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第一章 緑の瞳の少女

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 馬はペリジーが引いている。そのまま市門をくぐる。根回しがあったのかローテンブレード家の衛兵も王室派遣の役人も素直なものだった。荷物改めもローテンブレードの紋章が物を言い、開封まではされなかった。

 低い丘を越え、市壁が見えなくなると四人はだれ言うともなく護衛隊形になった。ペリジーは馬を引いたまま、マールが前、後ろにディガンとクロウがついた。ただの輸送なので幅広で整備の行き届いている主街道を使う。その道を目でたどっていくと前方に領地を分断している山が見える。予定では峠を越えてから野宿し、明日日が沈む前に目的の飛び領地に着くつもりだった。

「そんなに気ばかり探って緊張しなくていい。山を越えるまではなにもないさ」
 クロウの方を見る。歩きはじめると鼻の赤さは薄らいで消えてしまった。
「来るとしたら峠を越えてからかな。ただ、実をいうと魔宝具輸送の経験はあまりない。鬼がどう動くか分からないんだ」
 前の二人は耳だけすませていた。
「鬼も賊と似たようなもんだ。山のこっち側はかなり掃除されてるから大丈夫」
「ああ。それにしても貴族の荷の護衛運送なのに正規兵がつかないとはな。見送りすらなかった。おかげでこんないい仕事にありつけたけど」
 ディガンも、前のマールも笑った。
「もう街を出ちまったから言うが、ローテンブレード、大変らしいぞ。はめられたんだとさ、王室に」
 分からない、という顔をしたクロウに説明してくれる。ローテンブレード家は魔王大戦に人と物と金をかなり出したが、それは王室から魔王の領土の大部分の管理を約束されていたからだった。しかし、与えられた土地は魔王の邪法に汚染されて荒れ切っていた。
「目をつけられたんだ。ローテンブレードは新興の成り上がりなのに王家をおろそかにした。その報いさ。顔をつぶされたってわけだ」
「なんだ。そういう……。なら俺には関係ないな。雲の上の雷か。知ったことじゃない」

 みんな笑った。それから、知ったことじゃない、が四人の流行り言葉になった。
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