21 / 27
【別サイド】宰相の警告
しおりを挟む
「今なんと言った!?」
「ですから、ロブリー陛下の政策は大失敗です! このままでは国が崩壊しますよ。至急政策の取りやめを推奨します」
国王の次に権限を持つ宰相が、ロブリーに対して提言をするのは初めてだった。
それほど、ブラークメリル王国が危機的状況にまで追い込まれていたのだ。
「そもそも、皆対応がおろそかだからいけないのだ。政策が問題ではなく、新しい時代の流れについてこれずに文句ばかり言っている奴らがいけないんだよ!」
「政策だけではありません! 結界がなくなり住民から不安の声も続出しております!」
「だから時代遅れの者たちを相手にするのは苦労する……」
ロブリーは宰相の警告をあしらうように切り返した。
だが、今回は宰相も黙ってはいない。
たとえクビになっても訴える必要があったのだ。
「陛下。冷静にお考えください。既に国の重要機関だった魔道具開発の集落は完全に廃墟し、隣国のホワイトラブリーへ移民したとの情報が入っておりますぞ!」
「なんだと!?」
「それだけではありません。すでに国の九割以上の住民がホワイトラブリー王国へ移民する計画を遂行しています」
「…………」
ロブリーは、ここで初めて考え直したのだった。
国を良くするために経費節約が重要だと考えていた。
だが、住民たちは全員が浪費家なのだとしょうもない人間がこの国には大勢いたのだと改めて判断した。
「好きにさせればいい」
「はい!?」
「所詮は浪費癖の激しい愚かなバカどもなのだろう。残ったまともな考えを持った少人数でも立派な国にできるはずだ」
「いえ、残りの人間は……」
「くどい!!」
宰相は、『残りの人間は移民すらできる金や人脈がいない者たちや囚人ですぞ』と言いたかったが、ロブリーがそれを拒否した。
「経費節約政策は続ける。それに、結界がどうのこうのと言っていたが、時代は変わったのだ。既に結界などなくともモンスターは襲ったりはしない。現状平和ではないか」
「そんなことがいつまで続くかはわかりませんぞ……」
「気もしないことに金をかけるほど無駄な行為は必要ない」
「陛下というお方は……」
さすがの宰相も限界だった。
このまま指示に従っていれば確実に国は潰れる。
それくらいの判断は宰相だけでなく、国に仕えているものなら誰でも理解していたのだ。
「なんだその目は? 文句があるのなら貴様とて出ていっても構わないのだぞ。年俸を払わずに済むのだからむしろ好都合と言えるが」
「左様ですか。さすがに今回の件では陛下についていけません」
ロブリーは宰相が出て行く分にはなんの問題もなかった。
残された安い年俸の部下たちが動かしていけばいいのだから、そう思っていたのだ。
「我々もみな、ホワイトラブリーへ移民します」
「うむ。古い考えしか出来ぬような者に国は任せられんからな……。ん? 今、皆と言ったか?」
「えぇ。私だけでなく、王宮にいる者たちは国を捨てます。私が陛下を説得できなければその覚悟を持っていたというわけです」
ロブリーはそれでも止めなかった。
宰相側について国を出て行く部下はせいぜい半分。
むしろ人件費を半分削れて好都合だと思っていた。
だが数日後、事件は起きる。
「む……今日は誰も起こしに来なかったのか。今何時だ?」
「おーい、だれかいないのか!?」
「静まりかえっている……。まさか!?」
ロブリーは王宮の隅から隅まで探し回ったが、誰もいなかったのだった。
「ですから、ロブリー陛下の政策は大失敗です! このままでは国が崩壊しますよ。至急政策の取りやめを推奨します」
国王の次に権限を持つ宰相が、ロブリーに対して提言をするのは初めてだった。
それほど、ブラークメリル王国が危機的状況にまで追い込まれていたのだ。
「そもそも、皆対応がおろそかだからいけないのだ。政策が問題ではなく、新しい時代の流れについてこれずに文句ばかり言っている奴らがいけないんだよ!」
「政策だけではありません! 結界がなくなり住民から不安の声も続出しております!」
「だから時代遅れの者たちを相手にするのは苦労する……」
ロブリーは宰相の警告をあしらうように切り返した。
だが、今回は宰相も黙ってはいない。
たとえクビになっても訴える必要があったのだ。
「陛下。冷静にお考えください。既に国の重要機関だった魔道具開発の集落は完全に廃墟し、隣国のホワイトラブリーへ移民したとの情報が入っておりますぞ!」
「なんだと!?」
「それだけではありません。すでに国の九割以上の住民がホワイトラブリー王国へ移民する計画を遂行しています」
「…………」
ロブリーは、ここで初めて考え直したのだった。
国を良くするために経費節約が重要だと考えていた。
だが、住民たちは全員が浪費家なのだとしょうもない人間がこの国には大勢いたのだと改めて判断した。
「好きにさせればいい」
「はい!?」
「所詮は浪費癖の激しい愚かなバカどもなのだろう。残ったまともな考えを持った少人数でも立派な国にできるはずだ」
「いえ、残りの人間は……」
「くどい!!」
宰相は、『残りの人間は移民すらできる金や人脈がいない者たちや囚人ですぞ』と言いたかったが、ロブリーがそれを拒否した。
「経費節約政策は続ける。それに、結界がどうのこうのと言っていたが、時代は変わったのだ。既に結界などなくともモンスターは襲ったりはしない。現状平和ではないか」
「そんなことがいつまで続くかはわかりませんぞ……」
「気もしないことに金をかけるほど無駄な行為は必要ない」
「陛下というお方は……」
さすがの宰相も限界だった。
このまま指示に従っていれば確実に国は潰れる。
それくらいの判断は宰相だけでなく、国に仕えているものなら誰でも理解していたのだ。
「なんだその目は? 文句があるのなら貴様とて出ていっても構わないのだぞ。年俸を払わずに済むのだからむしろ好都合と言えるが」
「左様ですか。さすがに今回の件では陛下についていけません」
ロブリーは宰相が出て行く分にはなんの問題もなかった。
残された安い年俸の部下たちが動かしていけばいいのだから、そう思っていたのだ。
「我々もみな、ホワイトラブリーへ移民します」
「うむ。古い考えしか出来ぬような者に国は任せられんからな……。ん? 今、皆と言ったか?」
「えぇ。私だけでなく、王宮にいる者たちは国を捨てます。私が陛下を説得できなければその覚悟を持っていたというわけです」
ロブリーはそれでも止めなかった。
宰相側について国を出て行く部下はせいぜい半分。
むしろ人件費を半分削れて好都合だと思っていた。
だが数日後、事件は起きる。
「む……今日は誰も起こしに来なかったのか。今何時だ?」
「おーい、だれかいないのか!?」
「静まりかえっている……。まさか!?」
ロブリーは王宮の隅から隅まで探し回ったが、誰もいなかったのだった。
1
お気に入りに追加
1,167
あなたにおすすめの小説
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
冷酷非情の雷帝に嫁ぎます~妹の身代わりとして婚約者を押し付けられましたが、実は優しい男でした~
平山和人
恋愛
伯爵令嬢のフィーナは落ちこぼれと蔑まれながらも、希望だった魔法学校で奨学生として入学することができた。
ある日、妹のノエルが雷帝と恐れられるライトニング侯爵と婚約することになった。
ライトニング侯爵と結ばれたくないノエルは父に頼み、身代わりとしてフィーナを差し出すことにする。
保身第一な父、ワガママな妹と縁を切りたかったフィーナはこれを了承し、婚約者のもとへと嫁ぐ。
周りから恐れられているライトニング侯爵をフィーナは怖がらず、普通に妻として接する。
そんなフィーナの献身に始めは心を閉ざしていたライトニング侯爵は心を開いていく。
そしていつの間にか二人はラブラブになり、子宝にも恵まれ、ますます幸せになるのだった。
似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります
秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。
そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。
「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」
聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。
冤罪を受けたため、隣国へ亡命します
しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」
呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。
「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」
突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。
友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。
冤罪を晴らすため、奮闘していく。
同名主人公にて様々な話を書いています。
立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。
サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。
変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。
ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます!
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。
【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」
まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05
仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。
私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。
王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。
冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。
本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!
近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。
「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」
声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。
※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です!
※「カクヨム」にも掲載しています。
【完結】婚約破棄と追放された聖女は、国を出て新国家を作っていきます〜セッカチな殿下の身勝手な行動で国は崩壊しますが、もう遅いです〜
よどら文鳥
恋愛
「聖女レレーナよ、婚約破棄の上、国から追放する」
デイルムーニ王国のために政略結婚しようと言ってきた相手が怒鳴ってくる。
「聖女と言いながら未だに何も役に立っていない奴など結婚する価値などない」
婚約が決まった後に顔合わせをしたわけだが、ドックス殿下は、セッカチで頭の中もお花畑だということに気がつかされた。
今回の婚約破棄も、現在他国へ出張中の国王陛下には告げず、己の考えだけで一方的に言っていることなのだろう。
それにドックス殿下は肝心なことを忘れている。
「婚約破棄され国を出るように命令されたことは、お父様に告げることになります。そうなると──」
「そういう話はいらんいらん! そうやって私を脅そうとしているだけだ」
次期国王になろうとしているくせに、お父様がどれだけ国に納税しているか知らないのか。
話を全く聞かない殿下に呆れ、婚約破棄をあっさりと承認して追放されることにした。
お父様に告げると、一緒に国を出て新国家を創り出そうと言われてしまう。
賛同する者も多く、最初から大勢の人たちと共に移民が始まった。
※タイトルに【ざまぁ】と書いてあるお話は、ざまぁパートへの視点変更となります。必ずざまぁされるわけではありませんのでご了承ください。
婚約破棄されて満足したので聖女辞めますね、神様【完結、以降おまけの日常編】
佐原香奈
恋愛
聖女は生まれる前から強い加護を持つ存在。
人々に加護を分け与え、神に祈りを捧げる忙しい日々を送っていた。
名ばかりの婚約者に毎朝祈りを捧げるのも仕事の一つだったが、いつものように訪れると婚約破棄を言い渡された。
婚約破棄をされて喜んだ聖女は、これ以上の加護を望むのは強欲だと聖女引退を決意する。
それから神の寵愛を無視し続ける聖女と、愛し子に無視される神に泣きつかれた神官長。
婚約破棄を言い出した婚約者はもちろんざまぁ。
だけどどうにかなっちゃうかも!?
誰もかれもがどうにもならない恋愛ストーリー。
作者は神官長推しだけど、お馬鹿な王子も嫌いではない。
王子が頑張れるのか頑張れないのか全ては未定。
勢いで描いたショートストーリー。
サイドストーリーで熱が入って、何故かドタバタ本格展開に!
以降は甘々おまけストーリーの予定だけど、どうなるかは未定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる