上 下
4 / 6

4

しおりを挟む
「ローズ。やっぱ俺は君じゃなきゃダメだ。婚約破棄は破棄だ」

 結婚破棄をしてきた男が一時間も経たずに再び私の目の前に現れ、身勝手なことを言ってくるのだ。

「もうすでに父には婚約破棄を言い渡されたことも報告済みなんですけど」
「それでも構わないんだ。俺は迷走してしまっただけなんだ。でもマラリアに言われて気が付いた。俺はローズのことが大事なんだ」

 折角のお茶会が、とんだ茶番劇になってしまっているではないか。
 見ている周りの視線も痛いし、ドドンガに対する視線は恐い。

「まずはあなたのお父様とお話をするべきかと思いますが」

 ドドンガの背後から現れ、ドドンガの肩を強く叩くのは彼の父、ポッカ男爵だ。

「お前と言う奴は……なんてことをしてくれたんだ……」
「父上! 痛いですよ! 急に背後から叩くなんて」
「私の心の方が痛い、それ以上にローズお嬢様の方が心を痛めておるわ! ドドンガよ、何故勝手に婚約破棄をしたのだ? これほど完璧で綺麗なローズお嬢様の何が不満だというのだ!」
「だから今こうやって婚約破棄を破棄してもらうよう頼んでいるんじゃないですか」
「馬鹿息子が……」

 お茶会という状況じゃなくなった。完全に修羅場だ。
 全員がこっちを向いて静観している。

「ローズ様、さっきも言ったけどごめんなさい……私のせいですわ」
「マラリアさん!?」

 マラリアさんが目の前に現れて、ドドンガの表情が一気に青ざめていくように見えた。


「これ、ドドンガ様に返すの忘れてました。ごめんなさいねドドンガ様。私はローズ様を泣かせるような人とは結婚できませんので、何故か『ローズ』と彫刻されている指輪もお返し致します」
「わー、こんなところで返すな!」

 マラリアさんは、ポッカ男爵も見ている前で指輪をドドンガに渡した。

 勿論、わざとだろう……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄を言い渡された側なのに、俺たち...やり直せないか...だと?やり直せません。残念でした〜

神々廻
恋愛
私は才色兼備と謳われ、完璧な令嬢....そう言われていた。 しかし、初恋の婚約者からは婚約破棄を言い渡される そして、数年後に貴族の通う学園で"元"婚約者と再会したら..... 「俺たち....やり直せないか?」 お前から振った癖になに言ってんの?やり直せる訳無いだろ

女騎士がいいですか? 構いませんよ、お好きように

四季
恋愛
「あのさ、婚約破棄したいんだけど」 それが、婚約者から告げられた言葉だった……。

婚約破棄して支援は継続? 無理ですよ

四季
恋愛
領地持ちかつ長い歴史を持つ家の一人娘であるコルネリア・ガレットは、婚約者レインに呼び出されて……。

婚約破棄?から大公様に見初められて~誤解だと今更いっても知りません!~

琴葉悠
恋愛
ストーリャ国の王子エピカ・ストーリャの婚約者ペルラ・ジェンマは彼が大嫌いだった。 自由が欲しい、妃教育はもううんざり、笑顔を取り繕うのも嫌! しかし周囲が婚約破棄を許してくれない中、ペルラは、エピカが見知らぬ女性と一緒に夜会の別室に入るのを見かけた。 「婚約破棄」の文字が浮かび、別室に飛び込み、エピカをただせば言葉を濁す。 ペルラは思いの丈をぶちまけ、夜会から飛び出すとそこで運命の出会いをする──

性悪な友人に嘘を吹き込まれ、イケメン婚約者と婚約破棄することになりました。

ほったげな
恋愛
私は伯爵令息のマクシムと婚約した。しかし、性悪な友人のユリアが婚約者に私にいじめられたという嘘を言い、婚約破棄に……。

婚約破棄と追放を宣告されてしまいましたが、そのお陰で私は幸せまっしぐらです。一方、婚約者とその幼馴染みは……

水上
恋愛
侯爵令嬢である私、シャロン・ライテルは、婚約者である第二王子のローレンス・シェイファーに婚約破棄を言い渡された。 それは、彼の幼馴染みであるグレース・キャレラの陰謀で、私が犯してもいない罪を着せられたせいだ。 そして、いくら無実を主張しても、ローレンスは私の事を信じてくれなかった。 さらに私は、婚約破棄だけでなく、追放まで宣告されてしまう。 高らかに笑うグレースや信じてくれないローレンスを見て、私の体は震えていた。 しかし、以外なことにその件がきっかけで、私は幸せまっしぐらになるのだった。 一方、私を陥れたグレースとローレンスは……。

婚約してる彼が幼馴染と一緒に生活していた「僕は二人とも愛してる。今の関係を続けたい」今は許してと泣いて頼みこむ。

window
恋愛
公爵令嬢アリーナは、ダンスパーティの会場で恋人のカミュと出会う。友人から紹介されて付き合うように煽られて、まずはお試しで付き合うことになる。 だが思いのほか相性が良く二人の仲は進行して婚約までしてしまった。 カミュにはユリウスという親友がいて、アリーナとも一緒に三人で遊ぶようになり、青春真っ盛りの彼らは楽しい学園生活を過ごしていた。 そんな時、とても仲の良かったカミュとユリウスが、喧嘩してるような素振りを見せ始める。カミュに繰り返し聞いても冷たい受け答えをするばかりで教えてくれない。 三人で遊んでも気まずい雰囲気に変わり、アリーナは二人の無愛想な態度に耐えられなくなってしまい、勇気を出してユリウスに真実を尋ねたのです。

婚約破棄してきた王子、我が父に復讐される。~彼はすべてを失いました……意外な形で~

四季
恋愛
婚約破棄してきた王子、我が父に復讐される。

処理中です...