なにが、あんなに強いとは予想されませんでした、だ。そのうえ少女が目覚めただと。雇われ護衛たちは報告するだろうし、噂になるかも知れない。そうなったら困る。トリーン・トリストゥルムをほかの魔宝具と同様に飛び領地に移送するのはいいとして、なぜ睡眠状態でなければならなかったのか。筋の通る説明ができなければ出世どころかはじき飛ばされる。

 ウィングめ、部下に先行させて必ず押さえますと言う。行動を許可してしまったが、すべきではなかったかも知れない。あいつに物事を内々に収めるような芸当ができるのか。
 オウルークはまた顔をなでた。いや、あいつならできる。出世の亡者とは言え、周りは常に見えているはずだ。火消しは上手い。火をつけるのはもっと得意だが。

 それでも、と、オウルークは散らばった書き付けのうち数枚を選んで折るとそれぞれ封蝋を垂らして封をし、指輪で押印した。鈴をならすと執事が無言で入室する。「いつものように」と言うと執事は書類を受け取り、一礼して退室した。

 これで保険はかけた。ウィングがなにをしようが火は燃え広がらない。残念だがこれを失策とはせず、次の機会にする為だ。

 このオウルーク・ブレードがブレードの血統をローテンブレードとして認めさせてみせる。そうでなければここまでしわを刻み込んできた甲斐がない。

 窓から風が吹き込み、残った書類を床に撒き散らした。オウルークは無理のきかない腰でゆっくりと立ち、よたよたとかがんで拾い集めた。
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