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3 魔女として覚醒した

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「全く……どうなっているのだ。まさか1000人近くもの役員たちが一緒に同行したいと言ってきたぞ。その者の家族も含めたら何人になることやら」

 別に私は驚くこともなかった。
 お父様がいなくなると知れば国に不安を感じる人がいるはずだ。
 それにお父様は大勢の人から慕われている。

「それだけお父様に期待しているんですよ」
「それもあるだろうが、口を揃えて言っていたのはレレーナのことだったぞ」
「え!?」

 これは予想外だった。
 私はまだ人助けをしたことがないのに。

「レレーナの力を知らないのはドックスと一部の人間のようだ。余程レレーナの魔女としての力を期待しているのだろう」
「期待通りに力を使いこなせれば良いんですけどね」
「レレーナの今までの努力を考えれば問題ないだろう」

 魔女へ昇格するために、毎日コツコツと鍛錬をしてきた。
 イメージトレーニングはしっかりとできているが、うまくいくかどうかは別問題である。

「それにしても、実力者が数千人もデイルムーニからいなくなってしまったら大変なことになってしまいそうですね……」
「だからこそ面白くなってきただろう。新国から高嶺の花で見守っていれば良いのだ」

 何か言い方が違う気がする。
 お父様なりの情けなのだろうか。

「ともかく、これだけ大人数になるのだから、国中の馬を購入し、御者も雇う必要がありそうだ。これから数日間は忙しくなるぞ」
「そうは言っても、お父様は楽しそうですね」
「当たり前だ。こんな人生になるとは予想しなかったのだからな。ワクワクして仕方がない」

「私は婚約破棄されたんですけどね」
「悪いことが起きた後には良いことが起きるという典型例だと思いなさい」

 お父様には何を言ってもとても敵わない。
 とはいえ、私も楽しみになってきているのが歪めない。

 これだけ沢山の人たちと、新たな国を建国するのだから。



「よし、レレーナの魔女への昇格も無事に達成したし、準備は万全に整った。明日の朝には全員を連れ出発する」
「承知しました。予定通りに新国までのルートは一時的ですが、モンスターが近寄れない結界を造っておきました」
「レレーナの魔力が予想していたよりも凄まじい威力だな」

 私自身も驚いている。
 魔力に覚醒した瞬間、魔法の詠唱方法や魔法の効果までも脳の中に勝手に入っていたのである。
 まさかこれだけの魔法を習得できているとは思わなかった。

 更に、聖女としての力は消えるかと思っていたが、力を使い果たしただけで、まだ聖女としての力も使えることに気がついた。

「結界魔法とはいえ、私の魔力を大きく超えるモンスターがいた場合、結界を突き破って侵入してきますが……」
「で、レレーナの魔力を超えるモンスターというのは存在するのか?」

 そればかりは分からない。
 私の魔力がどれくらいなのかも知らないし、前例がない以上なんとも言えないのだ。

「もう少し自信を持って良いと思うが。そもそもそれ程強力なモンスターがいたら、この要塞国家ごと破壊されているだろう?」
「それはそうですが、何千人もの人たちを守る義務がありますからね」

「それがそもそもの勘違いなのだ」
「と、言いますと?」

 お父様が何を言っているのか分からず、聞き返す。

「俺からは来いとは誘っていない。あくまでも付いていきたいと言っているのは向こう側だ。外が危険なのは重々承知なのだ。レレーナが全ての責任を負う必要はない。出来る限りの無理のない範囲でやれば良いのだ。それを皆は期待している。もちろん予め来る連中にはその旨を伝えている」

 お父様の言葉を聞いて、重荷が軽くなった気がした。
 もちろん、だからと言って手抜きをするようなことはしない。
 プレッシャーが無くなったという感じである。

 そして翌日、新国の拠点となる地へ全員を連れて出発した。
 こんなに大勢で国を出るというのに、やはりドックス殿下は姿を見せなかった。

 一体何を考えているのやら……。
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