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潮風の囁き
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着替えて朝食を食べるシルヴィ。二日酔いのせいでスープしか口にすることができません。
「姫、ご無理なさらず。温かいスープだけでもお身体にいいと思います」
「申し訳ございません。せっかくのお食事を…」
「いえいえ、姫と同じ朝を迎えただけでとても幸せです。」
無邪気に顔を赤らめるイーサンに、シルヴィはどう答えていいのか分かりません。
(昨夜のことを聞けばいいんだが…どうやって…)
自分はイーサン国王と昨夜何をしたのか?それが気になって食事どころではありません。
しかし、イーサンは話を続けます。
「今日はお話ししました油田の場所までご案内しようと思っています」
いきなりの本題に我に返ったシルヴィ。自分の役目を思い出し、はっと目が覚めた様子です。
「あの、海底油田のことですよね?漁師が見つけたという一筋の油が浮いていた場所…」
「はい、ここから馬車で海まで移動します。もし体調がお悪いようでしたらまた次回にいたしますが…?」
「い、いえいえ!とんでもございません!すぐに支度をしてお供いたします!」
「それでは午後に出発しましょう」
食事を終え客室に戻ったシルヴィは、今回の旅の目的である"海底油田の探索"について準備をし始めました。
(そうだ…父上の命令で油田を探しに来たんだった…。イーサン国王とのことは後回しにしよう…)
イーサンとシルヴィ、数人の従者が向かったのは寂れた漁村。しかしそこには海底油田を探る学者たちの姿がありました。
「姫、ここから船に乗ります。お加減は本当に大丈夫ですか?」
顔をじっと見つめてくるイーサンに、シルヴィは思わず目線を逸らしてしまいました。
「だ、大丈夫です!本当にお気遣いなく!」
船は2人を乗せて海を渡って行きます。冷たい潮風が強く当たり、シルヴィは思わず目を瞑ってしまいます。
そこへ毛皮のコートをそっとかけるイーサン。そして耳元でこう囁くのです。
「大丈夫、何があっても僕があなたを守ります」
ぎゅっと抱きしめられたシルヴィは動くこともできず、また何も考えられません。
「あの、陛下、どうか…」
「海は怖いですか?」
「いえ、怖くは…」
するとまたイーサンはシルヴィに囁くます。
「あなたの一つ一つの仕草がとても愛らしく、あなたを抱きしめられずにはいられません」
イーサンはシルヴィを抱きしめたまま、頬にキスをしました。
頬だけではなく首筋、耳元、額、愛おしく愛おしく唇を運んでいくのです。
そしてイーサンの左手がシルヴィの下着の中に。胸あたりまで入った指先は彼女の乳首まで届き、確かにその敏感な部分をとらえます。シルヴィは声を出すのを我慢するのですがその時、
「陛下!海底油田地点まであと少しです」
従者からの言葉が。
イーサンは静かに従者に返事をして、シルヴィに伝えます。
「可愛い姫、続きはまた…」
心臓の音がドクドクと鳴っているシルヴィは、イーサン国王本人が撫でてきたことにとても驚いていました。
そして昨夜、イーサン国王と一緒に一夜を過ごしてしまったことも思い出しましたのです。
(イーサン国王はきっと本気で私を…。にも関わらず私は泥酔して…なんて失礼なことをしてしまったんだ…)
あれこれ考えるうちに、船はある一点で停まりました。問題の油田がある場所です。
「姫、ここの海底をいま掘っているところです。ここから油田が出ればこの国は経済的に潤い、また全世界からも注目を浴びることになります」
「確かにおっしゃる通りです。それで、今はどのような状況でしょうか?」
イーサンはここで少し顔を曇らせました。
「海底の岩盤が固く、中々作業が進んでいない状況です…」
「硬い岩盤さえ解決すれば…」
「気長に掘るしかないんです…。今の我々では最先端の機材も買えませんからね」
「しかし、何か海の色が黒ずんでますよね?」
「そうなんです。あまり掘りすぎてもこの海の生態系を壊してしまうことになりかねません。少しずつ進めるしかありません」
前向きで様々な分野を大事にするイーサンに、国王としての輝きをシルヴィは見ます。
(イーサン国王は本当に立派な方だ…)
より強い潮風が吹いてきました。身体が丈夫なシルヴィもこの寒さには弱いようです。
「ちょっと遅めの昼食を食べましょう!」
イーサンはそういうと、一緒に持ってきた大きな釣り竿を船から垂らしました。
「待っててください!新鮮な海の幸をあなたにご用意します!」
シルヴィも手伝おうと左手には網を持って待機。
すると数分で大きな魚が釣れました。
「何と大きい!イーサン様、こんな特技がおありだったのですね!」
「海育ちですからね」
シルヴィに褒められたイーサンは照れながらも華麗な包丁さばきで魚を調理し、それをあっという間に煮込み料理にしてしまいました。
シルヴィも一緒に座って温かい汁物を食べます。二人とも満面の笑みです。
イーサンがポツリと呟きました。
「こうしてると何だか…」
「何だか?」
「夫婦みたいですね」
本当に自分をよく思ってくれる男性に心を寄せ始めたシルヴィ。
自分のために用意してくれた汁物の温かさに、イーサンの真心を感じていたのでした。
さて、一方でメルノタ王国。
シルヴィが"ガーネットのネックレス"を身に付けていたことを知ったランスロットは、自室にこもってペンを走らせていました。
何か重要な書簡のようで、何枚も何枚も書き直しては、ああだ、こうだと独り言を呟いています。
「シルヴィ、俺が誰だか思い知らせてやる」
鬼気迫るランスロットの形相に、リカルドを始め、従者たちは不安を募らせるのでした。
「姫、ご無理なさらず。温かいスープだけでもお身体にいいと思います」
「申し訳ございません。せっかくのお食事を…」
「いえいえ、姫と同じ朝を迎えただけでとても幸せです。」
無邪気に顔を赤らめるイーサンに、シルヴィはどう答えていいのか分かりません。
(昨夜のことを聞けばいいんだが…どうやって…)
自分はイーサン国王と昨夜何をしたのか?それが気になって食事どころではありません。
しかし、イーサンは話を続けます。
「今日はお話ししました油田の場所までご案内しようと思っています」
いきなりの本題に我に返ったシルヴィ。自分の役目を思い出し、はっと目が覚めた様子です。
「あの、海底油田のことですよね?漁師が見つけたという一筋の油が浮いていた場所…」
「はい、ここから馬車で海まで移動します。もし体調がお悪いようでしたらまた次回にいたしますが…?」
「い、いえいえ!とんでもございません!すぐに支度をしてお供いたします!」
「それでは午後に出発しましょう」
食事を終え客室に戻ったシルヴィは、今回の旅の目的である"海底油田の探索"について準備をし始めました。
(そうだ…父上の命令で油田を探しに来たんだった…。イーサン国王とのことは後回しにしよう…)
イーサンとシルヴィ、数人の従者が向かったのは寂れた漁村。しかしそこには海底油田を探る学者たちの姿がありました。
「姫、ここから船に乗ります。お加減は本当に大丈夫ですか?」
顔をじっと見つめてくるイーサンに、シルヴィは思わず目線を逸らしてしまいました。
「だ、大丈夫です!本当にお気遣いなく!」
船は2人を乗せて海を渡って行きます。冷たい潮風が強く当たり、シルヴィは思わず目を瞑ってしまいます。
そこへ毛皮のコートをそっとかけるイーサン。そして耳元でこう囁くのです。
「大丈夫、何があっても僕があなたを守ります」
ぎゅっと抱きしめられたシルヴィは動くこともできず、また何も考えられません。
「あの、陛下、どうか…」
「海は怖いですか?」
「いえ、怖くは…」
するとまたイーサンはシルヴィに囁くます。
「あなたの一つ一つの仕草がとても愛らしく、あなたを抱きしめられずにはいられません」
イーサンはシルヴィを抱きしめたまま、頬にキスをしました。
頬だけではなく首筋、耳元、額、愛おしく愛おしく唇を運んでいくのです。
そしてイーサンの左手がシルヴィの下着の中に。胸あたりまで入った指先は彼女の乳首まで届き、確かにその敏感な部分をとらえます。シルヴィは声を出すのを我慢するのですがその時、
「陛下!海底油田地点まであと少しです」
従者からの言葉が。
イーサンは静かに従者に返事をして、シルヴィに伝えます。
「可愛い姫、続きはまた…」
心臓の音がドクドクと鳴っているシルヴィは、イーサン国王本人が撫でてきたことにとても驚いていました。
そして昨夜、イーサン国王と一緒に一夜を過ごしてしまったことも思い出しましたのです。
(イーサン国王はきっと本気で私を…。にも関わらず私は泥酔して…なんて失礼なことをしてしまったんだ…)
あれこれ考えるうちに、船はある一点で停まりました。問題の油田がある場所です。
「姫、ここの海底をいま掘っているところです。ここから油田が出ればこの国は経済的に潤い、また全世界からも注目を浴びることになります」
「確かにおっしゃる通りです。それで、今はどのような状況でしょうか?」
イーサンはここで少し顔を曇らせました。
「海底の岩盤が固く、中々作業が進んでいない状況です…」
「硬い岩盤さえ解決すれば…」
「気長に掘るしかないんです…。今の我々では最先端の機材も買えませんからね」
「しかし、何か海の色が黒ずんでますよね?」
「そうなんです。あまり掘りすぎてもこの海の生態系を壊してしまうことになりかねません。少しずつ進めるしかありません」
前向きで様々な分野を大事にするイーサンに、国王としての輝きをシルヴィは見ます。
(イーサン国王は本当に立派な方だ…)
より強い潮風が吹いてきました。身体が丈夫なシルヴィもこの寒さには弱いようです。
「ちょっと遅めの昼食を食べましょう!」
イーサンはそういうと、一緒に持ってきた大きな釣り竿を船から垂らしました。
「待っててください!新鮮な海の幸をあなたにご用意します!」
シルヴィも手伝おうと左手には網を持って待機。
すると数分で大きな魚が釣れました。
「何と大きい!イーサン様、こんな特技がおありだったのですね!」
「海育ちですからね」
シルヴィに褒められたイーサンは照れながらも華麗な包丁さばきで魚を調理し、それをあっという間に煮込み料理にしてしまいました。
シルヴィも一緒に座って温かい汁物を食べます。二人とも満面の笑みです。
イーサンがポツリと呟きました。
「こうしてると何だか…」
「何だか?」
「夫婦みたいですね」
本当に自分をよく思ってくれる男性に心を寄せ始めたシルヴィ。
自分のために用意してくれた汁物の温かさに、イーサンの真心を感じていたのでした。
さて、一方でメルノタ王国。
シルヴィが"ガーネットのネックレス"を身に付けていたことを知ったランスロットは、自室にこもってペンを走らせていました。
何か重要な書簡のようで、何枚も何枚も書き直しては、ああだ、こうだと独り言を呟いています。
「シルヴィ、俺が誰だか思い知らせてやる」
鬼気迫るランスロットの形相に、リカルドを始め、従者たちは不安を募らせるのでした。
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